2泊3日のドバイで何を視察?福岡県議団を直撃 事務局が視察内容公表も県議「そごがあるといけないから…」説明渋る

福岡県議団によるアフリカなどへの6泊9日の海外視察。県議たちは途中、立ち寄った中東の観光都市・ドバイで何を視察したのか。直撃取材で見えてきたのは―。

「費用より成果」言い淀む視察内容

2024年4月19日の関西国際空港で記者の視線の先に現れたのは、海外視察を終え、大きなスーツケースを持って帰国した福岡県議会の香原勝司議長(52)をはじめ、自民党県議団、民主県政県議団、新政会の代表など5人の県議。

一行は、4月11日に日本を出発すると、カタールのドーハを経由してケニアのナイロビに、その後UAE(アラブ首長国連邦)のドバイに2泊3日滞在し、さらに南アフリカのケープタウンに移動した後、再びドーハを経由して19日に帰国した。

6泊9日の海外視察の主な理由は、南アフリカで開催された世界獣医師会の大会への出席だ。
県議会の重鎮・蔵内勇夫県議(70)が、日本人で初めて世界獣医師会の次期会長に選ばれる中、議会事務局によると、人と動物の健康などを一つとして考える「ワンヘルス」を広めるのが海外視察の目的だったという。

その一方、今回の海外視察では、2泊3日の日程で滞在したというドバイでの視察内容が明らかにされていなかった。記者は香原勝司議長を直撃した。

記者「ドバイの2泊3日は、あまりスケジュールがはっきりしてなかったようだが?」
香原議長「だけん、しっかり報告書を出しますから」

記者「ドバイの3日間はどういう時間だった?」
香原議長「(飛行機の)乗り継ぎもあったが、基本的に視察はしっかりしている」

記者「海外視察は必要か?」
香原議長「そうですね、そういう意味では、福岡県では感じ得ない経験をさせていただけるということで、私は必要だと思います」

記者「どれだけ費用がかさんでも必要か?」
香原議長「費用ということより、成果を上げていくことが大事だと思いますので」

海外視察に参加した主要会派の代表ら議員5人と職員5人の合わせて10人の費用は、いずれも公費負担。議会事務局によると、旅行会社の見積もりでは、飛行機でエコノミーを使用した場合、一人あたり120万円、10人で少なくとも1200万かかる想定だという。
(その後、原口県議については公費支出を辞退し、自費参加となっている)

県議に取材も「報告は議長から」

海外視察費用の一部をかけて2泊3日滞在したというUAEのドバイは、世界的な観光都市として知られている。

ドバイに10年間在住し、航空会社のキャビンアテンダントとして働いている神崎未来さんは、ドバイについて「やっぱりお金持ちの街だというのは思う。物価がすごく高い。レストランとかへ行くと5000円とか、ランチ食べると5000円とかそんな街」と話す。

福岡の政治家がドバイに行って“福岡に政策として持ち帰るものはあるのか”との質問には、「客室乗務員なので日本線を担当するときに議員のお客さまを乗せることもあるが…(福岡に政策として持ち帰るものは)特にないと思う。全く思い浮かばない」と答えた。

取材班は、今回の視察団に同行した県議に個別に話を聞いた。

記者「ドバイでどんな視察をされていたか伺いたいのですが?
中尾県議「議長がしゃべることになっとるけん」

記者「視察自体は行かれている?」
中尾県議「(車を発車しようとして)うわぁ、危ない」

記者「ドバイで何をされたかだけでも伺えませんか?政務活動費で行ったんですか?
中尾県議「……」

何も答えないまま中尾県議が運転する車は走り去った。別の県議に聞いてみても…。

記者「坪田さんは公費で行かれた?」
坪田県議「私は公費ではないです」

記者「つまり政務活動費?」
坪田県議「政務活動費になるかと思います。公費ではないことだけはお伝えできるかと」

記者「行程の中にドバイでの2泊3日があったと思うが、どういう視察内容?」
坪田県議「あっ、内容については議長から報告を出されるということで決まっていたと思うので、それを確認いただけたらと」

記者「議長が取りまとめていうのは、我々の取材を受けて決まった?」
坪田県議「そうですね」

視察内容判明も「勘弁して」

かたくなにドバイの2泊3日を語らない県議たち。しかし議会事務局によると、ドバイに4月12日に到着した一行は、翌13日に太陽光発電を使用した無料Wi-Fiシステムを視察し、次の日は都市交通の全自動無人運転システムを視察・試乗をしたという。

この視察内容を聞いたドバイ在住の神崎未来さんは、次のように語った。

記者「ドバイのモノレールは自動運転を実施している?」
神崎さん「そうですね…、はい」

記者「自動運転交通システムが発達している?」
神崎さん「交通システムは全然発展していない街。メトロも2本しか走っていないですし、バスの路線もそんなに多くないです。むしろ福岡の方が規模的には交通システムとかは発展していると思います。(ドバイで)モノレールとかメトロを使うのは大体観光客の人たちか、あとは通勤に利用している人がちょこっといるぐらいですね」

記者「あくまでも観光地?」
神崎さん「観光で見る所はたくさんありますよ」

同行した岩元一儀県議(64)に聞くと…。

記者「太陽光発電を使った無料Wi-Fiの視察、全自動運転システムの視察と試乗。この2つは何を指すのか?」
岩元県議「あの、そうですね。まぁ、そこは一つあると思いますけど、報告書を私見てないので、実際そういう風な部分ではあったと思います」

記者「具体的に無料Wi-Fiと全自動運転に乗るのは何を指している?」
岩元県議「いや、あの~、ちょっとそこらへんとかも、そごがあるといけないので勘弁していただきたいと思います」

記者「お答えできないということは、正当な視察ではないと?」
岩元県議「いやいやそれではなくて、しっかりした報告をするためにちょっと時間をくださいという話です」

ドバイでの3日間について議会事務局は、「全自動運転システムの視察・試乗」と明らかにしたが、どんな乗り物に試乗したのかさえ、参加した議員として説明することもできないのはなぜなのか?

事前見積もりなし「初めて聞いた」

そして、議長や各会派の代表である5人の県議の旅費は公費、つまり税金でまかなわれてビジネスクラスを利用していたことも取材で明らかになった。また、ビジネスクラスの利用に関しては、事前に旅費を把握していなかったという。
今回、ビジネスクラスを利用した岩元一儀県議に改めて聞いた。

記者「公費でのビジネスクラス利用で、事前に見積もりがなかったことへの受け止めは?」
岩元県議「その話は初めて聞いて、そこまでの説明というかそういうものはなかった」

記者「少なくとも岩元県議は公費でのビジネスクラスの視察に関して、事前にご自身の旅費の総額がいくらか把握していなかった?」
岩元県議「そこは(事務局に)任せているということで認識していますが…。今までの(県議会の)歴史の中でやっている話ではないかと思いますし…」

記者「つまり、慣習に従っただけということですね?」
岩元県議「慣習に従っただけというか、その方向で議長がそういう風にやってくれていると思ってますね」

税金を使った海外視察として費用に見合ったものなのか、事前のチェック機能が働いていたと言えるのか?

また、今回の視察は2024年2月の議会で“議員側から”提案され実施されているが、注目すべきは福岡県議会の議員構成だ。議会には8つの会派があり、87人の議員がいるが、このうち今回の視察に行った自民党県議団、民主県政県議団、新政会の議員は合わせて71人。

この状況の中で、議会がどれだけチェック機能を働かせることができるのか?いずれにしても議長の「しっかりした」報告書が待たれる。

(テレビ西日本)

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