なぜ「ひょう」は冬に降らない?初夏にかけて要注意な現象を気象予報士が解説

空から氷の粒が降ってくる現象である「ひょう」。
「氷が降るんだから冬の現象でしょ?」と思われるかもしれませんが、じつは「ひょう」は冬にはほとんど降らず、春から初夏にかけて多い現象です。

どうして「ひょう」は春や初夏に降るのか、そして「ひょう」が降るときに気をつけるべきことは…?
気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、これからの時期の注意ポイントを教えてもらいます。

雲の粒がぶつかりあって誕生する「ひょう」

空に浮かぶ雲の内部には、小さな小さな水や氷の粒が大量に含まれています。
氷の粒が雲のなかで互いにぶつかりあうと、ぶつかった瞬間に合体して大きな氷の粒になることがあります。
これが落ちてきたものが、「ひょう」です。

厳密には、直径5mm未満の氷の粒が落ちてきたら「あられ」、5mm以上の氷の粒なら「ひょう」と呼びます。

ただ…、氷の粒がぶつかりあって大きくなる、と簡単に書きましたが、雲があれば必ずそうなるというわけではありません。
雲の内部に激しい上昇気流がないと、氷の粒が十分に大きく成長できないのです。

そして、この激しい上昇気流が必要という点が、「ひょう」が冬に降らない理由と深く関係しています。

上昇気流が強まりやすい季節

春になって日ざしが強く照りつけるようになると、太陽の熱で地面が暖められ、地面に接している地面付近の空気も暖められます。
暖かい空気は軽いため、上へ上へと昇っていこうとして、上昇気流となります。

こうやって上昇気流が発生して、さらにいくつかの条件がそろうと、雲の内部で氷の粒と粒が激しくぶつかりあって「ひょう」が誕生します。

一方、冬の間はそこまで強い上昇気流が発生するほど空気が暖められることがありません。
冬でも「あられ」ならよく発生しますが、5mm以上の「ひょう」となると、春以降でないとなかなか発生しにくいのです。

「ひょう」が降るのはどんなとき?

さきほど、上昇気流が発生してさらにいくつか条件がそろうと「ひょう」が降ると説明しましたが、この条件として必要なのが上空の寒気です。
上昇気流が強まるには、地面付近の空気が暖かいことと、上空に寒気があることの両方が必要で、これらを満たす季節が春~初夏ということになります。

そして、地面付近は暖かく、かつ上空に寒気があるというのは、いわゆる「大気の状態が不安定」なとき。
言い換えると、ゲリラ豪雨を引き起こすような積乱雲が急発達するときです。

つまり「ひょう」が降るときは同時に、急な強い雨や雷、さらには竜巻などの突風のおそれもあるというわけです。

無理に移動しない!とりあえず「しのぐ」ことを優先して

「ひょう」は直径5mm以上の氷の粒なので、それが落ちてきただけでもケガをしてしまうおそれがありますが、同時に落雷や突風のおそれもあるとなると、外にいるだけで危険ということがわかると思います。

そのためこれからの時期は、晴れていても急に暗くなってきたり雷鳴が聞こえたりした場合は、無理に外を移動しようとせず、建物のなかで「しのぐ」ことを優先しましょう。

「ひょう」や雷雨をもたらすような積乱雲はさほど大きくなく、だいたい30分や1時間でとおりすぎることが多いです。
スマホやパソコンで「雨雲レーダー」と検索すると今どこに危険な雨雲があるかわかるので、ぜひ活用してください。

■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部

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