Googleマップのクチコミをめぐる集団訴訟が起きる ほか【中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」2024/4/18~4/24】

by 中島 由弘

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1. Googleマップのクチコミをめぐる集団訴訟が起きる

Googleマップに掲載される“クチコミ”に「不当な内容が投稿されても削除されない」として、東京都内の医師ら63人の個人と団体がグーグルを提訴した(NHK)。原告の1人は「改善してほしいとグーグルに伝えているが、本質的な改善をしてもらえず、話し合いにも応じてもらえないので、やむをえず集団訴訟に至った。あまりにも理不尽な状況をなんとかしたいと思っている」と話しているという。

Googleマップに限らず、こうしたインターネットのクチコミ情報は、消費者にとっての判断の材料の1つになっている。しかし、良い情報にしろ、悪い情報にしろ、たまたまあった個別事案を一般化するかのように書き込まれたりすることもあり、実際とは印象が異なることも多いので、それらの情報を額面どおりに受け取ることはできない。それでも全体の印象を左右をしていることにはなっている。こうした書き込みを個別に削除するかどうかの判断は難しい。とりわけ医療機関のように、診察室の中の個別事案は出来事などはファクトチェックもできない。生成AIを使っても、おそらく情報の真偽のほどは識別しきれないだろう。

そのようななか、問題だと感じるのは、グーグルが「話し合いにもう応じてもらえない」というところだ。解決のための個別の話し合いには応じず、「もし、話し合いが必要なら裁判所で」という姿勢なら、今回の提訴はグーグルの意図に沿っているということかもしれないとは思うが……。

いずれにしても、こうしたインターネット上の情報の扱いに関する問題がどう判断されるかには注目をしておくべき事案である。投稿する人やそれを読む人の教育やリテラシーの問題だけでは片付かないだろう。

ニュースソース

  • “グーグルマップの不当なクチコミ投稿で権利侵害”医師ら提訴[NHK
  • Google Map、削除の基準は? 巨大IT責任問う集団訴訟[ITmedia

2. 波紋を広げる「なりすまし広告」

SNS上での「なりすまし広告」は波紋を広げている。

なりすまし広告で名前や肖像を使われた前澤友作氏や堀江貴文氏だけでなく、そうした類の広告にだまされた被害者も声を上げ始めた。「真実かどうかを調べずに広告を掲載したSNSの運営会社に責任があるとして国内の被害者4人が、『フェイスブック』の運営元のメタ社の日本法人を相手取り、近く、損害賠償を求める訴えを起こす」ことになったと報じられている(NHK)。

しかも、名前や肖像(画像)だけでなく、音声までも使ってだまそうとする手口も使われている。音響の専門家も「巧みに模倣することができている」というコメントをするほどだ(NHK)。

ここまで社会問題化してくると、プラットフォーマー、この事例ではメタは、具体的な対策を講じることが求められるのではないか。NHKは、メタの副社長で、広告を含むコンテンツポリシーの最高責任者であるモニカ・ビッカート氏にインタビューしているが、「ニセ広告を自動的に識別することは容易ではない」「対策に取り組んでいる」「さらに対策を強化していく」と述べるところまでだ。そして、「審査を厳しくしすぎると一般の広告にも影響を与えかねないという懸念」も示したと報じている。

さらに被害が増大する前に、大手IT企業は具体的に対処する方法を導いてもらいたいものだ。

ニュースソース

  • “なりすまし広告”で被害 責任求めメタ社の日本法人を提訴へ[NHK
  • 追跡!フェイク SNS広告の闇 ~なぜだまされる投資詐欺~[NHK
  • インスタ・Facebook等で続く「著名人なりすまし詐欺広告」--前澤さんらMeta提訴、実態と対策は[CNET Japan

3. 「漫画村」関係者に17億円の損害賠償判決。しかし問題は解決しない

東京地方裁判所は漫画の海賊版サイト「漫画村」の運営に関与していたプログラマーの星野路実氏に対して、KADOKAWA、集英社、小学館が起こしていた訴訟において、17億3664万2277円の損害賠償金の支払を命じる判決を言い渡した(INTERNET Watch)。これについて、一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は、原告3社のコメントを発表している(ACCS)。

