【インタビュー】就任1年の長崎市長 文化施設建設とスポーツ施設移転 再検討「最適探る必要」

本紙のインタビューに応じる鈴木市長=長崎市役所

 鈴木史朗長崎市長は就任1年となる26日までに、長崎新聞のインタビュー取材に応じた。就任後、新たな文化施設の建設や、平和公園スポーツ施設の移転・存続問題について「再検討」を重ねた意図に言及。「将来世代を含めた市民の利益のためには、思考停止に陥らず、その時点での最適の選択肢を探る必要がある」と語った。

 廃止した市公会堂に代わる新文化施設は、市庁舎跡地(桜町)に建てる計画を止めて再考し、最終的に当初と同じ建設地に回帰。平和公園内で市民総合プールを陸上競技場へ移転する計画でも、賛否双方の関係者を交えた「再検討部会」を設置し、今も議論が続く。

■機動的態勢で
 具体的な再検討理由について、当初の新文化施設の計画は「まちづくりに生かす観点が十分検討されているか」「本当に他に適地がないか」「一連のプロセスに市民が納得しているか」に、それぞれ疑問があったと説明。加えて「財政の負担軽減」を考える必要性もあったとした。
 特に、建設議論に関わっていない市民と話す中で「文化施設の議論が見えない、よく分からないという意見が多い印象があった」。再検討の結果、より多くの市民に関わるまちづくりの視点を加え、市の財政負担軽減を図るため「PFI(民間資本活用による社会資本整備)」など官民連携手法の導入も探る。「民間の創意工夫を借りて市庁舎跡地に地域活性化の鍵となる施設をつくり、その中にいかに文化ホールを溶け込ませるか、しっかり考えたい」と述べた。
 一方で完成は当初の2026年度から遅れ、具体的時期は不透明なまま。練習や発表の場が足りず“不利益”をこうむる文化団体もある。市は今後、民間の意向調査などを進め「拙速ではいけないが、時間軸を意識しながら一つ一つのプロセスをスピード感を持って行う。柔軟で機動的な態勢で進める」とした。

■決断の透明化
 平和公園スポーツ施設の再検討は「議論をしっかりと整理しながら進める」。現在の論点は大きく分けて、▽プールの移転先を陸上競技場と中部下水処理場跡地(茂里町)のどちらにするか▽(プールを)競技場に移転した場合、練習用トラックの規模や機能をどうするか-の2点との考えを示した。
 今後の議論について「プロセスを明らかにしながら決めていく。最終的に全員が納得する案は難しいかもしれないが、『こういう理由でこの案になった』という透明性を確保することが大切だ」と語った。
 市長選で掲げた公約は本年度、第2子以降の保育料無償化などに着手。全体の達成状況について「1件1件の政策の重みや性格が全く異なるため(達成件数などの)数値化は控える」とした。その上で「年度ごとに成果を示そうとする短期主義に陥り、長期的利益を損なうことがあってはならない。『将来的にこれを目指すため今の段階はこれをしている』などと定性的に示していきたい」と述べた。

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