蓮の実は「心」を養い不眠トラブルによい生薬として使われる【健康長寿に役立つ高齢薬膳】

蓮の実の安眠スープ(C)日刊ゲンダイ

【健康長寿に役立つ高齢薬膳】

蓮の実

◇ ◇ ◇

最近、朝起きてもぐっすり眠った感じがしない。夢ばかり見て、目覚めてもスッキリしない………。年齢を重ねるにつれて睡眠の悩みで困っていませんか?

睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2つの状態があります。レム睡眠では、脳が起きているときと同様に活発に働き、記憶を整理したり、定着が行われているとされています。眼球が急速に動いた状態で、眠りの状態は浅く、夢の多くはこの状態において見ています。一方、ノンレム睡眠では大脳皮質の神経細胞の活動が低下した「脳が休息している」状態です。眼球も活動することなく、眠りは深くなります。

通常、一晩を通してレム睡眠とノンレム睡眠は90分ごとに繰り返します。ただし、シニアは加齢によってノンレム睡眠は減り、レム睡眠が増える傾向があります。そのため、眠りが浅く、夢を多く見たり、ちょっとした物音や尿意ですぐ目を覚ましやすくなるのです。

そもそも、加齢とともに昼間の活動量は少なくなるため、熟睡できなくなりがちです。熟睡感がなく、朝からどんより、昼間いつも眠たい、集中力が低下……といった状態はつらいもの。食養生で改善を図りましょう。

中医学では「心」と呼ばれる臓器の働きが衰えると、睡眠に問題が現れやすいと考えます。心は意識や思考、感情などの精神活動をコントロールする臓器です。心が弱ると、不眠、眠りが浅い、夢をたくさん見る、非現実的な夢をあれこれ見て疲れるといった症状が引き起こされます。また、うつ、落ち込みやすい、不安、無気力、やたらとマイナス思考になるといったメンタルの不調も現れがちです。

熟睡できないうえに、起きている間もウツウツした状態ではつらいもの。心を養う食材を取り入れて改善を図りましょう。

おすすめは蓮の実。安眠に絶大な効果があるのです。蓮の花が咲いた後にできる種の部分で、乾燥させたものが食用として販売されています。中国ではおなじみの食材で、中華おこわなどに使われています。

蓮の「根」の部分であるレンコンも不眠によいのですが、種はよりパワーが高く「連子」という名前で、心を養い、不眠トラブルによい生薬として用いられています。日中の緊張、気持ちの高揚が高くなかなかな寝付けない……というときにもおすすめです。

落ち込み、うつ、情緒不安定などメンタルの不調全般に威力を発揮します。慢性の下痢や尿漏れ改善にも役立ち、動悸が気になる人にもぜひ取り入れてもらいたい食材です。

蓮の実は、中華食材店で販売されています。使い方は柔らかくなるまで10分程度、水でゆでればOK。味にクセがなく豆や栗のようなホクホクとした食感で、サラダのトッピング、炊き込みごはん、スープなど豆を使うような感覚で使えます。また、甘みをつけてデザートにしたり、塩炒りすると、スナック感覚でおやつやおつまみとして美味しくいただけます。

蓮の実の安眠効果を高めるには、同様に心の働きを強める、牛乳、卵、ブドウ、ハチミツなどと組み合わせるとよいでしょう。

■蓮の実高齢薬膳レシピ

蓮の実の安眠スープ

心を養い安眠に役立つ蓮の実と、同様の効能がある牛乳を組み合わせたレシピ。レンコンも加えて、より「ぐっすり感」を高めます。味噌を加えてコクを出したミルクスープは癒される味わい。蓮の実のホクホクと、シャキシャキしたレンコンの食感も楽しめます。

【材料】
●蓮の実 10粒
●レンコン 60g
●牛乳 2カップ
●コンソメ(固形) 1/2個
●味噌 小さじ1/2
●オリーブオイル、こしょう 適量

【作り方】
鍋にオリーブオイルを熱し、1センチ角に切ったレンコンを炒める。水1カップ、コンソメ、蓮の実を加えて沸騰したら火を弱め、約10分煮る。蓮の実が柔らかくなったら牛乳を加え、味噌、こしょうで味を調える。

(池田陽子/薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト)

© 株式会社日刊現代