しかし、この問題はこれで終結しない。漫画の海賊版でマネタイズができることに気付いた人たちが国外で同様なサイトを多数立ち上げていて、「イタチごっこ」の様相を呈しているからだ(ケータイWatch)。

また、損害賠償が命じられたとはいえ、被告は「民事は負けたとしても、ないところからは取れない。だから気が楽です」「判決には納得できないし、まったく反省はしていないです。(判決が確定しても)一切払うつもりはないです」などと語っているという(弁護士ドットコム)。

ニュースソース

  • 海賊版サイト「漫画村」関係者に17億円の損害賠償判決、出版3社の共同訴訟[INTERNET Watch
  • 「漫画村」に関する損害賠償請求事件の判決言渡について[ACCS
  • 「漫画村」裁判で約17.3億円の賠償判決、出版社側は抑止効果に期待も「海外で悪質な海賊版サイト」広がる[ケータイWatch
  • 漫画村の元運営者「一切払いません」、 巨額の「賠償金」を支払わずに逃げ切れるのか?[弁護士ドットコム

4. 好調なインターネット動画配信事業と、精彩を欠く有料衛星放送

ネットフリックスは2024年第1四半期(1月~3月)決算を発表した。それによれば、3月末時点での総会員数が約2億7000万人に達し、売上高が前年同期比14.8%増となる93億7000万ドル(約1兆4500億円)を記録したという(Gigazine)。一方で、2025年からは加入者数の報告を行わないとも発表している。その理由について、もはや会員数ではなく、エンゲージメントに関する指標を重視するという見方もある一方、「成長がほぼ頭打ちになった同社が、停滞していると見られたり、シェアを失っていると見られたくないが故に、加入者数の公表を停止する」という批判的な見方もある(Forbes JAPAN)。

いずれにしても、会員数を競う「ゲーム」では勝利宣言をしたともいえそうだ。

日本でも、ABEMAを含むサイバーエージェントのメディア事業が好調だ(Impress Watch)。サイバーエージェントの藤田晋社長は、「ABEMAのWAU(月間アクティブユーザー)は、前年比1.2倍の2,364万。サッカーワールドカップの時期以外では過去最高となった。伸びの大きな要因は、MLB(メジャーリーグベースボール)など話題性の高いコンテンツが人気で、スポーツ関連の伸びが大きい」とコメントしている。

それに対して、WOWOWやスカパーなどの有料の衛星放送メディアは精彩を欠く。東洋経済オンラインは「有料放送の契約者数は減少傾向が続く」と題する経年変化のグラフを掲載しているが、インターネットでの動画配信サービスとは逆のトレンドを示している(東洋経済オンライン)。スポーツコンテンツなどの魅力あるコンテンツの放映権の取り合いなどの競争が激化しているということをその理由として挙げている。

ニュースソース

  • Netflixが2024年第1四半期決算を発表、総会員数は前年比16%増の2億6960万人に達して売上高と純利益も大幅に増加[Gigazine
  • Netflix「新規加入者数を非公開化」の理由とは? [Forbes JAPAN
  • サイバーエージェント決算、メディア事業がABEMA開始後初の四半期黒字化[Impress Watch
  • 「低迷WOWOW」と「最高益スカパー」分かれた明暗[東洋経済オンライン

5. 米国上院議会が「TikTok」事業の売却を求める法案を可決

米国上院議会は、中国のバイトダンスに対して、同社傘下の動画投稿サービス「TikTok」を売却するよう求める法案を可決した(PC Watch)。これは米国の安全保障上の懸念から出された法案だ。今後、1年以内に売却しない場合、米国内でTikTokが禁止されることになる。

一方、バイドダンス側は「安心してください。われわれは法廷であなたの権利のために戦い続ける。事実と憲法はわれわれ側にあり、再び勝つことができるだろう」(TikTokのショウ・チュウCEO)とポストしている(ITmedia)。

ニュースソース

  • 米国でTikTokが禁止になるか。TikTok禁止法案が米上院で可決[PC Watch
  • TikTok禁止法案にバイデン大統領が署名 『ユーザーのために法廷で闘う』とチュウCEO[ITmedia

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