5月はもちろん対策必須!意外と知らない子どもの紫外線対策。日焼け止めを選ぶときは、表示のここをチェックして【小児科医】

引用元:Yuto photographer/gettyimages

初春から少しずつ強くなってくるといわれる紫外線。紫外線が最も強くなるのは夏ですが、大人と比べて皮膚が薄い赤ちゃん・子どもは、大人よりも紫外線の影響を受けやすいとも言えます。
連載「ママ小児科医さよこ先生の診療ノート」の6回目は、この季節にまさに気をつけたい「子どもの紫外線対策」についてです。

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「日焼け止め」だけではない、紫外線対策

赤ちゃんにとって、日光(紫外線)は、ビタミンDを作る大切な材料です。一方で、日焼けさせたくない、肌が赤くなる、がんになるリスクもあると聞いた・・・と心配になる方もいると思います。

たしかに、適切な紫外線対策は必要です。紫外線対策というと、日焼け止めが思い浮かぶことが多いと思います。ただし日焼け止めを塗らなくても、できる紫外線対策もあります。

まずは「紫外線の強い時間帯」をなるべく避けて、外出すること。一般的に、紫外線は午前10時から午後2時が最も強い時間帯といわれています。子どもと一緒の外出は、なるべく午前中早めの時間や、夕方にできるといいでしょう。

また服装でも、立派な紫外線対策ができます。帽子はもちろん、洋服の色も白や淡い色、さらに気温が許せば(半袖ではなく、より肌を多く覆える)七分袖が有効です。ただし子どもたちも成長して自我が出てくると、親が決めた帽子や洋服は嫌がることもあります。「どちらの帽子がいいかな?」など、できれば複数用意しておき、その都度、子どもに選ばせてみることも工夫の一つです。もちろんそれでも難しい場合は、無理のない範囲でトライしましょう。

すでにされている人も多いと思いますが、ベビーカーの日よけも効果的です。日かげは日なたに比べると、紫外線を約半分に減らせます。日かげになっている道を選んで、通るのもいいでしょう。屋外で水遊びをするときも、テントを張って日かげを作ったり、ラッシュガードを着用したりといった工夫に効果が期待できます。

なおくもりの日でも、晴れているときの約80%の紫外線が届くので、対策が必要です。さらに紫外線というと、真夏に強いイメージがあるかもしれませんが、すでに4月ごろから対策が必要なレベルになっています。「UVインデックス」という紫外線の強さを表す段階が「3」以上の場合に紫外線対策が必要ですが、たとえば東京では3月から10月まで3以上の数値となっています。春になったら、くもりの日でも紫外線対策をするのが習慣になるといいですね。

日焼け止めは「適切な強さ」を「たっぷり」

とはいえ、紫外線対策の強力な助っ人は、やはり日焼け止め。0歳から使える市販のものも種類がたくさんあります。

そもそも子どもたちにとって「適切な強さ」の日焼け止めの目安は、どんなものがあるのでしょうか?製品の表示を見ると「SPF」や「PA」という文字が書いてあります。子どもの場合はSPFが「15以上」、PAは「++から+++」程度で十分とされています。
(なおSPFとは、主に日焼けや炎症を起こすUVB(紫外線の種類)を防ぐための指標であり、PAはしみやしわの原因になるUVA(紫外線の種類)を防ぐ指標のことです)

またどんな日焼け止めのタイプでも「適切な強さ」のものを、「たっぷり」「まんべんなく」塗るのがコツです。たとえばクリームタイプを顔に塗る場合は、パール粒大(7~8mm)を手のひらに伸ばしてから塗り、もう一度、同じ量を重ね塗りします。なお液状タイプの場合はもっと多く、約20mm大(1円玉の大きさ)が目安です。

塗り忘れが多い部位として、耳や首の後ろ、胸元、背中(上のほう)、手の甲があるので、とくに忘れずに塗りましょう。また子どもは汗をかきやすく、日焼け止めも流れ落ちてしまうため、2~3時間おきに、こまめに塗り直すといいです。とくにプールや海、山といったアウトドアでは「耐水性」「ウォータープルーフ」表示があるとより安心です。

日焼け止めで、肌荒れしない?

