73kg→57kg、危険な減量で倒れた過去 実は栄養士の資格持つRIZIN王者・鈴木千裕の転機

鈴木千裕【写真:ENCOUNT編集部】

危険な減量でミス…MMAキャリアを1度中断

現RIZINフェザー級王者である格闘家の鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)は4月29日に行われる格闘技イベント「RIZIN.46」(有明アリーナ)で挑戦者・金原正徳を迎えての初防衛戦を行う。1日に4部練するほど追い込みをする鈴木に体調管理について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

料理学校に通っていた鈴木は調理師免許に加え、栄養士の資格も取得している。「格闘技に生かすのはもちろんです。体は10割食べ物でできているので、それに詳しい方が絶対いいですし、自分でご飯を作って管理できるようになるので」と取得の理由を明かす。

料理に使う素材にこだわることができるか。体調管理もプロのファイターとして大切な要素だ。

「料理を作るのは今はネットもあるので、正直誰でもできるんですよ。でも入れる素材とかは知識がないとダメ。調味料も市販の塩を使うよりも少しいいものを入れた方がいい。砂糖も『パルスイート』にした方が糖質を少し抑えられます」

ほかにも「王道でいうと、食用油をオリーブオイルにする。オリーブオイルを米油に変えるとか……。『動物性は体脂肪がつきやすい』とか、とにかく種類と効果を僕は知っているので、生かせますよね」と“練習の虫”からは想像できない一面をのぞかせた。

過去は正反対の人間だった。2016年末にRIZINのアマチュア大会のフライ級部門で優勝し翌年の2月に「PANCRASE」の舞台でMMAプロデビュー。タイトルを目指し通常体重である73キロから57キロまで落とす危険な減量も敢行。身長も現在の173センチと変わらない体格で1度は成功したが、2度目の18年12月に計量ミスで倒れる事故を起こしてしまう。ここでMMAファイターとしてのキャリアを1度中断した。

「(減量の)知識が全くなかったんですよ。食わないで練習する、そうやって減量していました。ご飯食べなかったら痩せるじゃないですか。干し芋を食べるとか、かさを減らしていく形です。めっちゃお腹空きましたけどね」

料理学校だったため、計量前日に麻婆豆腐を炒めていたこともある。減量期間は立ち上がるとふらついてしまい、学校でも地面に横たわるほどだった。

「成長期だったので段々体重が増えていた時期なんです。1回はクリアしたんですけど、めちゃくちゃきつかった。計量前日まである程度落として寝て、それだと落ちないと思ったので夜中2時に起きてサウナスーツを着て公園を走るみたいな」

計量をパスし試合当日までに体重は8~9キロ戻す。それがおごりとなった。「本当に練習環境も整っていなかったし、腐っていました(笑)。『殴ればどうせ倒せるでしょ』って根底にあって落とせば関係ねぇと。1回それで勝ってしまうと次は余裕を持ってやれば落ちると思っちゃうんですよね」と当時を振り返った。

危険な減量をへて、体調管理への考え方が変わった。自分よりもフレームが小さい相手と戦うための大幅な減量が主流になるなかで、鈴木は体を優先していた。

「フェザー級は適正ではないんですよね。階級のなかで見ると自分は小さい。でも動きやすいところでやるのが1番だと思う。この激戦区(フェザー級)でチャンピオンになることに意味がある」

1Rからエンジン全開で戦い“スカ勝ち”を続けている。その裏には栄養士の資格を生かしたち密な体調管理と、体の動きを重視した階級への考え方があった。島田将斗

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