【衆院島根1区補選】響く?ネット上での訴え 両陣営が積極活用「ネット戦略」の効果と課題

4月28日の投開票が迫る衆議院島根1区補欠選挙。各地の街頭で舌戦が繰り広げられる一方、インターネット上でも両陣営が火花を散らしています。公職選挙法が改正され、ネット上での選挙活動が解禁されて10年あまり。ネットを通じた訴えは有権者に届いているのでしょうか?

今回の「トリプル補選」唯一の与野党一騎打ちの構図となった島根1区。自民党の新人・錦織功政候補、立憲民主党の元職・亀井亜紀子候補の両陣営は、街頭だけでなく、SNSでの発信などネット上でも火花を散らしています。

自民党・錦織候補が、インスタグラムに投稿した短い動画。趣味のラーメン食べ歩きの様子を紹介しています。こうしたショート動画を通じて、新人候補の人柄をアピールします。

立憲民主党・亀井候補もインスタグラムにショート動画を投稿。こちらは一問一答形式で自身の政策をアピールしています。

今回の選挙戦では、両陣営がスマートフォンでの視聴に適した「縦長」画面の短い動画を積極的に活用しています。

ネットコミュニケーション研究所・中村佳美さん
「使わないと票を落としてしまうので、どちらかというともう皆さん使うのが当たり前であって、2021年のあたりにコロナ禍での衆議院選があって、そこでインスタグラムの活用がかなり定着しました。ガーシー元参議院議員など動画の活用がかなり注目を浴びて当たり前になってきた」

候補者のネット戦略のコンサルタントも務める専門家は、前回2022年の参院選で、ユーチューバーなど「インフルエンサー」として知られた候補者が、選挙戦でSNSなどネットをフル活用して当選を果たしたことも影響し、近年の選挙で勝つためにはネット戦略が不可欠だと指摘します」

そのネットでの選挙戦、陣営が重視するのが候補者の認知度アップです。今回の補欠選挙でも、錦織・亀井両陣営がX、フェイスブック、インスタグラム、YouTubeなど主要なSNSを告示前から定期的に更新、名前の浸透を図ってきました。
ネット選挙のコンサルタント・中村さんによると、動画や音楽を使って短い動画で発信できるインスタグラムやYouTubeは若い世代、一方実名で参加するフェイスブックは中高年、文字だけの短文での投稿が中心のLINEやXは年代などを問わず幅広い層といった具合に、対象に合わせたSNSの使い分けが重要だといいます。その上で、今回の選挙戦での両陣営のネット戦略を分析すると…。

ネットコミュニケーション研究所・中村佳美さん
「(錦織候補は)自民党の候補者ですという感じではなくて、あくまで錦織さんの人間性や人柄にフォーカスをして投稿しているとすごく感じました」
「(亀井候補は)X(旧ツイッター)をメインに自分の訴えたいことを文字にして、演説の動画だけを上げていったり、本当に選挙の活動にフォーカスしている印象」

その上で、錦織・亀井両候補のX(旧ツイッター)の投稿内容を解析してみると、錦織候補は、「ふるさと」、「しまね」といった単語が大きく表示され、頻繁に使われていることがわかります。
亀井候補で、大きく表示されたのは「変える」、「変わる」といった単語です。
それぞれの政策を象徴する言葉が、SNSでも使われていると言えそうですが、有権者からは…。

有権者
「特には見てないですね」
「自分も見てないですね。見てしっかり内容を確認すれば変わるかなと思うんですけど、見られてないので、何とも言えない」

候補者のSNSを見ていないという人も…。
若い世代を含め、より広く候補者の主張を届けることも目的に解禁されたネットでの選挙活動ですが、その目的を必ずしも果たしていないと懐疑的な見方も出ています。

日本大学危機管理学部・西田亮介教授
「(ネット選挙解禁)当時は、若い人たちが中心に使っていたインターネットを選挙運動で使えることから投票率が上がるのではと期待されていた。実際には若い人たちの投票率は大きく変わっていない。インターネットでのキャンペーンがどれほど結果を左右するのかはわからない」

また日常生活と同様に、SNSやインターネットを通じて発信される情報の信憑性について慎重に判断する必要があると指摘します。

日本大学危機管理学部・西田亮介教授
「(SNSなど)候補者が発信したい情報であるということ。それが真実かどうかわからないし、そういうことを念頭に置きながら政党や政治家の支援、候補者の発信を見ていくべきだと思います」

発信される情報は、候補者の訴えの一面や一部分であり、私たち有権者は、そこから得られる情報を冷静に受け止め、判断する必要があるといえます。

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