“全国初”の鳥獣被害対策プロ組織「テゴス」が本格稼働 組織名は広島弁の「手伝う=てごうする」から命名【広島発】

広島県の野生動物による農作物被害額は2022年度で約4億円。県は鳥獣対策に取り組む全国初のプロフェッショナル組織を立ち上げ、2024年度から県内5つの市町で本格的に稼働した。早くも期待が高まっている。

まずは被害額5000万円減を目指す

鳥獣被害対策を支援するプロフェッショナル組織「テゴス」は、東広島市にある県の農業技術センターに設置された。テゴスの名前の由来は広島弁の「てごうする」=「手伝う」から命名。4月10日に開所式が開かれ、テゴスのスタッフのほか、開設段階で参画する県や尾道市、庄原市、安芸高田市、北広島町、神石高原町の5つの市町の副市長や町長などが出席した。

鳥獣被害対策組織「テゴス」・向谷敦志 代表理事:
これから会員の皆さまと一緒になって鳥獣対策に取り組み、ぜひとも広島県の被害額を半減するように尽力していきますので、ご協力よろしくお願いします

テゴスは動物行動学など専門的な知識をもつスタッフで構成され、5つの市町それぞれに担当者を置き、農業者への技術指導や相談対応にあたる。

県によると、イノシシやシカなどの野生動物による農作物被害は2022年度で約4億円に上る。県はテゴスの稼働などで、まずは2025年度の被害額を5,000万円減らしたいとしている。

ノウハウが蓄積されにくい現状を改善

被害額が約4億円とは驚きの数字だが、これでもピーク時に比べると半減している。広島県の野生鳥獣による農作物被害額の推移を見ると、ピークの2010年度は約8億5,000万円だったが、集落全体の総合的な対策に取り組み、2015年度には4億1,000万円まで減った。しかし、その後も4億円前後で推移し、2022年度の被害額は全国で8番目と高い数字で止まっているのが現状だ。

2024年度から稼働した「テゴス」によって何が変わるのだろうか。

これまでは県の支援を受けた各市町が、国の交付金などを活用して生産者などへ個別に鳥獣害対策を行っていた。ただ、鳥獣害対策はノウハウの習得にそれなりの時間がかかる。その上、市町の職員は定期異動のため3年ほどで入れ替わり、“ノウハウが蓄積されにくい”といった課題があった。

今回、テゴスを立ち上げたことで、県や市町はテゴスに業務を委託。テゴスの専門アドバイザーが市町の専任職員を指導し、専任職員が生産者などに個別対応を行う。市町の職員の業務が減る分、広く複数の集落を見渡した計画を作成するなど、さらなる被害の抑制が期待できる。

わずかな工夫で防護柵の効果アップ

では、具体的にどのような対策が行われるのか。

例えば、イノシシやシカなどの侵入を防ぐ「防護柵」。テゴスの向谷代表は、9割くらいは間違った方法で設置されていて、非常に効果が少なくなってしまっていると指摘する。

若木憲子 記者:
防護柵を正しく設置することで、被害を一気に防ぐことができるということです

すでに普及しているメッシュ柵と電気柵を組み合わせた防護柵の場合、メッシュの間隔を10センチ四方にするとウリ坊の侵入も阻止できる。また、一番下に鉄パイプを横に1本入れるだけで柵が強固になり、被害が大幅に減るという。

夜間も撮影できるカメラを設置して、どんな動物が被害をもたらしているのかを知り、その動物にあった対策を実施することも欠かせない。

鳥獣被害対策組織「テゴス」・向谷敦志 代表理事:
各地域で実情が違いますから、まずは2つの集落をピックアップして徹底的に改善する。それをどんどん広げていく

職員らによる「ノウハウの引き継ぎ」が一つの課題だった鳥獣被害対策。新たに発足したプロ組織「テゴス」は、効果的な防護・捕獲の方法、エサになるものを放置しないなど、環境改善についても農業者や地域住民に説明していきたいと話している。

(テレビ新広島)

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