真矢ミキ「本当に難しかった」篠山紀信の写真集、武道館公演など「新風」を吹かせた宝塚時代

真矢ミキ 撮影/三浦龍司

「タカラヅカの革命児」と呼ばれるほど様々な新風を吹き込んだ、宝塚の元トップスター・真矢ミキ。退団後は舞台から映像の世界へと活動の場を移し、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の警視監役で大ヒット。映像界でも人気俳優となった。俳優だけでなく朝の情報番組の司会や東京五輪開会式の舞台など、新しいことにチャレンジし続けてきた彼女の「THE CHANGE」とは――。【第1回/全4回】

「あら、徹子さんのTシャツ」

取材スペースに入ってきた瞬間、ライターが着用していたTシャツが黒柳徹子さんのプリントものだと気づき、柔らかに声をかけた真矢ミキさん。

「先日『徹子の部屋』に出演させていただいたときに、私も同じものをいただいたんです。徹子さん、とても素敵な人だったなあ」

穏やかな表情で、ゆったりと優しく話す姿は、画面の中でのキリッとした印象とは少し異なる。

「普段はゆったりした性格で、割とぼーっとしていたいタイプなんです。低血圧でもあるので、朝も苦手。テレビを観ながらダラダラすることも、よくあります」

多くの人にとっては普通の行動だが、真矢さんがダラダラしている姿を想像すると意外に感じてしまう。それは、真矢さんがこれまでかっこいい役を多く演じてきたからだろう。『踊る大捜査線』や『アテンションプリーズ』(ともにフジテレビ系)などで見せた、クールで強気な上司という印象が強い。

Season2の放送・配信を開始したドラマ『TOKYO VICE』でも、まさにクールな真矢さんが観られる。1990年代 後半以降の東京を舞台にした『TOKYO VICE』は、日本で新聞記者となったアメリカ人ジャーナリスト、ジェイクを主人公としたドラマシリーズだ。 「出演するとは思っていなくて、一視聴者としてハマっていました」という真矢さんは、Season2から参戦。深く危険な闇社会が描かれる中、渡辺謙演じる刑事・片桐の相棒、長田を演じる。

「自分も生きてきた90年代の、東京の裏社会の世界を海外の記者の目線で見る。世界観の深さや奥行きに、惹き込まれる作品です。あのバブルの余韻を感じる時代があって、今のこの時代がある。日本を、東京を、いろんな視点で見ていただきたいですね」

「やんちゃでしたね」タカラヅカの革命児と呼ばれた時代

物語の舞台となる1990年代後半以降は、真矢さんが宝塚でトップスターとして活躍していたころ。宝塚時代には「タカラヅカの革命児」と呼ばれ、日本武道館でのソロコンサート、篠山紀信撮影による写真集の出版など、独自のアイデアで新しい風を吹き込んだ。

「やんちゃでしたね。前例がないことを実現させるのは、本当に難しかった。一歩踏み出すだけでも、やっとでした。私は強気だと思われがちですが、普段はそうでもないんです。なので自分の意見を通すのは、一つ一つが私にとっては大変なプレゼンでした」

いわゆる王子様のような雰囲気とは違う、日常にも溶け込めそうな洗練された現代の等身大な男役を演じた真矢さん。普通の女性からの目線を大切に、現実世界の男性の要素を取り込みたかったのだという。

「もちろん反発もありましたよ。先陣を切るときは、やっぱり向かい風。でも気づけば仲間が増えていったんですよ。横にいてくれる人たちのおかげで、新しい風を取り込むことができたのだと思います」

とても正直に当時の思いを語る真矢さんの姿を見ていると、「仲間が増えていった」理由も自ずと見えてきた。先頭を進む真矢さんに勇気づけられて、「自分も」と思った方々はたくさんいることだろう。

真矢ミキ 撮影/三浦龍司

ヘアメイク:小澤久美子、スタイリスト:佐々木敦子

真矢ミキ(まや・みき)
1964年、広島県生まれ、大阪府出身。81年宝塚歌劇団に入団し、花組のトップスターとして活躍。日本武道館でのソロコンサート、篠山紀信撮影による写真集の出版など、独自のアイデアによる活動で「タカラヅカの革命児」と呼ばれた。98年退団後は、俳優として、数多くの映像やドラマに出演。2015年より4年半、朝の情報番組『ビビット』(TBS系)の司会も務めた。近著に書き下ろしエッセイ『いつも心にケセラセラ』(産業編集センター)。

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