ブラックマジックデザイン「BMCC6Kの魅力」対談 Vol.01[Blackmagic Cinema Camera 6K Scene]

3月19日にシステムファイブPROGEAR半蔵門にて、映像作家の井上卓郎さんを招いてのBlackmagic Cinema Camera 6Kのセミナーが開催されました。今回はその模様をお伝えいたします。

今回は映像作家の井上卓郎とシステムファイブの山本さん(通称:やまもん)に同カメラの魅力について対談いただきました。

映像作家の井上卓郎氏(左)とシステムファイブの山本隆太氏(右)

今回のゲストである井上さんは長野県松本市を拠点に、北アルプスに近い山岳地帯での映像制作に携っています。山の中での撮影も多く、時には標高3000mを超える場所で撮影することもあるそうです。使用しているのはブラックマジックデザインの「URSA Mini Pro 4.6K」で、これは2017年に初めて導入し、その後、Blackmagic Pocket Cinema Camera(以下:BMPCC)が登場し、Pocket Cinema Cameraの4K、6Kへと移り、現在もシネマカメラはブラックマジックデザインの製品を使用されています。

BMCC6Kを使用した井上さんの作例

山本さん:

ということで、本日の本題なんですが、BMCC6K使ってみて実際どうだったかなというお話を中心に伺っていきたいと思います。撮った作例を見てもらっちゃいましょうか。

井上さん:

これは全部BMCC6Kで撮った画になります。

フッテージ動画

井上さん:

というような作例を、Inter BEEでも流させてもらいました。

山本さん:

一本のショート映画のようでしたね。いろいろとカメラの魅力と合わせてこれからお話を伺おうと思っております。

出てくる画に撮っている時から興奮できる

井上さん:

いきなり結論みたいなことを言ってしまうのですが、このカメラの最大の魅力は撮影中から興奮できることなんですよ。

山本さん:

これに尽きますね。撮ってる時から違いがわかる。

井上さん:

それがカラーサイエンスだったり、後ろのモニターが大きかったりするのもありますが、撮影中に常に「やべぇやべぇ」と感じているのは珍しくて(笑)。特に、以前BMPCC使ってて今はちょっと離れてますっていう人はすごく感じるんじゃないですかね。

山本さん:

BMPCC4Kや6Kフルサイズなどでも十分に美しい画が出ますし、実際、今日のカメラもBMPCCで撮影していますが、出力される映像も十分に美しいと思います。特に、美容の映像は非常に魅力的で、言葉では表現が難しいですが、4Kと6Kの違いに驚かされます。
これまでのBMPCCシリーズと今回のBMCC6Kを比べると、大きな違いを感じます。

井上さん:

そうですね、劇的に異なります。それは、今回からフルフレームのセンサーになったからです。これまではS35が主流でしたが、センサーが変わったんです。その影響もあって、撮影時に感じた違いがありました。
また、このカメラは光を感じることができますね。撮影中に良い光があると、それが映像に現れますね。カラーサイエンスも良いですが、光を感じられることがこのカメラの素晴らしい点ですね。しっかり撮影したい人にとっては非常に向いており、その要求に応えられるカメラだと思います。

"キレイ"と"美しい"

井上さん:

私は、"キレイ"と"美しい"を異なる概念として考えています。"キレイ"は数値化が容易であり、ダイナミックレンジや解像度、ビット深度などの要素が挙げられます。これらは数値で表現できます。
一方、"美しい"は主に感覚的なものです。"美しい"は"醜い"の対義語ですが、同時に"醜い美しさ"というものも存在します。特に映画などでは、感覚的な価値が重要です。現在のカメラの中には、8Kでの撮影や広いダイナミックレンジを持つものもあり"キレイ"な画を撮影できるカメラが多くあります。
しかし、見たままを撮ることがキレイという視点で設計されたカメラが多いです。シネマカメラは、美しさが基準となっており、カラーサイエンスも美しさが基準に設計されており、美しさを重視して作られていると感じられます。

カラーサイエンスについて

井上さん:

カラーサイエンスはメーカーの色に対する哲学であり、単に赤を赤く再現することが全てではありません。ミラーレスカメラは、赤や青などの色を忠実に再現しますが、ブラックマジックデザインのカラーサイエンスは特に優れており、メーカーの哲学が肌の美しさなどにも影響を与え、シネマでの使用に適しています。

山本さん:

ブラックマジックのシネマカメラは今バージョン6ぐらいだったと思うんですけど、どのカメラでもセンサーの違いによる良さっていうのがあって、今回のカメラにはすごい出てきている気がします。

フルフレームセンサーについて

井上さん:

BMCC6Kはフルフレームのセンサーになりました。ローパスフィルターが追加され解像度が落ちるんじゃないかと心配もありましたが全くの杞憂で、解像度の減少は感じられませんでした。
またオープンゲートの撮影では3:2のセンサーの上下部分を使うことで、レンズの最良部分を活かし、表現の幅が広がるんですよね。また、アナモフィックレンズを使用した際に特に顕著であり、多様な表現が可能になることです。グレーディングも多少行ったのですが、露出や色温度の微調整程度で、解像度やダイナミックレンジの広さは十分に活かされていると感じました。

Lマウント採用について

井上さん:

