GWに観たい「女性の勇気が世界を動かした」映画4選!『レ・ミゼラブル』監督最新作『バティモン5 望まれざる者』や今すぐ観られる配信作品も

『バティモン5 望まれざる者』© SRAB FILMS - LYLY FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023

花の都パリが抱える“不都合な現実”とは?

パリ郊外に存在する、都市再開発を目前に控えた居住棟エリアの一画=通称「バティモン5」。治安の悪いエリア一掃を目論む行政と反発する住人たちが、ある事件をきっかけに、ついに衝突する――。

前作『レ・ミゼラブル』(2019年)でその名を世界に轟かせたフランスの新進気鋭監督ラジ・リが、“排除”と“怒り”の衝突を描いた緊迫の最新作『バティモン5 望まれざる者』が、2024年5月24日(金)より全国公開となる。

すでに突入している人もいるGWから、眼の前に迫った夏に向けて長期休暇をとることも多くなる季節、この機会に日常のサムシングを改めて見つめ直そうという人も多いだろう。

ということで、“これからの自分”の参考にしたい<女性の勇気が社会を動かした映画>4作品を厳選してご紹介。理不尽なこと、納得がいかないこと、なんとか変えていきたいこと……日々の生活につきまとう様々な困難にもめげず、前を向き続けた女性たちの姿に勇気をもらうこと必至の傑作たちを是非チェックしてみては。

暴かれる「パリの素顔」とは?『バティモン5 望まれざるもの』

2024年5月24日(金)より全国公開

労働者階級の移民家族たちが多く暮らす、パリ郊外(=バンリュー※)の一画<バティモン5>。老朽化が進んだこのエリアでは、再開発をするために取り壊し計画が進行していた。だが、前任者の急逝で臨時市長となったピエールは、自身の信念のもと、バティモン5地区の復興と治安を改善する政策のスピードアップと強行を決意! しかし、あまりの急展開と、横暴なやり方に住民たちは猛反発、やがてバティモン5に長年居住する住民側と、市長を中心とした行政側が、ある事件をきっかけについに衝突、激しい抗争へと発展していく――。

前作『レ・ミゼラブル』では、監督が生まれ育ったパリ郊外の犯罪多発地区モンフェルメイユを舞台に、そのエリアを取り締まる犯罪防止班(BAC)と少年たちの対立を描いたが、本作で市民が闘うのは<行政>。それまで移民のケアスタッフとして住民に寄り添いながら慎ましく働いてきた女性アビーが、権力が押し付ける横暴な政策に対し、「ただ待っているだけでは何も変わらない」と心を決め、自ら先頭に立つことを決心する。

「黙っていても何も変わらない」――決意の後、憑き物が落ちたかのように、自らと周囲の正義のために、怯まずただ前進していく女性アビーの逞しい姿は、観る者に勇気をもたらすはずだ。

※1:フランス語で「郊外」を意味する「banlieue(バンリュー)」は、<排除された者たちの地帯>との語源を持つ。19世紀より労働者の街として発展し、戦後は住宅難を解消する目的で大量の団地が建設された。団地人気が低下する1960年代末より旧植民地出身の移民労働者とその家族が転入し、貧困や差別などの問題が集積する場となった。

息子を奪われた母が人種差別と闘い世界を変えた!『ティル』(2023年)

▶Prime Videoほか配信中

1955年、イリノイ州シカゴ。夫が戦死して以来、空軍で唯一の黒人女性職員として働くメイミー・ティルは、一人息子で14歳のエメット:愛称ボボと平穏な日々を送っていた。しかし、エメットが生まれて初めて故郷を離れ、ミシシッピ州マネーの親戚宅を訪れた際に悲劇は起こる。少年が飲食雑貨店で白人女性に向けて「口笛を吹いた」ことが白人の怒りを買い、白人集団にさらわれ、姿形が変わるほど壮絶なリンチを受けた末に殺されて川に投げ捨てられたのだ。

当初は息子を理不尽に失った悲しみに暮れるだけだった母親が、世界に黒人差別の現実を知らしめるため<変わり果てた息子の姿をメディアに公開>という、常識では考えられない大胆な行動を起こす――。そんな実際の事件をもとに映画化された本作。1人の息子のために起こした彼女の勇気が、やがて多くの黒人たちに希望を与え、一大センセーションとなって社会を動かす原動力となっていく。そんな母の愛にとにかく圧倒される、衝撃の実話にして感動作。

エンタメ界の性暴力を暴いた女性たちの実録ドラマ『SHE SAID/その名を暴け』(2022年)

▶Prime Videoほか配信中

ニューヨーク・タイムズの女性記者ミーガンとジョディは、ハリウッドに君臨する大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数十年にわたる性的暴行疑惑について追い続けていた。やがて、被害を受けながらも声を上げることの出来なかった、揉み消された多くの女性たちと出会い、未だその大多数が恐怖、トラウマを抱えていることを知り……。

おぞましい事実を明らかにするため、粘り強く調査に邁進するも強大な権力によって、様々な調査妨害を受け挫けそうになるミーガンとジョディ。だが、やがて証言を決意した勇気ある女性たちと出会い、諦めていた未来が、少しずつ、変わっていく――。自分たちの声と勇気が世界を変える力になる、そう信じたくなる骨太な一作で。

茨の道を切り拓いた“ノトーリアスRBG”真実の物語『ビリーブ 未来への大逆転』(2019年)

▶Huluほか配信中

貧しいユダヤ人家庭に生まれたルース・ギンズバーグ。名門ハーバード法科大学院に入学するも、1956年当時、500人の生徒のうち女性は9人、女子トイレすらなかった。やがてルースは、家事も育児も分担する夫のマーティンの協力のもと首席で大学を卒業するが、“女性である”という理由だけであらゆる法律事務所からの就職を断られる。やむなく大学教授になるも、弁護士の夢を捨てられず、夫から聞いた<ある訴訟>が歴史を変える裁判になることを信じ、自ら弁護を買って出るルースだったが……。

現在放映中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」でも、男女差別が残る社会で日本初の女性弁護士を目指す女性<虎子>が話題だが、海を渡ったアメリカでも、やはり社会での男女差別は同様。女性が自分名義のクレジットカードさえ作れなかった1970年代、自らの夢を信じて弁護士を目指し、成功し、やがて史上2人目の女性最高裁判所判事に指名され、女性やマイノリティの権利を強力に擁護したことで知られる<RBG>ことルース・ベイダー・ギンズバーグ(2020年没)。今ある自由が“当たり前”ではなく、誰かの勇気と奮闘の上で成り立ってることを思い出させてくれる傑作だ。

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