若者にはびこる「誤情報」に起因か…大麻摘発者の8割が「20代以下」 進む低年齢化、県警は警鐘を鳴らす

 鹿児島県警が2023年に大麻事犯で摘発した20代以下の若者は過去10年で最多の31人で、全体の約8割を占めた。県警によると「大麻には有害性がない」という誤情報の拡散や海外の嗜好(しこう)用大麻合法化の流れが一因。専門家は「大麻は精神障害や健康被害の原因になる。薬物売買を巡る犯罪に巻き込まれる恐れもあり非常に危険」と警鐘を鳴らす。

 県警組織犯罪対策課によると、23年に大麻取締法違反容疑などで摘発した39人(前年比4人増)のうち、20代以下は79.4%に上る。19年までは30代以上の方が多かったが、20年以降、20代以下が6割以上を占める状態が続く。

 上ノ町崇薬物銃器対策官は「大麻密売は暴力団の資金源になるなど社会に悪影響を与える」と危機感を強める。「大麻使用や栽培、売買の情報があれば、匿名でもいいので寄せてほしい」と呼びかけ、対策に力を入れる。

 しかし、昨年、姶良市の大麻密売人逮捕を皮切りに客7人を芋づる式に摘発した事件を報じた南日本新聞のネット記事には、「有害性が低い」「海外では合法化している国もある」などとして大麻を正当化する書き込みが相次いだ。

 大麻の有害性ついて、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課の担当者は「乱用期間が長いほど統合失調症やうつ病などの精神障害や知能指数の低下のリスクが高まる。特に若い人ほど言語記憶のパフォーマンスが落ちるなどの影響が大きい」と指摘する。

 いつの間にか何時間も経過するといった知覚の変化や、瞬時の反応が遅れる運動障害で交通事故を起こしやすくなることを示す研究データもある。

 また、嗜好用大麻が合法化されているのは世界約190カ国のうち10カ国前後。元関東信越厚生局麻薬取締部長で国際麻薬情報フォーラム副代表理事の瀬戸晴海さん(67)は「この動きを『大麻解禁』『合法化の潮流』と報じるメディアが少なくないことも大麻は安全との誤解を広めている」と問題視する。

 合法化した国は、大麻乱用の急拡大で取り締まりが限界に達し、生産と流通を管理することで犯罪組織への資金流出を防ぐねらいがある。「合法の国も未成年は使用禁止。所持や使用は国が管理しており自由になったわけではない」と強調する。

 20年12月、国連麻薬委員会は大麻を「医療用途のない最も危険な違法薬物」からの削除を決めた。瀬戸さんはこれについて「医療用途を認めただけで、大麻が『乱用の恐れがあり悪影響を及ぼす薬物』の最も規制の強い区分に分類されていることに変わりはない」と説明する。

 「薬物は多様な犯罪の温床になりうる。大人が知識を持ち、子どもたちに危険性を正確に伝えてほしい」と訴えた。

 ■大麻 アサ科の植物。化合物が100種類以上含まれており、そのうち「テトラ・ヒドロ・カンナビノール」(THC)が最も幻覚、抑制作用が強く、色や音、物の大きさの認識に変調をもたらす催幻覚作用がある。近年、高濃度のTHC成分を含む品質改良大麻やTHC成分を抽出した大麻リキッドなどの濃縮大麻が出回り、危険度が増している。2023年12月、他の違法薬物と同様に、使用罪適用の対象となる法律が成立した。

〈関連〉大麻取締法違反容疑の摘発人数の推移が「10代」「20代」「30代以上」別に分かるグラフ

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