阪神・近本 離島の架け橋へ「子どもたちの人生の選択肢を増やしたい」 一般社団法人「LINK UP」設立

 取材中、笑顔を見せる近本(撮影・中田匡峻)

 夢プロジェクトがスタートする。阪神・近本光司外野手(29)が25日、全国の離島支援に取り組む一般社団法人「LINK UP」(リンクアップ)を立ち上げることを自身のSNSなどで発表した。出身地の淡路島や自主トレを行う鹿児島・沖永良部島をはじめとする離島を中心に、企業の協賛金で地域振興を図る。

 近本の新たな夢プロジェクトがスタートした。2020年ごろから離島支援について構想し、24年に一般社団法人「LINK UP」を設立。「子どもの人生の選択肢を増やし、離島の課題解決の架け橋になりたい」と動き出した。

 「いままで個人的にやっていたことを現役中だけでなく、引退してからも続けたいという思いがずっとあった」

 これまで、地元・淡路市在住者や自主トレ先の鹿児島・沖永良部の子どもたちを甲子園や京セラドームに招待する「近本シート」の実施や、スポーツ教室を定期的に開催してきた。23年オフには継続的に社会貢献活動やファンサービスに取り組む選手を表彰する球団制定「若林忠志賞」を受賞。現役中だけでなく、引退後も活動を続けていける道を探した。

 もちろん、現役のうちは野球に専念する。そのため力を借りることになったのが、社高の1学年先輩で代表理事を務める石井僚介氏だ。高校時代は石井氏が中堅手で近本は右翼を守っていた。「一番、信頼できる人」と、夢実現のパートナーとなった。

 まずは、淡路島と沖永良部島から活動を開始する。活動理念に共感する企業から協賛金を募り、両島の少年少女を招いた試合観戦や職業体験を計画。今後は支援対象の離島を増やし、賛助企業の専門領域も生かして活性化を目指す方針だ。

 離島への支援は自らの経験もある。中学まで淡路島で育ち、社高入学を機に島を出ることになった。「(高校から実家への)帰りに、明石とか三宮があって。こんなに外の世界ってエンタメにあふれているんだなって」と刺激を受けたという。

 設立することでプロ野球選手として使命感もより一層強くなった。「最後まで諦めないじゃないですけど。スパッてやめるんじゃなくて、夢であるプロ野球選手を最後までしっかり、あがいてあがいてやり切るってところを子どもに見せてあげたい。しっかり、野球ができる限り、長くやりたいなと思います」と、燃え尽きるまで現役を続ける決意を示した。

 「(世界的にみると)日本も離島に入る。そういう日本の子どもたちに海外とか、いろんな地域、いろんな国への体験プログラムとかに参加してもらって。日本自体がより活性化していければいいと思います」と近本。壮大な目標へ向けて、大きな第一歩を踏み出した。

 ◆石井 僚介(いしい・りょうすけ)1993年7月17日生まれ。30歳。兵庫県小野市出身。中学時代は父の仕事の関係でアメリカへ。中学3年時に帰国し、社高に進学。神戸学院大ではアメフト部に所属。社会人Xリーグ1部AREAのLIXILディアーズ(現胎内ディアーズ)に所属した20年には日本代表入り。その後は神戸学院大でコーチなどを務めていた。

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