【武豊日記】うれしくも懐かしい思い出

日本に短期免許でやってくる外国人騎手の草分けとも言える、フランスのオリビエ・ペリエ騎手が引退するというニュース。最近あまり乗っていないなあと気になってはいましたが、いきなりの引退発表は意外で、寂しい気持ちになりました。初めてやってきたのは彼が21歳でしたから、いまからちょうど30年前。武邦彦厩舎が最初の受け入れ先だったわけで、びっくりするほどガンガン勝たれたものでした。

ペリエ騎手の成功が、いまの日本の短期免許制度を軌道に乗せたと言ってもいいわけで、メジャーリーグで言えば野茂英雄さんみたいな存在。滅多に他人を褒めないことで知られるクリストフ・スミヨン騎手が、ペリエ騎手については「崇拝」と言えるほど称賛していたことも印象的です。また、ペリエが凱旋門賞をエリシオで逃げ切ったとき、「私はニッポンで逃げという優秀な戦法を覚えてきました」と語ってくれたのも、うれしくも懐かしい思い出です。

テン乗りでサリエラとのコンビ

今週は天皇賞・春です。今回の相棒はサリエラ。先週、今週と調教騎乗を打診してみましたが、国枝先生は「大丈夫。こっちでうまく仕上げておくから」という返事。当日は完全にテン乗りとなりますが、これまでもよくあったことです。

ドバイで怪我をして帰ってきたクリストフ・ルメールと行きつけのジムでばったりと出会い、元気そうで安心しました。そのときにサリエラのことを聞くと「勝つ力がある馬ですよ」と逆に励ましてもらったほどです。来年2月いっぱいで定年を迎える国枝調教師は、「ユタカでG1を勝つのが夢です」と話しているそうで、ボクもその夢を手伝いたいものです。もっと早くから乗せていただけていたら、という本音はそっとしまっておくことにします(笑)。

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