鳥山明ワールドをどっぷり体感!ゲーム『SAND LAND』は「まるで漫画を操作」できる快作だった!【プレイリポート】

ゲーム『SAND LAND(サンドランド)』 (C)バード・スタジオ/集英社 (C)Bandai Namco Entertainment Inc.

漫画家・鳥山明さんが、『ドラゴンボール』完結後に描き上げた冒険ファンタジー『SAND LAND(サンドランド)』。そのコミックス全1巻を原作に、鳥山さん考案の新章も加えて展開されるアクションRPGが、4月25日に発売されたゲーム『SAND LAND』(バンダイナムコエンターテインメント/プレイステーション5ほか)です。

原作では、悪魔と老人、砂漠に戦車というシブ~い作品世界が評判でしたが、ゲームには新たに、天才的メカニックの女の子や、緑豊かな森の国も登場して華やぎが感じられます。どんな冒険が待っているのか、実際に遊んでみた印象とともにご紹介しましょう。

■マンガでも映画でも描かれなかった「その先」をゲームで体験

『SAND LAND』は、ゲームに先駆け、2023年にアニメ映画化されています。鳥山作品ならではのユーモアあふれる冒険活劇と、チャーミングなキャラクターに加え、鳥山さんの絵がそのまま動いているかのような映像が、好評を得ました。

お話の舞台は、人間と魔物とが共存する砂漠の国・サンドランド。悪魔の王子ベルゼブブとそのお供が、老保安官とともに、幻の泉を探す旅に出ます。

主人公のベルゼブブは“悪魔よりワルだなんて許されない”という理由で巨悪に立ち向かう、結果的には正義のヒーロー(笑)。そのまっすぐな心と、善人扱いはまっぴらゴメンという悪魔ゆえのふるまいとのチグハグが、さわやかな笑いを呼び起こすんですよね。

この劇場版の世界に入り込み、さらに、その先のストーリーまで体験できるのが、ゲーム版『SAND LAND』と言えるでしょう。そう、原作にも映画にも描かれていない、お話の続きも展開されるんです。

今回のストーリーは原作の続編にあたり、『SAND LAND』のゲーム・映像化プロジェクト発足に際して、鳥山さんが原作執筆から20年以上を経て考案したもの。森の国・フォレストランドを舞台に、少女アンを迎え入れたベルゼブブ一行の、新たな冒険がつづられます。

■どこかで見たホバーカーにバトルロボット……鳥山メカの乗り換えが楽しい!

ゲーム『SAND LAND』では、プレイヤーが主人公ベルゼブブを操作し、サンドランドとフォレストランドを探索。その都度示される目的を達成しながら、クエストを進めていきます。

目的地までの旅路では、そのエリアに棲息する巨大な生物や、対立する勢力とバトルになることも。また、多くの目的地では、強敵との戦いが待っています。戦闘では、悪魔として体術や特殊能力で戦うこともできますし、戦車などの武装メカに乗って立ち回ることもできます。

実際にプレイしてみると、劇場版と同様、ストーリーのおもしろさとキャラの魅力が、ゲームの柱であることは間違いありません。事実、オープンワールドのような設計ではあるものの、あくまでもシナリオ主導。自由に旅するというよりは、物語に引っ張られていく感覚のほうが強めで、展開にワクワクさせられます。

また、鳥山ワールドが見事に再現された映像に驚くのも、劇場版とゲームとの共通点ですが、まるでマンガから抜け出たような鳥山キャラ・鳥山メカを自在に動かすことができるのは、ゲームならではの楽しみ!

とくにメカの種類は豊富で、戦車をはじめ、ホバーカーやバトルメカなど、多種多様な機体に乗ることができます。原作や映画に登場しないオリジナルメカも多数ラインナップされているのですが、中には「はて、どこかで見たような……!?」という機体も。『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』を楽しんできたファンならグッとくる、“鳥山メカ”に出会えるはずです。

メカは移動と戦闘とで活躍しますが、とにかく乗り降り・乗り換えがカンタン! 瞬時に降りて悪魔の姿で身軽に立ち回ることもできますし、次から次へ別のメカに乗り継いでいくことも可能です。この仕組みや、たとえば「ジャンプメカでしか越えられない崖」といった仕掛けが、いろんなメカを使ってみたいプレイヤーの好奇心を後押し。

また、戦闘などで手に入る素材やパーツを使って、メカをカスタマイズする楽しみも。装備によって、見た目はもちろん、攻撃や移動の特性が著しく変わるため、好みの1台を作り上げる過程にハマることうけあいです。

こうしてメカと関わるうちに、動きや細部に発見があったりして、おなじみの鳥山メカへの理解も深まります。ちなみに、なぜベルゼブブたちは何種類ものメカにその場で乗り換えられるのか。これは「カプセル」に収納して携行しているからです。鳥山ファンならニンマリの設定ですよね。

■らしさ全開の「鳥山ワールド」そのものを体感している気持ちに

さて、ゲームを販売するバンダイナムコエンターテインメントのプレスリリースには、原作の『SAND LAND』について、「キャラ、メカ、世界観、ストーリーが凝縮された“鳥山先生色”がとても強い作品と評されることをどう思いますか?」という質問を受け、「たしかにそうかもしれませんね。読者のことをもっと考えなきゃいけないのに、好みを優先してしまった気がします」との鳥山さん自身のコメントが掲載されています。

実は筆者は、今回のゲームで『SAND LAND』に初めて触れましたが、鳥山さんのコメントに納得しきりでした。プレイしている間じゅう、鳥山さんらしさ全開の、鳥山ワールドそのものを体感している気持ちだったからです。『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』と違い、短編作品であることも、そんな印象を強めている気がしました。

なお、動画配信サービス『ディズニープラス』では、3月より連続アニメ『SAND LAND:THE SERIES』がスタートしました。劇場版を再構成した「悪魔の王子編」と、完全オリジナルの「天使の勇者編」計13話の構成で、後者がゲーム版のフォレストランドでの展開とリンクするお話です。

筆者はゲームから入ったことで、お話の展開を新鮮に感じつつ、イチイチ驚きながら、世界を身をもって知る、濃密でいい体験ができました。でも、アニメを先に観てストーリーを把握したうえで、ゲームで深掘りをしていくのもまた、いろんな発見があって楽しそう。どちらが先でも、共通のボイスアクターが情感豊かに演じるドラマが、追体験を盛り上げてくれることでしょう。

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