犬との『キス』が危険な理由3つ 感染症のリスクや日頃からできる対策とは

1.細菌やウイルスによる感染症にかかる

犬との「キス」が危険な理由のひとつが、『人畜共通感染症(ズーノーシス)の感染』です。

犬とキスをすることで唾液や粘膜の接触がおこり、ウイルスや細菌が原因の感染症に罹患する可能性があります。

また、重篤な感染症以外にも、犬の体ではあまり影響がないような雑菌が飼い主さんの体に入ることで、腹痛や下痢などの症状を引き起こすことも考えられます。

カプノサイトファーガ感染症

カプノサイトファーガ・カニモルサス 、カプノサイトファーガ・カニス、カプノサイトファーガ・サイノデグミという3種類の細菌が原因となる疾患です。

これらの細菌は7~8割の犬の口腔内に常在もので、犬自身にとって基本的に害はありませんが、人に感染すると嘔吐や腹痛、発熱、倦怠感、頭痛などの症状を引き起こします。

さらに、進行すると敗血症や髄膜炎などの重篤な症状を引き起こすこともあるので注意が必要です。

パスツレラ症

パスツレラ症は、パスツレラ・マルトシダという細菌によって引き起こされる疾患です。

こちらも約75%の犬の口腔内に存在するとされていて、キスや噛みつきなどが原因で人にも感染します。

噛まれた部分の傷が激しく痛んだり、腫れたりというような皮膚化膿症が起こり、その他にも肺炎や気管支炎などの呼吸器系疾患、骨髄炎、敗血症などの重篤な症状も見られます。

トキソプラズマ症

トキソプラズマは、原虫によって引き起こされる感染症です。健康体の犬や人間の場合、感染しても発症することはほとんどありませんが、免疫力が低下しているときや妊娠中には十分注意しなければなりません。

妊婦が感染すると早産や流産、胎児の先天性疾患を引き起こす可能性があるとされています。

サルモネラ症

サルモネラ菌に人間が感染すると、 発熱や下痢、嘔吐、血便などの症状が引き起こされますが、健康な成人であれば軽症で済む場合がほとんどです。

ただし、小さな子どもや高齢者、病中・病後の人など免疫力や体力が低下している人が罹患すると、重篤な症状や合併症を引き起こすことがあるので注意しましょう。

2.アレルギーの発症

犬とキスをすると、どうしても唾液がついたり粘膜部が触れ合ったりします。犬の体液や皮脂腺に触れると、そこに含まれるたんぱく質によって犬アレルギーを引き起こす人もいます。

手でなでる程度であれば問題がなかった人も、そのような濃厚接触をすることで発症してしまうことがあります。

ただし、アレルギーに関しては、成長とともに症状が軽くなる人もいますし、小さい頃から動物と濃密に接触することでアレルギー体質になりにくくなる場合もあるとされています。

3.噛みつきなどの事故

人間にとっては愛情表現のキスですが、犬にとっては必ずしもそうではありません。なかには、顔を近づけられることを怖がったり、不快に感じたりする犬もいることを覚えておきましょう。

当然のことながら、犬が不快に思っているにもかかわらず無理やりキスをすれば、威嚇や攻撃の対象となります。

また、スキンシップの最中に外の物音や地震などに驚いて目の前にある飼い主さんの顔に噛みついてしまうことも考えられます。

さらに、犬は遊びのつもりで鼻や唇を噛んで怪我を負わせてしまうこともあります。

日頃攻撃的な犬ではなくても、ふとした拍子に噛んでしまうトラブルは珍しくないため、できるだけ危険を回避するためにもスキンシップの方法はしっかりと考えることをおすすめします。

まとめ

人間は大切な人や大好きな人に、愛情表現のひとつとしてキスをすることがありますが、それを犬にも当てはめておこなうのはやめた方がいいでしょう。

感染症や怪我のリスクが高まりますし、犬はキスを喜ばないことが多いので、お互いにとってメリットがあまりないと考えられます。

犬も人も安全で心地よいスキンシップができるように、ぜひ様々な方法を試してみてくださいね。

(獣医師監修:寺脇寛子)

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