熊本市の4小学校が「小規模特認校」に 市内全域から就学可能、複式学級解消

 熊本市教育委員会が2024年度に市内4小学校で初めて導入した「小規模特認校制度」で、3校に計8人が通い始めた。市内全域から就学でき、複式学級の解消といった効果が表れた一方、転入学児童がいなかった学校もあり、課題が残った。市教委は25年度に新たに別の3校でも制度導入を予定しており、周知や対象校の魅力アピールを図る。

小規模特認校制度を利用し、2024年度から児童4人が転入した中緑小=1日、熊本市南区

 小規模特認校は通学区域に関係なく転入学を認め、児童生徒数が少ない学校の活性化を図る制度。県教委義務教育課は「把握しているだけで山鹿市や益城町、大津町など7自治体も既に導入している」という。

 熊本市教委は複式学級があるか、将来的に複式学級になる可能性がある学校を対象に導入を検討。23年度時点で複式学級のあった中緑小(南区)と山本小(北区)、将来的に可能性がある本荘小(中央区)と川口小(南区)の計4校での導入を決めた。

 24年度は学年ごとに定員を1~9人とし、4校合わせて87人を募集。4月から中緑小に4人、本荘小に3人、川口小に1人が入った。山本小には転入学を希望する児童がいなかった。

 通学理由について、市教委は①小規模校で伸び伸びと学ばせたいとの希望②学校の近くに保護者の職場がある③卒園した保育園の知り合いと一緒に通いたいとの思い-を挙げる。

 中緑小(児童数47人)では24年度、6年の転入で5・6年の複式学級が解消。林田匡校長(53)は「もともと通っている子どもたちの人間関係の幅も広がる」と歓迎し、校区外から送り迎えをする保護者の負担にも目配りしたいとする。

 天明地区では27年度に小中一貫の義務教育学校が発足するのに合わせ、中緑小も新校への統合が決まっている。中緑小の保護者からも「いろんな地域から児童が集まるような魅力的な仕組みはできないか」と制度導入を求める要望が出ていたという。

小規模特認校制度を利用しての転入学が0人だった山本小=10日、熊本市北区

 一方、転入学児童がいなかった山本小の地元も制度への期待は大きい。山本校区自治協議会の境俊次会長(71)は「地域の学校で子どもたちの声が聞こえることで、地域は明るくなる」と話し、地域ぐるみで子どもたちを育てる地元の魅力をアピール。山本小に来てもらうためには、市中心部から離れた地理的条件の克服が重要とみる。

 市教委によると、24年度は学年ごとに定員を設けたため、募集がなかった学年に該当する児童が制度利用を見送った事例もあった。学務支援課は「制度や受け入れ校の魅力を周知し、転入学を希望する子どもたちを対象とした授業体験の機会も提供できるよう検討したい」としている。(石井颯悟)

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