INAC神戸 首位・浦和Lと勝点7差 リーグタイトル奪還へ正念場 逆転優勝へカギ握る3つの要素

N相模原戦では、INAC神戸スターティングメンバーが増矢理花選手の8番のユニフォームとともに撮影に臨んだ(写真提供:WEリーグ)

サッカー・女子国内プロリーグ「WEリーグ」での2位のINAC神戸レオネッサは、4月の3試合で1勝1分け1敗。18日の第15節では初黒星を喫するなど、勝点を伸ばしきれず、1試合消化の多い首位・三菱重工浦和レッズレディース(勝点44)に勝点7の差を付けられました。

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現時点で自力優勝の可能性がなくなるなど、正念場を迎えたINAC神戸。先週2試合の戦いぶりと、終盤戦での逆転優勝へのポイントについて、元なでしこジャパン(日本女子代表)の川上直子氏が、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組『カンピオーネ!レオネッサ!!』(ラジオ関西)で語りました。

14日に強敵の日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)とスコアレスドローのあと、中3日で迎えた18日のサンフレッチェ広島レジーナ(S広島R)とのアウェイ戦。INAC神戸は前半にセットプレーから2失点を奪われるなど劣勢に。前半終了間際に異例の3枚替えを敢行するなど、しゃにむに巻き返しを図りましたが、新スタジアムでの初勝利に燃えるホームチームの牙城を最後まで崩せず、痛恨の黒星を喫しました。

川上氏は、INAC神戸のS広島R戦の敗因について「失点が早かった」ことと、「中3日で臨んだ試合だったが、メンバーをあまり変えなかった」ことを挙げるとともに、「レジーナは『Eピース(エディオンピースウイング広島)で初勝利するんだ!』という強い気持ちが、球際の激しさにすごく出ていた」と、相手の勢いに後手を踏んだことにも触れていました。

それでも、この一戦ではチームに光も見えました。それは前半44分から出場したFW辻澤亜唯選手の活躍です。川上氏も、「この試合の唯一の収穫」としてピックアップ。「ボールを持ったら常にゴールを狙っていく姿は、相手としては怖いもの。クロスがタッチラインを割るなど粗削りなプレーも正直あったが、INACのサブ組で途中から出てきて、こんなに存在感を示した選手を久しぶりに見た。ボールを取られてもがむしゃらにいく。なにか起こりそうな気がして見ていた」と、高卒ルーキーのプレーを評価していました。

試合後の辻澤選手は、ラジオ関西『カンピオーネ!レオネッサ!!』の取材に、「前半の終わりから出たが、チームを勢いづける思いと、絶対に点を決めるという思いで試合に入った。決めれるところが何回もあったが、決めれなかったので、そこを改善していきたい。ただし、勢いをもって入ることを意識していたので、そこはよかったかなと思う」とコメントしています。

そこから中2日という短い間隔でやってきたアウェイ連戦、21日のノジマステラ神奈川相模原(N相模原)戦では、前半38分のDF守屋都弥選手の先制点で勢いに乗ると、後半にもMF成宮唯選手、FW高瀬愛実選手(※「高」=はしごだか)が追加点を決め、今季リーグ戦未勝利の相手に対して3-0と快勝。前節までの嫌な流れを払拭しました。

「今回に限っては中2日でよかった」と川上氏。「試合での負けやストレスは試合でしか発散できない」と選手の心情を代弁したうえで、「移動もあって選手は大変だったと思うが、よかったんじゃないかな。ここで勝ったことで、全員しっかりと次に切り替えられているんじゃないかなと思う」と、この1勝の価値の大きさを述べていました。

N相模原戦では、前節の活躍を受けて辻澤選手が初めて先発に抜擢されれば、同じ高卒ルーキーのFW久保田真生選手も試合終盤にデビュー。藤枝順心高校出身、U20女子アジアカップにも出場したU-20日本女子代表コンビが存在感を示すなど、若い力も勝利に貢献したのは、明るい材料になりました。川上氏も「今まで固定メンバーでやってきたなか、チームの競争が活性化されたのはすごくいいんじゃないかと思う」と言います。

なお、N相模原戦直前、ロッカールームで、INAC神戸の安本卓史社長から、けがで戦線離脱中だった元なでしこジャパンFW増矢理花選手の現役引退に関する話が報告されたことも、ラジオ番組内で明かされていました。安本社長によると、「(22日の引退発表を目前にした)一昨日(20日)、本人から相談があった。『チームに貢献できていないので、なんとかしたい。自分の引退が少しでも力になれば』ということで、昨日(21日)の試合前にロッカーで私から伝えた」とのこと。「涙を流す選手もいて、昨日は増矢理花に捧げる勝利となったことは間違いない」(安本社長)というように、チームを長年にわたって支えてきたレジェンドの大きな決断も、選手の発奮材料になったようです。

川上氏は増矢選手の現役引退について、「ちょっと言葉に詰まるし、悲しい……。まだ28歳。けがというのが、本人のなかで一番大きいと思いますが、またもしやりたくなれば(復活してほしい)という思いもある」と、INAC神戸の背番号8をおもんぱかるとともに、「でも、ここからの人生のほうが長いので、また次、どんなことにチャレンジするのかというのも楽しみにしている」と語っていました。

4月の前半3試合は、なでしこジャパンのアメリカ遠征直後に行われ、なでしこ4選手のコンディション調整の難しさも結果に表れてしまったINAC神戸。ただし、S広島R戦後に番組の取材に応じたFW田中美南選手は、「全員コンディションについて、整えて臨んでいるが、それぞれもしかしたら痛いところがあるかもしれないし、コンディション(調整)は難しいかもしれない。メンタル的な部分も、ずっと張りつめた状態でやっているので、疲れも出るかとは思うが、チームの試合は大事なので、そこはみんな割り切ってプロとして臨んでいる」と、言い訳をせず。

先頭に立って前を向くキャプテンの勇姿もあり、チームはN相模原戦での勝利でポジティブさを取り戻しつつあります。N相模原戦後には「1個こぼしてしまったぶん、(優勝は)厳しくなったが、ここから勝ちグセをつけられるように、どんどん勝って、優勝に近づきたい」(守屋選手)、「優勝を目指すうえで、もう負けられないので、次はホームで勝って、首位の浦和についていけるようにやっていきたい」(成宮選手)と、選手たちも逆転優勝への思いを新たにしていました。

「INACが優勝するためにはもう全部勝たないといけない」と川上氏。ルーキー台頭、増矢選手の現役引退を花道で飾るという思い、そして、なでしこ勢のコンディション改善。その3つをポイントに、一戦必勝がノルマとなるなか、INAC神戸は次節、28日(日)にホームのノエビアスタジアム神戸で10位のマイナビ仙台レディースと対戦します。この日は、チームの大黒柱・田中選手のバースデー。6試合ゴールから遠ざかっている背番号9に得点が生まれてこそ、INAC神戸の怒涛の追い上げが始まるというもの。今こそエースの活躍に期待せずにはいられません。

(※ラジオ関西『カンピオーネ!レオネッサ!!』2024年4月22日放送回より)

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