株価の決定要因は為替から地政学的リスクへ…遠くの戦争は「買い」ではなくなった?(中西文行)

ウクライナとロシアの戦争は3年目(C)ゲッティ=共同

米国は、再燃したインフレ懸念から利下げ開始を6月から10月以降に先送りとみられる。日銀も景気の先行き不透明で利上げを先送りか──。日米とも金利予想が困難となった。

本来、ドル高円安は輸出産業を中心に企業業績にプラス。訪日外国人にも購買力増加でプラスと、日経平均株価の上昇要因である。しかし、いまでは円安=株安と構図が変化したようだ。

この背景には、株価の決定要因が為替から地政学的リスクに重点が置きかわったことがある。多くの経済・軍事専門家でさえ予想できなかったイランとイスラエルが互いの国土をミサイルなどで攻撃する本格的な戦争状態に発展する可能性も想定され始め、地政学的リスクが中東全体に拡大するかの正念場を迎えている。

ウクライナとロシアの戦争も3年目に突入。モスクワのコンサートホールでは大規模テロも起こるなど双方の民間人も巻き込み泥沼化、戦線はより拡大し、ゼレンスキー大統領は3月28日、ロシアが5月末から6月にかけて大規模な攻勢に出てくると言及、北朝鮮を巻き込み停戦の兆候さえ見通せない。

日経平均株価はほぼ年初の水準に里帰りし、信用取引なら追い証の発生さえ起ころう。相場格言「遠くの戦争は買い」ではなく、実は「売り」だった。

日経平均株価は先週3万7000円台と3月22日の史上最高値4万1087円から10%近く下落し、テクニカルでは「弱気相場」入り寸前の状態である。日銀は為替レートの「円安」に過敏となり、株価どころではないだろう。

国際通貨基金(IMF)は4月16日、世界経済は今年も緩やかながら着実に成長するとの見通しを示した。長引く高インフレ、中国や欧州の需要低迷、2つの地域紛争の影響など逆風に直面する中、米経済の強さが世界の国内総生産(GDP)を押し上げるとした。

IMFは2024年、25年の世界実質GDP成長率を3.2%と予測。24年については1月に公表した前回の世界経済見通しから0.1ポイント上方修正した。米国の見通しを大幅に引き上げたことが主な要因。

それにもかかわらず、景気敏感株と見られる日本株は急落。個人消費が落ち込み、不景気となれば、異次元緩和に逆戻りか。海外旅行が活況の日本、ゴールデンウイークの消費統計に注目したい。

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