【アジア】越境ECでグッズ急伸[商業] アジアの売れ筋アニメ商材(上)

日本のアニメグッズ専門店「animate(アニメイト)」の海外店舗=23年、バンコク(NNA撮影)

越境電子商取引(EC)のサービス支援などを手がけるBEENOS(ビーノス、東京都品川区)グループでコンサルティングを担当する山口祐太郎です。世界での日本アニメの人気は大きく、その流通に着目すると新たな輸出の形がうかがえます。アジアに広がる日本のアニメ人気とグッズ流通について、越境ECで売れたデータを基に2回にわたり紹介します。

一般社団法人・日本動画協会の『アニメ産業レポート2023』によると、22年のアニメ関連市場規模は過去最高の2兆9,277億円(前年比106.8%)を記録。海外消費は国内と同規模の1兆4,000億円に達し、10年前の約6倍と大きく伸びています。

海外における放送や上映、配信といった消費の伸長が市場をけん引しており、背景には新型コロナウイルス禍の中で急拡大した動画配信サービスの普及や配給会社による日本アニメの買い付け、放映の増加などがうかがえます。作品の視聴後には商品需要が高まるため、グッズ市場の拡大も今後期待できます。

総務省の調査では、21年度の放送コンテンツの海外輸出額ではアニメが89.3%と大部分を占め、割合は年々増加する傾向にあります。主な輸出先はアジアが大半を占め、北米が続きます。アニメの海外輸出額では東アジアが最も多く、群を抜いています(下表)。アジアではアニメ人気が顕著で、BEENOSの越境ECの購入サポートサービス「Buyee」におけるアニメカテゴリ商品の購入数でも東アジアがトップです。台湾、香港エリアがメインの購入地域となっている他、東南アジアではシンガポールからの購入が盛んで、アジアでは活発な購買活動が行われています。

アニメ文化の浸透度と購入数は比例の関係がみられます。アニメ制作は世界中のスタジオで行われますが、アジアでは日本が築いてきたセルルック(セル画風)での制作が盛んです。近年は中国などアジアのスタジオによる高品質な作品が日本に輸入されるなど、アジア圏内でのコンテンツの往来が活発です。

日本最大級のアニメショップチェーン「アニメイト」の海外店舗は、台湾3、中国4、タイ2、韓国2、北米1店舗を展開。アジアは日本に近く、国際配送料や来日するハードルの低さも相まって、グッズ購入においては他地域より有利性が大きいと考えられます。

■ポケモン人気が圧倒的

BEENOSでは今年3月、関連商品が最も購入されているアニメ作品のランキングを発表しました(下図)。独自の流通データに基づき、23年に放送を開始した作品を対象に作成したものです。

結果は、最初はゲーム作品から始まりアニメ化や映画化したことで世界中にファンを広げた『ポケットモンスター(ポケモン)』が1位。2位に『呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)』、3位に『あんさんぶるスターズ!!』が登場しました。いずれも複数シーズンの放送を続け、多数のファンを持つ人気作品です。また、上位には世界140カ国以上の映画館での「ワールドツアー上映」で話題を呼んだ『鬼滅の刃』がランクイン。エリア別に見ると、中南米では『聖闘士星矢(セイントせいや)』、中東では『キャプテン翼』が支持を集めるなど地域差があることも分かりました。

Buyeeでの購入者は20~30代が中心。購入価格帯は、中南米を除く全てのエリアで「5,000円~1万円未満」でした。中南米は「1,000円~3,000円未満」と全体を下回るものの、23年度は購入金額、購入ユニークユーザー数、購入件数はいずれも120%以上の伸び率を示し、今後の成長が期待されます。

品目別では、トレーディングカード(トレカ)、フィギュア、ぬいぐるみが上位にランクインした他、低価格で購入しやすく国際配送料が抑えられるアクリルスタンド、ステッカーも人気でした(下図)。ヨーロッパ、中東、北米はトレカが首位。経済力の高いエリアでは「ポケモンカード」や「遊戯王カード」といった投機対象としても人気の商品が購入されていることが分かります。

トレカは1,000円~数百万円の高値が付く品まで幅広く購入されており、特に希少なカードはより高額で取引されます。東アジア、東南アジアなどのアジア圏と中南米エリアではフィギュアの人気が高く、購買額もアジア圏がけん引しています。

アジアを中心に人気の高いフィギュアについてBuyeeの購買データを見ると、男女比は男性が70%と圧倒的に多く、年齢層は10代から50代まで満遍なく分布しています。いずれの世代にとってもアニメグッズの中でフィギュアは定番商品だと言えます。

購入価格帯は「5,000円~1万円未満」が最多で「1万円~3万円未満」「1,000円~3,000円未満」が続く結果となりました。「1,000円未満」の低価格帯は下位となり、手を出しやすい価格であるほど数が多くなるというわけではなく、品物のコレクション性から一定のクオリティーが求められていることが分かります。

■「世界同時消費」が主流に

日本のアニメの世界的な人気と市場拡大のキードライバーとなったのは、米動画配信大手ネットフリックスなどに代表されるビデオストリーミングサービスの普及ですが、Buyeeにおいてもアニメカテゴリの商品購入は活発に行われていることが明らかです。Buyeeにおけるアニメカテゴリの購入金額は毎年増加しており、海外でのアニメ商品の市場拡大が越境ECにも好影響を与え、今後もこれまで以上の伸長が期待できます。

特にアジアはアニメ文化の浸透が際立っており、放送コンテンツの輸出先としても上位に位置していることから、グッズの消費量も比例して大きくなると考えられます。日本のアニメは、配信サービスの普及や配給会社による買い付けによって世界中で時差なく楽しめるようになりました。それに伴い、消費も「世界同時消費」へと変化しています。今後は、そうした世界のニーズに対応するべく流通チャンネルにも変化が求められています。

<筆者紹介>

山口祐太郎(やまぐち・ゆうたろう)

BEENOSグループ グローバルグロースハックチーム

ECサービスの企画営業を担当後、新組織立ち上げに参加。その後、物流系ITベンチャー企業に転職し、SaaS(クラウド上で必要なソフトウエアを提供するサービス)型新サービスの立ち上げから統括を行う。現在、BEENOSグループで日本法人や自治体向けに越境ECサービス事業の企画・導入のコンサルティングを担当。年間約100案件のマーケティングやプロモーションなどの戦略策定、提案、支援を行う。

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