[社説]公取委がグーグル処分 独占の弊害なくさねば

 巨大IT企業による市場の独占は、競合企業だけでなく消費者の利益も脅かす。

 米グーグルが技術を提供しているLINEヤフーのデジタル広告配信事業を巡り、公正取引委員会は、グーグルが独占禁止法に違反した疑いで初の行政処分を出した。

 問題があったのは、利用者がインターネットで検索した語句に関連する広告を、スマートフォンなどに表示する「検索連動型広告」だ。

 公取委によると、ヤフーには検索エンジンと検索連動型広告の技術がなく2010年からグーグルより技術提供を受ける契約を結んでいた。その後、グーグルは広告の配信をやめるようヤフーに求め14年契約を変更。グーグルはヤフーへの技術提供を中止し、同社による他社のポータルサイトへの検索連動型広告の配信を制限していた。制限は遅くても15年から22年まで7年以上続き、この間、広告主やポータルサイト運営者はグーグルしか選択できなかった。

 グーグルの検索エンジンが使えなくなる懸念からヤフーは要請を受け入れたという。

 公取委に提出した改善計画には、ヤフーへの技術提供を3年間制限しないことや外部専門家による定期監査を報告することなどが書かれている。検索連動型広告でグーグルは国内市場の7、8割のシェアを持つ。独占企業の不当な圧力というほかない。

 競合するヤフーが閉め出されれば広告料金は高止まりし、最終的に消費者は高い商品を買わされることになる。

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 巨大IT規制を巡っては、欧州で、自社サービスの優遇を禁じる「デジタル市場法」が3月に全面適用された。

 政府は新たな規制法案を国会へ提出する予定だ。

 「スマホ特定ソフトウエア競争促進法案」は、スマホにアプリをダウンロードする際に使うアプリストアやゲームアプリのアイテム購入時などに利用する決済システムについて、他社による提供を妨げる行為を禁止。ネットの検索表示で巨大ITが自社サービスを優先的に扱うことも禁じる。違反には国内関連売上高20~30%分の課徴金を科す。独禁法による従来の課徴金6%を大幅に上回る厳しい罰則を設ける。アップルとグーグルでスマホソフトウエア市場を二分する現状に風穴をあけることを狙っている。

 巨大ITによる寡占市場では、これらのサービスや技術を使って事業を営む企業は不当に高い契約でも拒めない。新商品開発や人件費などに振り向けられるべき資金が、吸い上げられる構造は直ちに解消されなければならない。

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 検索システムやアプリは、もはや生活に欠かせない「インフラ」といってもよい。

 一部の巨大ITによる利用者情報や決済システムの独占は、ネットビジネス市場の活性化に逆行する。

 公取委が、グーグルに行政処分を科したのは、遅かったとはいえ、欧州などの動きを見据えた第一歩と言えよう。

 情報漏えいなどのセキュリティー対策は前提としながら、市場競争を促すことで利用者の選択の幅を広げることが必要だ。

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