メリットだけじゃない…おひとりさまの「年金繰下げ受給」、落とし穴は【遺品整理のプロが助言】

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老後は何が起こるか分からないもの。年金や貯金に余裕があっても、病気や介護により一瞬で吹き飛んでしまう可能性があります。定年後の収入を増やすためには、事前に年金制度やライフプランについて考えることが大切です。本記事では、生前整理・遺品整理のプロの山村秀炯氏による著書『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』(アスコム)から、老後の収入の基軸を担う「年金」について解説します。

おひとりさまの老後…支出を減らすか、収入を増やすか

お金の見える化をした結果、どうも足りないとか、もう少し余裕が欲しいと思ったら、対策が必要です。

恐ろしいのは、大病を患ったり、要介護になったりしたときの突発的な大出費です。それを考えると、日々の生活費で蓄えをどんどん取り崩していくのはちょっと不安になります。収支を安定させるためにできることは、単純に支出を減らすか、収入を増やすしかありません。

見える化したお金の中に無駄な支出があるなら、まずはそこから手をつけるべきでしょう。特に固定費を減らすことができると、収支改善の効果は大です。

老後の収入を増やす

収入を増やすには、まだ身体が元気なら働く選択肢があります。定年を迎えた人は「もう働きたくない」「悠々自適に趣味に生きたい」という人もいるかもしれませんが、フルタイムで働く必要はありません。週に2日程度、月に数万円の収入があるだけで、生活には結構余裕が出るものです。

65歳以上の働き過ぎに要注意…老齢厚生年金の支給停止額

最近は65歳を過ぎてもバリバリ働いている方が増えていますが、しっかり給与を得ながら年金の支給も受ける場合は、老齢厚生年金の支給停止額をチェックしておきましょう。

老齢厚生年金と給与(賞与含む)の合計月額が48万円を超える場合、超えた分の2分の1にあたる金額が、老齢厚生年金からカットされます。該当する人は多くないかもしれませんし、それだけ収入があればそもそも経済的な不安はないと思いますが、こういった制度を知っておくのも選択肢を増やすことにつながります。

「繰下げ受給」は年金額を増やすことができるが…

また、公的年金は、受給開始年齢を遅らせることで金額を増やすことができる「繰下げ受給の制度」があります。たとえば3年間繰下げ受給をすることで、約25%も金額を増やすことができます。79歳以上まで生存する場合は、3年間繰下げ受給をしたほうが、しなかった場合よりも年金の総受取額が多くなります。

たとえば70歳までは働いて生活費を稼ぐということであれば、受給開始をそれ以降に繰下げて、リタイア後の収入をより安定させることができます。

ただし、年金受給額が増えるとそれに伴い社会保険料や税金、医療費や介護費などの負担も大きくなることが懸念されます。

年金の繰上げや繰下げを検討する際には、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しておくと安心です。

60歳から年金を繰上げ受給すると…損益分岐点は?

その反対に、早くから年金が欲しい場合は、受給金額を減らすことで、65歳よりも前から年金受給ができます。たとえば、これから年金を受給する方の場合、約24%減額すると、60歳から年金受給ができます。これを「繰上げ受給」と呼びます。

79歳以下で亡くなった場合は、60歳から繰上げ受給したほうが、しなかった場合よりも年金の総受取額が多くなります。

なお、老齢基礎年金額は毎年見直されるので、将来の受給額を確定することはできません。また、厚生年金も厚生年金保険に加入していた期間や支払った保険料の金額によって、受給金額は変わってきますので注意が必要です。

山村 秀炯
株式会社GoodService
代表

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