「何度訪れても猛烈に感動!」北アルプス・蝶ヶ岳山行ルポ

白く輝く槍ヶ岳と対面(撮影者:@ryo.k2814)

長野県北部では遅い桜も散りはじめ、里山は芽吹きの季節。麓は新緑の季節になりつつあるが、標高の高い山には雪が残り、その姿を見ようとまだまだ雪景色を求めて登っている。4月半ばより林道の通行が解除され、山々へのアクセスがしやすくなる。いわゆる開山だ。山小屋も再開されはじめ、賑わう季節へと移り変わる。

今年、林道開通後に選んだ山は、4月19日に三俣登山口への林道が解除された蝶ヶ岳。蝶ヶ岳には4度登っているが、残雪期は初めてであり、雪景色が楽しみである。

■ゲートが開くのを待っていた!

まめうち平から雪道となる

久しぶりの林道の運転も「こんなに大変だったかな」と思いながら暗闇の中、カーブの連続に注意して進む。林道を歩いていた厳しい冬が終わったのだなと寂しい反面、道路が使えることに感謝の気持ちが湧いてくる。

駐車場に着くと登山者が何組もおり、私の後にも続々とやってくる。ゲートが開くのを同じように待っていた登山者がたくさんいるのだと感じた。そして、車から降りても寒くないのが不思議な感覚である。山頂は寒いと思うと、行動着が悩ましい時期でもある。

■初めての蝶沢

登山口に雪は無く、スリーシーズンの靴に足取りも軽やかに進んでいく。2年ぶりに会うゴジラ君(登山道にある枯木のゴジラみたいな木)も元気そうだ。標高1,800m地点から少しずつ雪が出てくる。まめうち平からは完全な雪道となる。朝方は気温も低く雪もしまっているが、時々踏み抜くこともある。

蝶沢の手前で、装備を12本アイゼンとピッケルに変える。蝶沢をトラバースしていくと夏道もあるが、雪が締まっている今の時期は蝶沢を直登していくこともできる。高所恐怖症の私は直登している間はいつも後ろを振り向けない弱点があるが、反対側には青空と常念岳が聳える。ゆっくり慎重に登っていき、直登を終えるとあともう一息で山頂だ。

■目に飛び込む白く輝く穂高連峰

稜線に出て歩みを進めると、不意に黒い槍の穂先が見えてくる。待望の景色に心臓が高鳴った。何度も訪れているのでわかっている景色なのだが、穂高連峰、槍ヶ岳の大迫力に猛烈に感動するのだ。一歩一歩近づく度に、白く輝く雪壁の穂高が迫るように現れる。ここは皆が思わず歓声をあげてしまうのではないだろうか。5時間かけて登ってきた格別なご褒美に感無量な瞬間である。南には御嶽山、乗鞍岳、焼岳も見え、裏銀座や表銀座の山々の稜線も続く、大パノラマな景色を楽しめる蝶ヶ岳は本当に最高である。

このロケーションの中、風もさほど強くなかったので、担いできたコーヒーとモンブランを並べ、手製の山頂カフェで心地よい時間を過ごした。“お楽しみ”を担ぐことも醍醐味である。

■これから楽しみな高山植物

「下りたくなーい」と名残惜しい……。ここは下り始めるとすぐにこの景色とさよならするのがとても寂しい。「また来るね」「いい景色を見せてくれてありがとう」と挨拶をして、蝶沢の急坂を私はまた慎重に下っていく。午後になり、気温が上がって柔らかい雪になっていた。登山口近くまで降りると、朝には気づかなかった小さな花が咲いていた。これからどんどんお花も増えてくるので高山植物が楽しみだ。

下山は3時間ほどで駐車場に着いた。4月とは思えないほどの気温で最後はノースリーブにもなった。行動着の調節もしながら快適に登山をしていきたい。蝶沢ルートについては最新の情報や実際に雪質を見て判断して欲しい。

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