怪盗キッドの本性にギャップ萌え 『名探偵コナン』新作とあわせて観たい『まじっく快斗』

『名探偵コナン』の劇場版最新作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の勢いが止まらない。公開10日の興行収入は65億円を突破し、これまでの劇場版コナンシリーズと比較すると27作品中7番目につける興行収入をたった10日で達成。昨年の『名探偵コナン 黒鉄の魚影』をも超えるメガヒットに向けて着実に記録を伸ばし続けている。

そんな『100万ドルの五稜星』のキーマンである怪盗キッドが主人公を務める作品『まじっく快斗』は、『名探偵コナン』では見ることのできない怪盗キッドの姿を味わうことが出来る作品だ。

高校生の黒羽快斗、その正体は世間を騒がせる怪盗キッド。お調子者だが頭脳は明晰、端正な顔立ちに癖っ毛がチャームポイントの快斗の特技はマジック。快斗の父であり目標である、世界的天才マジシャンの黒羽盗一はマジックショー中の事故でこの世を去った。盗一の死から8年が経ったある日、自宅に作られた隠し部屋に気付いた快斗は、そこで眠っていた怪盗キッドの商売道具を発見する。父親が怪盗キッドであったことに気がついた快斗は、盗一の死の本当の理由を知るために二代目怪盗キッドとなる……。

こうした怪盗キッドのバックボーンも『名探偵コナン』においては描かれないものであり、『名探偵コナン』における怪盗キッドという存在も『まじっく快斗』を踏まえるとより味わい深い存在となる。

『名探偵コナン』における怪盗キッドと言えば、特に登場初期はクールな二枚目キャラクターとして描かれていた。近年ではコナンとの関係を重ね、お互いがお互いを認めているからこそ時折コミカルな面も表に出るようになりつつある。だが、やはり『名探偵コナン』においては“キザな怪盗”という側面が強いキャラクターである。一方で『まじっく快斗』における黒羽快斗は、お調子者で恋愛にウブな男子高校生らしい姿が印象深い。憧れた父の敵討ちをとろうと危険を顧みずに怪盗稼業を続けたり、盗一同様に怪盗淑女(ファントム・レディ)と呼ばれた元怪盗である母の千影からの頼まれ事を遂行したり、幼なじみの中森青子に弱点である魚で追いかけられたりと、『名探偵コナン』におけるキザでクールな印象とは大きく異なる姿のギャップに萌えるファンも多い。

とはいえ怪盗キッドらしいキザな姿も『まじっく快斗』でも一層味わうことが出来る。特に怪盗キッドとして相手の2歩3歩先を行き、獲物を確実に仕留めるその姿は『コナン』以上にキザでクールだ。特に『名探偵コナン』においては作品の構造上、キッドが完全勝利するというストーリーは描けない。キッドが活躍し、勝利を獲る姿をじっくりと楽しむにはやはり『まじっく快斗』はマストチェックな作品と言えるだろう。

これまでに2度アニメ化されている『まじっく快斗』だが、直近の作品としては2014年10月から2015年3月にかけて放送された『まじっく快斗1412』が挙げられる。原作コミックの『まじっく快斗』をベースとしながら、『名探偵コナン』におけるキッド登場エピソードをキッドの視点から振り返る回も定期的に制作されており、キッドファンはもちろん『名探偵コナン』という作品のファンであれば見逃す手はないエピソードだ。

『まじっく快斗1412』の最終回では、コルボーと呼ばれるキッドにそっくりの真っ黒な衣装に身を包んだ怪盗が登場する。その姿は死んだはずの黒羽盗一の姿にそっくりで、コルボー自身“黒羽盗一の兄弟弟子”と自称した。その姿についてコルボーはキッドに「誰にでもなりすますことができるのだよ 君が最もショックを受ける人物にもな」と語ったことで、あくまでもどこかの腕利きの怪盗がキッドがショックを受けるであろう盗一に化けたと思われた、が……。怪盗コルボーは今後も怪盗キッドというキャラクター、そして『まじっく快斗』という作品において間違いなくキーパーソンとなる存在だ。

『名探偵コナン』は劇場版やアニメシリーズを追うだけでももちろん楽しめる作品であるが、世界観を共有するシェアード・ユニバースである『まじっく快斗』を踏まえるとよりディープに楽しむことができる。『100万ドルの五稜星』をまだ観ていない方は、ぜひ『まじっく快斗』も予習の上で映画館に出かけてみてほしい。
(文=ふじもと)

© 株式会社blueprint