現在「専業主婦」ですが、働いたことがほとんどありません。夫は「年収600万円」ですが、もしもの場合は「遺族年金」だけで暮らしていけますか? 自分でも働けるようにすべきでしょうか…?

遺族年金をもらえる対象とは

遺族年金とは、国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった際に、被保険者に生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金で、被保険者の配偶者や子どもが受け取れる対象です。遺族年金の種類は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、それぞれ受給対象が異なります。

遺族基礎年金は、国民年金の被保険者や老齢基礎年金の受給権者が死亡した際に、子のある配偶者や子が受け取れる年金です。年金において「子」とは、18歳となった年度の3月31日までの子や、20歳未満であり障害等級が1級または2級の子を指します。

遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者や老齢厚生年金の受給権者が死亡した際に支払われるもので、遺族基礎年金と異なり「子のない配偶者」にも受給権があります。

そのため、死亡した夫が国民年金も含まれる厚生年金の被保険者である場合、夫婦間に18歳未満の子どもがいたら遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が受け取れて、子どもがいない場合は妻が遺族厚生年金のみが受け取れます。

遺族年金の金額について

「遺族基礎年金」の年金額は固定であり、子のある配偶者が受け取る際は令和6年4月分から68歳以下の場合「81万6000円+子の加算額」、68歳以上の場合「81万3700円+子の加算額」とされています。子どもが1人目・2人目は各23万円4800円ずつ、3人目以降は各7万8300円が加算額となります。

「遺族厚生年金」の金額は計算が非常に複雑で、被保険者の厚生年金に加入していた期間と年収により大きく変わることが特徴です。

計算式は「平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月数」と「平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数」を足し、4分の3にした金額が受け取れる遺族厚生年金になります。

式のみでは非常に分かりにくく、この式に最近の賃金水準や物価水準が加わった「再評価率」を乗じるため、正確な金額は算出できません。

例えば、夫の年収が600万円で平均水準報酬月額を単純に50万円、平成15年4月以降に厚生年金に300ヶ月(25年)加入したことを想定して、30歳以上の子のない配偶者がもらえる老齢厚生年金の金額は「50万円×5.481/1000×300ヶ月」の4分の3で、「61万6612円」となります。年間にすれば約5万1000円となり、遺族厚生年金のみで暮らしていくことは難しいといえるでしょう。

この例で、18歳未満の子どもが1人いる場合は、「61万6612円」に遺族基礎年金の「81万6000円+23万4800円」が加算されて、合計で「166万7412円」となります。月に約13万9000円の支給となり、年金のみの生活は同じく難しいと考えられますが、金額は大幅に上がりました。

遺族年金は扶養する子どもが多かったり、子どものいない妻の年齢が40歳以上だったりなどの要素で受給金額が上がりますが、もし妻が子どものいない30歳未満である場合は、遺族厚生年金を受け取れる期間が5年のみになることは注意点の一つです。

また遺族厚生年金において、被保険者期間が300ヶ月未満になる場合は、300ヶ月として計算されます。

まとめ

年収が600万円の夫が亡くなった場合、妻が遺族年金のみで暮らしていくのは非常に難しいことがわかりました。

扶養する子どもがいたり、厚生年金の加入年数が長かったりなどのケースでは、金額はさらに増額しますが、それでも遺族年金のみで長く生活していくことは現実的ではなさそうです。

家族の死は考えたくないことではありますが、万が一に備えて遺族年金以外でも生命保険の加入や自身が働けるようにスキルを身につけておくことも重要といえるでしょう。

出典

日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 遺族年金

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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