マウントがLマウントになりました。Lマウントは様々な会社が参加しているので、レンズの選択肢が広がりました。Lマウントには各社の特性があり、幅広い選択肢がありますが、それ以外にもSIGMAのEFマウントのレンズをLマウントに変換するマウントアダプターも使用でき、以前のレンズを活用できます。PLマウントのアダプターも利用可能です。
PLマウントはシネマ撮影に適したレンズが多くあります。将来的にはミラーレスのLマウントが一般化する可能性もありますね。Lマウントのレンズの展開も進んでおり、CP+でも新しいレンズが発表されていますよね。

井上さん:

BMCC6Kは起動が早いんですよね。シネマカメラってだいたい起動時間が結構長くて、1分くらいかかったりして撮り始めるまでに時間がかかるので結構撮り逃すんですよね。僕の場合、特に自然とか動物とかいたらパッて撮らないといけないので、やっぱり起動の遅さというのは致命的なんですよね。

山本さん:

そうですね。撮りたいと思ってすぐにレンズを向けて、撮り逃しを極力減らしてくれるという意味でもすごく良いですよね。

井上さん:

レスポンスがめちゃめちゃ早いです。多分僕が知ってるカメラの中で一番速いです。大体レックボタンを押してからワンテンポ遅れて記録が開始するんですけど、BMCC6Kは押した瞬間に記録が始まっています。

井上さん:

続いてバッテリーですね。BMPCCって30分持たないとか結構あったんですけど、今日話すにあたって何回か試した結果、付属のバッテリーで1時間8分とか5分とか普通に回っていたので、使い方によりますけど1時間ぐらいはみて大丈夫かなという気がしてます。

山本さん:

バッテリーも付属のバッテリー以外に単品でブラックマジックさんから出してるそうです。

井上さん:

純正以外にもいろいろ安いのはいっぱいあるんですけど、メーカーによっても全然持ちの長さが違ったりするので一応純正基準で計測してきました。手持ちの純正じゃないよくわからないバッテリーは、そんなに回らないものもあります。純正は撮影中に「あれ?切れちゃった」みたいなことはとりあえずないですね。

井上さん:

あとは外部のSSDに収録可能です。昔からそうなんですけど、今回メディアがCFexpress Type Bになったんですよ。CFexpressの値段はだいぶ安くなってきたのですが、SSDはさらに安いので長回しなどに便利です。今付けているのがサムスンのSSDで2TBのものなのですが、最近だと1、2万円で買えるものも増えてきました。

山本さん:

そうですね。ここ1年で、スリムで低価格なSSDも増えてきましたよね。

井上さん:

ちなみに僕が雑誌の記事を書いている時に趣味で3Dプリンターでホルダー(上図)を作ったんです。

山本さん:

本当だ。ペリッターとかもちゃんと着いてますね!

DaVinci Resolveとの組み合わせで完全体になる

井上さん:

このカメラはDaVinci Resolveとの組み合わせで完全体になります。もうそういう設計です。もとからカメラ自体が便利なカメラじゃないんですけども、DaVinciで編集してグレーディングして出力までやると最強のカメラになります。逆に撮ることに集中できるんじゃないのかな。細かい設定をいろいろやらなくていいので。

山本さん:

確かにそうですね。そうだけど、やっぱりそれもないから手ぶれ補正に関してもないし、フォーカスなんかもやっぱりほぼマニュアルでやらないといけないっていうのがあって、その辺はやっぱり便利ではないと言うんですけど。

井上さん:

ただそれが不便かっていうとフォーカスも僕の中では表現のひとつだと思っていて、写真だとピンボケはダメですけど、動画の場合ってフォーカスで立体感を出したり、動きを出す要素の一つだと思うんですよ。なので一番最初にオートフォーカスでピッて合わせた後はもうずっとマニュアルで撮影しています。
揺らぎっていうんですかね、フォーカスの揺らぎ、手ぶれの揺らぎとか含めて出せるんでシネマカメラらしくて僕は好きです。ただこれからの流れはシネマカメラでもオートフォーカスだよねってなる時代が来るかもしれませんね。

山本さん:

でもね、これ僕がブラックマジックのカメラを皆様にお話しする時によく言ってる言葉があって、ブラックマジックのシネマカメラのシリーズってカメラマンをすごく育ててくれるカメラだと思ってるんですよ。
やっぱりオートフォーカスは便利だし僕もめっちゃ使うんですけど、マニュアルフォーカスってカメラマンの癖がすごく出てくる部分になると思います。そこで一つ自分の表現の幅を持たせることができるし、やっぱりこうDaVinciと組み合わせた時に表現の幅もグッと上げてくれます。オートフォーカスでいつも撮ってますっていう方はいっぱいいらっしゃると思います。私も全然その一人でした。
この井上さんの動画をアーカイブに残しますので、ぜひ井上さんの作例を見ていただいて、マニュアルフォーカスで撮るのが楽しそうだなと思ったらぜひやっていただきたいですね。

井上さん:

これから映像をしっかりやりたいという人にはBMPCCの4Kを勧めていました。値段的にも手頃だったので。マイクロフォーサーズのレンズが使えるし、手頃な値段で勉強になるカメラだなと思います。本当に映像がうまくなります。なんか便利なカメラで撮っちゃうよりも。

山本さん:

多分導入して一番最初は思った通りの動きにならないみたいなことが絶対あると思うんですけど、そういうのも含めて楽しめる方は絶対に本当にカメラ撮影が上手くなると思います。

井上さん:

そうなんですよ。だから映像表現という意味ではやっぱり最高のカメラだと思うんですよね。

山本さん:

そうですね。もっといろんな人に6Kを使っていただきたいなと思ってますね。

© 株式会社プロニュース