誤って強酸性の薬剤を飲ませ、乳児が口の中とあごにやけど 准看護師が直後に正しい薬も

記者会見で謝罪する白山武司院長(左から2人目)ら=近江八幡市立総合医療センター

 近江八幡市立総合医療センター(滋賀県近江八幡市)は25日、同市の6カ月未満の乳児に、誤って強酸性の薬剤を飲ませて、口の中とあごにやけどを負わせる事故があったと発表した。乳児は10日間入院し退院したが、唇の下に赤みが残っており、経過観察をしている。

 センターによると、乳児は聴覚障害の疑いがあり、聴力検査のために3月11日、母親と耳鼻咽喉科を受診。眠らせるため、鎮静剤の「トリクロリールシロップ」を飲ませるべきところ、外来所属の50代の女性准看護師が同科の冷蔵庫にあった「80%トリクロロ酢酸液」を注射器で口から飲ませた。乳児は泣いて吐き出したが、約1ミリリットルを投与したと推測される。

 泣き声がしたので他の女性看護師が「大丈夫?」と聞いたが、准看護師は「大丈夫」とのみ答えた。この直後に准看護師は同じフロアの小児科に正しいシロップを取りに行き、予定された5ミリリットル分を投与。その後、乳児らは帰宅したが、機嫌が悪く、哺乳不良が続いたことから当日夜と翌日に2度小児科を受診。翌日から気道狭窄(きょうさく)の疑い、口腔(こうくう)粘膜障害で入院した。

 酢酸液は、いぼの治療のために塗って使う強い酸性の薬。診察室のごみ箱に酢酸液が入った注射器が残っており、センターが准看護師に問いただしたところ、誤投与が判明。「同じ薬だと思った」「確認が不十分だった」と話しているが、いつ誤りに気付いたか、など不明瞭な点もあるという。センターは准看護師が酢酸液の存在を知らずに、鎮静剤と取り違えたとみている。

 センターの幹部が両親に謝罪。保護者側は滋賀県警に相談し、県警は捜査を進めている。センターは准看護師を自宅待機にし、再発防止の研修を受けさせている。

 白山武司院長は「普通起こりえない事故であり、二度と起きないよう信頼回復に努める。患者やご家族にご迷惑、心配をおかけした」と謝罪した。

医療事故のあった近江八幡市立総合医療センター(同市土田町)

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