消滅可能性

 “失言”の背景が細かに明かされた記事を見つけた。〈出産できるのはほぼ15歳から50歳までで、その数は分かっている。少子化問題はこの年齢幅の女性を中心に考えアプローチするしかない、という論旨で話を進めました〉▲ところが、聴衆の反応が今ひとつだ。分かりやすく話さねば、と焦った大臣の頭をよぎったのは、若い頃聞いた自動車メーカー創業者のこんな言葉だった。「自分は全ての工場の全生産ラインの癖を熟知している」▲「生産」と「産む」が脳内で短絡されてしまったか、彼は出産できる女性の人数が限定されていることをこう表現してしまった。「機械や装置の数は決まっているから」-柳沢伯夫厚労相の「女性は産む機械」発言は2007年の出来事▲蒸し返して批判するつもりも、改めて擁護するつもりもないが「消滅可能性自治体」の記事を読みながら氏の発言を思い出した▲全国では744市町村、県内は11市町。リストアップの根拠は2050年までの30年間で〈20~30代の女性が半数以下になるかどうか〉の推計だ▲着想が“産む機械”とよく似ている。1本きりの物差しで地域の不安な未来が語られることへの違和感も消えない。女の人は子ども産むって決めてるんですかねえ。報道部の内勤の女性が軽く首をかしげていた。(智)

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