廃止の動き広まる「高校の朝課外授業」賛否は拮抗 続ける理由、やめる理由、背景を探ってみた【鹿児島発】

九州のみで行われてきたという、1限目の前に行われる「朝課外授業」。ここ数年、鹿児島県内では廃止の動きが広まっている。学校現場の声はどうなのか、朝課外を2023年度に廃止した市内の高校の生徒に、どんな変化があったのか聞いた。

朝課外授業の是否 あなたの意見は?

正規の授業である1限目の前に行われる「朝課外授業」。「ゼロ時限目」「ゼロ校時」とも呼ばれ、鹿児島県など九州で多く行われてきた。もともと学習塾などが少なく、生徒たちの勉強をサポートするために始まったといわれている。

ただここ数年、鹿児島県内の実施校は県立高校61校のうち2019年度が39校、2022年度には26校、そして2023年度には18校に減少し、廃止の動きが広まっている。

鹿児島テレビではSNSで朝課外について、賛成か否かアンケートを実施した。4月17日からの6日間で、600人以上から回答があり、関心の高さをうかがわせた。

その結果は「賛成」30%、「反対」34%、「どちらとも言えない」36%と、3つに割れた。

賛成 30%
理由1 学力の維持
・学力が向上して希望の大学に合格できた(70代男性)
・授業では不足する学習内容を補足できる(50代女性)

理由2 学習習慣の定着
・朝型に体がなると思うので(40代女性)
・塾にいって遅くまで勉強するより朝早く起きて授業するのがいい(50代女性)

理由3 塾に行かずに学べる
・経済的に塾に行く余裕がなかったが、学習習慣ができ大学にも合格した(30代女性)

反対 34%
理由1 睡眠時間の確保
・朝7時40分に登校するのがきつく、親も毎朝5時半起きでの弁当作りに疲れていた(60代男性)
・朝課外の後の日中の授業が眠くて内容が入ってこない(30代女性)

理由2 教師の負担軽減
・登校してバタバタで授業が始まりしんどかった。子どもも親も頑張りすぎ。早く廃止してほしい(元教師・30代女性)

理由3 自主的な学びのため
・やる気がない人に無理矢理やらせて果たして意味があるのか(20代女性)

朝課外の廃止で生徒の心境に変化も

賛否が分かれる中、学校現場の声はどうなのか。鹿児島市の県立鹿児島南高校では、朝7時半から8時10分まで行っていた朝課外を2023年度に廃止した。今は、午前9時5分からの1限目が授業のスタートとなっている。生徒たちに集まってもらい、どんな変化があったのか、聞いてみた。

林亜美さんは、「朝は6時台のJRに乗って授業を受け、帰ってすぐ宿題、そして寝てという生活で、プラスアルファの勉強をする余裕はなかった」と語る。
瀬戸口果奈さんは、以前は午前5時起床だったが、今は6時起床に。「朝ゆっくりでいいので、心に余裕ができた」という。

一方、嶧田杏さんのように、朝課外があった頃よりも登校時間が早くなったとして心境の変化を挙げる生徒もいる。「この時間が自由に使えるようになったので、みんなより勉強しようと思って早めに学校に来て勉強しています。ここで差がつくと思ったらやる気が出ます」と積極的だ。

進路指導担当の米満初美先生は「朝課外授業は廃止からまだ1年しかたっていないので、その影響は分からない」としながらも、廃止の理由については「自ら学ぶ姿勢のある生徒を育てたいという学校側の思いが強かった」と話す。

生徒の学びのために必要なものは

鹿児島県の隣、熊本県にも聞いてみた。熊本県の高校教育課によると、2023年度から全ての県立高校で朝課外授業をやめた。

当初は本当にやめていいのかという声もあったが、PTAとしっかり話をして時間をかけてやめる方向へ進めていったという。単に廃止するのではなく、生徒に最適な学びの環境について考えることが重要なようだ。

朝課外授業を続ける鹿児島県の高校にも理由を聞いた。
「学力維持」や「保護者や生徒からの要望」「志望校合格のため」といった回答があったが、ほとんどの学校が映像取材の申し入れに対し、「朝課外授業の効果を検証していく必要があり、まだはっきりと理由を回答できないため対応は難しい」とした。

朝課外授業を続けている高校でも、生徒の学びのためには何が必要か、慎重に見極めようとする姿勢がうかがえた。
賛否の分かれる朝課外授業の是否。大事なことは選択を急ぎすぎず、主役である生徒について、しっかりと見守り続けることではないだろうか。

(鹿児島テレビ)

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