もう一つ、日焼け止めの選び方でポイントを挙げるなら、「紫外線吸収剤無配合」や「ノンケミカル」という表示があるものもよいでしょう。

そもそも日焼け止めには、大きく分けて「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」という二つの種類があります。このうち「吸収剤」は、皮膚の表面に当たった光を吸収し、化学反応を起こすことで、紫外線を害のないエネルギー(熱など)に変化させる役割があります。

この化学反応によって変化した物質が肌を刺激してしまうことがあります。「紫外線吸収剤無配合」「ノンケミカル」という表示がある商品は、この紫外線吸収剤を極力使っていないものが多いです。日焼け止めによる、子どもの肌荒れが心配という場合には、まずはこうした表示のある製品を選ぶと安心です。

また肌荒れ対策には「しっかりと洗い流すこと」も重要です。一日の終わりには、泡立てた洗浄料を使って洗い、シャワーでよく流すことで、日焼け止めによる肌トラブルを予防できます。

塗り薬・虫よけ剤・保湿剤との、塗る順番

湿疹などで、もし普段から使っている塗り薬がある場合は、まず最初にその薬を塗りましょう。その後に日焼け止めを塗ります。なお虫よけ剤は、日焼け止めのさらに上、最後に塗ると効果的です。

なお保湿剤は、一番最初に塗ることを推奨する場合が多いです。ただしもともと処方されている塗り薬を使っている場合は、主治医の先生に確認していただくと、より安心です。

それでも、日焼けしてしまったときは?

さまざまな対策をしても、日焼けしてしまうことはあります。

ホームケアの基本は、まず「しっかり冷やすこと」。日焼けは「やけど」の一つ、つまり「皮膚の表面が炎症を起こしている」状態です。冷たい水で絞ったタオルや保冷剤などでしっかりと冷やしましょう。子どもが嫌がってしまう場合は、冷たい水で洗ってあげるのもいいでしょう。

また炎症を起こした皮膚は乾燥しやすいので、しっかりと保湿しましょう。市販の保湿ローションや、日ごろ使い慣れた保湿剤で構わないので、塗った後に肌がテカテカして見えるくらい、たっぷりと塗ります。

冷やす・保湿する、といったケアをしても、赤みが引かない・赤みが広がってくる・痛みが強くなるなどの場合は、小児科あるいは皮膚科の受診を検討してください。必要に応じて、ステロイド軟こうや抗アレルギー薬などで治療します。もし水疱(水ぶくれのようなもの)ができている場合は、破らずに受診してください。適切な処置をせずに勝手に破ってしまうと、皮膚の表面にいる細菌によって皮膚感染症を起こしてしまう可能性があるからです。

なお市販の軟こうは、清涼剤などの成分が含まれていて、かえって赤みや痛みがひどくなることがあるので、使わないことをおすすめします。また、熱冷まし用のジェルシートも、医学的に日焼けを治す効果は証明されていません。逆に炎症を悪化させる可能性もあるので、こちらも使用しないでください。

適切な日光浴で、ビタミンDを作りましょう!

さて紫外線対策について説明してきましたが、「日光浴も大事なのではないの?」と思われた人もいると思います。

たしかに紫外線は、体の中でビタミンDを作るために欠かせません。紫外線を浴びると、皮膚の下でビタミンDが作られ、そのビタミンDがカルシウムの吸収を助けてくれます。よって極端に紫外線を避けていると、ビタミンDが不足することによる骨の病気(くる病など)になることが知られています。とくに母乳はミルクと比べてビタミンDの量が少ないので、完全母乳栄養の赤ちゃんはとくに日光浴が大事です。

白色人種の場合のデータですが、7月の正午ごろの東京では、2~20分で十分なビタミンDが合成されるというデータがあります。一方、12月の正午ごろでは10~60分必要になります。

さらに日本人の場合は、白色人種と比べると紫外線の感受性が低い、つまり同じ量の紫外線を浴びても、一般的には皮膚がんのリスクが低いともいわれています。紫外線を極端に恐れず、無理のない範囲で紫外線対策をして、子どもたちとの外出を楽しんでください。

文・監修/白井沙良子先生 構成/たまひよONLINE編集部

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6月の梅雨の時期があるとはいえ、これからどんどん気温も上がり紫外線も増えていく季節です。赤ちゃん・子どもの肌をトラブルから守るために、目的やシーンに合った紫外線対策を心がけましょう。

参考文献
・佐久医師会 教えて!ドクター 日焼け
・環境省 紫外線環境保健マニュアル2020
・日本小児皮膚科学会 こどもの紫外線対策について
・日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会 保育所・幼稚園での集団生活における紫外線対策について
・気象庁 防災情報 紫外線情報

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