ベルトスクロールアクションの始祖にして金字塔でもある『熱血硬派くにおくん』(テクノスジャパン)の主人公は、いわゆる不良学生で、白ランにリーゼントでビシッっとキメたくにおくんです。しかし、その後のシリーズ作品の多くは、デフォルメされたくにおくんたちがスポーツしたり戦ったりする健全(?)なゲームとなりました。そんなシリーズの分岐点のひとつが、今年で35周年を迎えたファミコン用ソフト『ダウンタウン熱血物語』(テクノスジャパン)です。
■3作目となる『ダウンタウン熱血物語』は、予想外のアクションRPG!
今から35年前となる、1989年4月25日に発売された『ダウンタウン熱血物語』は、『くにおくん』のシリーズとしては第3作目にあたります。初代『くにおくん』がベルトスクロールアクション、2作目の『熱血高校ドッジボール部』はスポーツゲームとして名作と評価の高い一作でしたが、それに続く『ダウンタウン熱血物語』は、なんとアクションRPGでした。
『くにおくん』の派生作である『ダブルドラゴン』のファミコン版もアクションRPGで、敵を倒してレベルアップすることで新しい技を覚えていくタイプ。一方、この『ダウンタウン熱血物語』は、いくつものベルトスクロール形式のマップを行き来して敵を倒してお金を稼ぎ、商店街で買い物をすることでパラメータを上げたり、必殺技を覚えたりするタイプのアクションRPGでした。
■キャラクターがデフォルメされてもアクションの爽快感は健在!
初代『くにおくん』の面白さは、人間の本能に根差したバイオレンスを表現するアクションです。パンチやキック、ジャンプといった操作はもちろんのこと、ダッシュしての飛び蹴りや三角飛び蹴り、相手をつかんでの膝蹴りや背負い投げなど、レバーとボタンの組み合わせによる多彩なアクションに魅せられたプレイヤーは多かったのです。
7頭身から2.5頭身ほどにデフォルメされた『ダウンタウン熱血物語』でもそれは健在で、さらに木刀やメリケンサック、チェーンなどの武器を振り回したり投げたりするアクションに加えて、必殺技による爽快感のある白熱のバトルが楽しめます。
このアクションの気持ちよさは、いま遊んでも色あせず、シリーズ30周年記念に『ダウンタウン熱血物語SP』(アークシステムワークス)としてリメイクされたのも納得でしょう。
■不良の世界もお金次第! でも、せっかく買った必殺技がパスワードでパー!?
お金を稼いでパワーアップするゲームのため、引き続き遊べるパスワードは欠かせません。ただ、説明書の最初に記載されている通り、パスワードで引き継げるのは「パラメータと所持金」のみ。とくに問題なさそうですが、本作の必殺技は本屋で「必殺技の本」を買い、アイテムとして使うことで使用可能になります。つまり、大枚はたいて買った本はパスワードで引き継ぎできないのです。
必殺技の本は購入できるアイテムの中でも高価な部類なので、最初にそれに気づいたときは、「ウソでしょ……?」と打ちひしがれたものでした。本作はやられても所持金半分で再スタートできるゲームです。お金があればどんどんパワーアップできるので、やられるぐらいなら使ったほうがお得です。しかし、それではお金が溜まらず必殺技の本が買えないので、弱い頃はやられそうになったらパスワードをメモしてやりなおすなんて、ちょっとズルいこともしていた記憶があります。
■アバウトなパスワードも味がある? すべてがカジュアルに楽しめる名作だ!
ただ、そのパスワードもけっこうアバウトで、間違って入力したのにそのままゲームをスタートできるだけでなく、間違ってたがゆえにパラメータや所持金が大幅アップ(ダウンすることも!)してたなんてこともしばしば。これ幸いにと、そのままゲームを続けてしまった人は筆者だけではないんじゃないでしょうか。
最初こそ弱くて苦労するゲームですが、時間をかけてパラメータをアップさせていけば、クリアは難しくありません。腕に自信があるなら、弱くてもアクションでその差を詰めることもでき、上級者から初心者まで幅広く楽しめる名作であるともいえます。この作品がきっかけで『ダウンタウン』シリーズが続くのも納得といったところでしょう。
現在でもNintendo Switch Onlineで遊べるほか、リメイク作『ダウンタウン熱血物語SP』が発売されているため、原点である本作か、パワーアップして遊びやすくなったリメイクを、ぜひお好みで選んで遊んでほしいです。なにより、セーブによって必殺技の本をはじめとするアイテムがなくさずに続きが遊べるが嬉しいですよね。