島根1区補選の争点は「政治とカネ」だけじゃない…深刻な過疎化で揺れる有権者【現地ルポ】

有権者と握手する錦織功政候補(C)日刊ゲンダイ

長年の自民党王国で、島根は栄えたのだろうか?

与野党一騎打ちの衆院島根1区補欠選挙(28日投開票)。自民党の錦織功政候補が裏金問題などで劣勢を強いられ、立憲民主党の亀井亜紀子候補が最終盤になっても優勢だ。しかし、争点は「政治とカネ」だけではない。

民間組織「人口戦略会議」は24日、全国の40%を超える自治体が将来的に「消滅の可能性」があると発表。島根県は、2014年に「日本創成会議」がまとめた「消滅可能性都市」から、12の市町村が脱却したものの、依然として過疎化は深刻だ。総務省の発表では、22年の島根県の人口増減率はマイナス1.05で、全国35位。20年の国勢調査で全国2番目に少なかった人口は、昨年9月に65万人を割り込んだ。

県庁所在地の松江市中心部でも、衰退の兆しは見られる。商店街の多くの店がシャッターを下ろし、今年1月には県内唯一のデパートだった「一畑百貨店」が閉店した。「地元のシンボルがなくなった。島根の衰退を表しているようで、県政に対する落胆は大きい」とは、亀井候補の演説を聞いていた地元に住む男性だ。亀井陣営の幹部はこう話す。

「数十年間、自民党は何をしていたの?」

「島根県では、半世紀近く自民党勢力が政治の実権を握ってきたが、地元が栄える気配は一向になく、若者は減る一方。『この数十年間、自民党は何をしていたの?』という疑問の声が広がりつつある」

日刊ゲンダイは22日、松江市の中心部から車で1時間ほど離れた県北の農村地域に向かい、50世帯ほどの小さな集落で行われた錦織陣営の演説を取材した。その際、割烹着姿の70代女性は周囲の目を気にしつつ、記者にこう打ち明けた。

「この辺りは自民党支持者がほとんどだけど、私はどちらに投票しようか悩んでいるの。私たちの集落は耕作放棄地が増え、6つあった小学校が今では1校に。この先どうなってしまうの……。政治家のみなさんには、こうした地域を何とかしてほしいんです」

女性が話すように、地域の商店はさびれ、かつては青々と田んぼが広がっていたと思われる広大な耕作放棄地には、高さ1メートルにもなる雑草が生い茂っていた。

漂うのは地元の閉塞感だった。

(取材・文=橋本悠太/日刊ゲンダイ)

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