ガガーリンが成し遂げた、人類初の宇宙飛行を祝うイベントYURI'S NIGHT（ユーリズナイト）が4月12日、鎌倉で開催されました。YURI（ユーリ）は、ガガーリンのファーストネームです。
今年4月に米国主導の国際月探査「アルテミス計画」で日本人飛行士が２回月面着陸することで日米が合意し、宇宙開発は今後ホットなニュースになる可能性がある話題です。
本イベントは世界各地で祝われている宇宙のお祭りで、音楽やアートを盛り込むなどさまざまな形で行われているそうです。今回はカジュアルな宇宙のお話会が開催されるということで、参加してきました。
由比ガ浜海岸で空を見上げる、謎の集団
画像出典：湘南人
日没時の由比ガ浜に、空を見上げる謎のグループが。今晩開催されるYURI'S NIGHTの参加者です。
宇宙開発に関わる人、天文学が好きな人など背景はさまざま。全員、宇宙の話を楽しみに集まって来ました。
YURI'S NIGHT第1部はここ由比ガ浜で空を見上げることから始まります。
「前職は衛星間の光通信技術の開発を。月面にインターネットを構築するプロジェクトの提案などをしていました」
早速、宇宙の話が始まりました。宇宙開発の話を聞きながら見る月は、いつもより近くに感じられます。
ユーリズナイトとは
画像出典：ASAL
1961年4月12日、ロシア（旧ソ連）の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンが、有人ロケット「ボストーク1号」で人類初の宇宙飛行に成功しました。
YURI'S NIGHTは、この日を記念して祝うイベントとして、2001年に始まったお祭りです。当初は宇宙世代諮問委員会のプロジェクトでした。
国連の宇宙空間平和利用委員会や、国連宇宙部などとコラボレーションすることもあり、世界各地で開催されています。
世界的な宇宙関連のイベントは年に2回あり、4月にYURI'S NIGHT、10月に世界宇宙週間を各国で祝っているそうです。
世界宇宙週間とは、1957年10月4日のソ連による人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げ成功と、宇宙法が発効した1967年10月10日を記念して毎年10月4日から10月10日までの1週間を祝うイベントです。
4月12日は宇宙の日
4月12日は宇宙開発に関わりの深い日で、他にも1981年4月12日にスペースシャトル「コロンビア」の初飛行、1955年4月12日には糸川英夫教授の「ペンシルロケット」発射試験が初成功を収めています。
宇宙に関係のある出来事が3つも重なった、記念日にふさわしい日なのだそうです。
スペースカインド財団 ロレッタ・ホワイトサンズさん
画像出典：Yuri's nightオフィシャルサイトより引用
YURI'S NIGHTの考案者の一人、Loretta Whitesides（ロレッタ・ホワイトサイズ）さんです。YURI'S NIGHTの普及促進・運営を行う米国の団体、The SpaceKind Foundation（スペースカインド財団）の共同設立者でもあります。
今夜のYURI'S NIGHT開催について、メールでコメントを寄せてくださいました。
「日本の方々がこの素晴らしい、国際的な祝日を祝っていることを大変うれしく思っています。4月12日は人類が初めて宇宙へ旅立った日です。また、日本が初めてロケットを発射した日でもあります。
YURI'S NIGHTは宇宙の持つ力を示し、世界の結びつきを強める大変良い機会です。集まりを開催してYURI'S NIGHTファミリーの一員になっていただき、ありがとうございます！」
日没を見た後は、2部の会場「Btaps」へ
画像出典：湘南人
2部の会場「Btaps（ビータップス）」は鎌倉駅東口から徒歩1分、1階に不二家の入っているビルの4階にあります。店の自慢は、何と言っても樽生で飲める13種類のビール。
国内外のビールが各種、樽に入ったまま冷蔵庫に保管されているそうです！ こちらの会場で会食をしながら、宇宙開発の話を伺います。
画像出典：湘南人
イベントのナビゲーター、山下浩史（ひろし）さんです。山下さんは京都大学で航空宇宙工学を専攻し、宇宙関連のベンチャー企業などで小型衛星の開発に携わってきました。
以前に宇宙世代諮問委員会の日本代表を務めた関係で、日本でYURI'S NIGHTを何度も企画・開催しています。
宇宙世代諮問委員会は、35歳以下の学生と専門家から成る、宇宙に関する問題への提言を行う組織です。各国の代表が集まって宇宙空間の平和利用について知識を共有し、国連に提言などを行っています。
「YURI'S NIGHTでのつながりが、民間月面探査レースのチームHAKUTO（現ispace）が立ち上がったきっかけの一つになりました」と山下さん。
株式会社ispaceは、2010年に設立した宇宙関連のベンチャー企業です。YURI'S NIGHTは、新しいビジネスが生まれる土壌にもなっているようです。
ビールで乾杯して、宇宙トークの始まり
画像出典：湘南人
まずは乾杯！ おいしい食事とビールがテーブルに並んだところで、山下さんのお話が始まりました。
「ユーリって、何のことだか分かりますか？」
お話はガガーリンに始まる宇宙開発の歴史と、最新動向として今年1月に日本の探査機として初めて月面に着陸したJAXA（宇宙航空研究開発機構）の小型探査機「SLIM（スリム）」のお話の2本立てでした。
山下さんは、以前にSLIMの前身である月面探査プロジェクト、SELENE（かぐや）、SELENE-B（SELENE-2）に関わっていたそうです。
「月には大気がほとんどないので、着陸の際に大気圏で減速できません。ですから、着陸は難しいです。斜面に着陸するのですが、わざと着陸してから倒れる変わった方式（２段階着陸方式）になっています」
全員が興味津々で聞き入っています。
「なぜかというと、着陸後も太陽光発電する必要があるので、あえて倒して太陽と向き合う角度に安定させる設計だったのです。ただ、その通りには着陸できませんでした。
それでも着陸は成功して画像も送れたということで、日本が月に着陸したことが世界的に認めらています」
他ではなかなか聞けない珍しいお話に、皆さん大喜びです。ちなみに、SLIMによる日本の月面着陸成功は、旧ソ連、米国、中国、インドに続き5カ国目の快挙となりました。
古都鎌倉で宇宙開発！？～ 三菱電機鎌倉製作所の衛星システム事業
画像出典：三菱電機宇宙システム総合サイトより引用
意外にも、鎌倉市は宇宙と関わりが深い地域です。三菱電機株式会社の鎌倉製作所が大船にあり、同社の衛星システム事業の拠点となっているのです。そのため、鎌倉には宇宙開発の関係者が大勢いるのだそう。
歴史と最新技術の共存。鎌倉には多彩な魅力があるのですね。
「日本火星協会」会長 村川恭介さん
画像出典：湘南人
NPO法人日本火星協会の村川恭介（きょうすけ）さんです。日本火星協会は、有人火星居住と有人火星探査の広報・研究などを通じて日本から将来の火星宇宙飛行士誕生を目指す団体です。
アメリカのNPO法人「火星協会」が発足した際に出席していた日本人のグループが2015年に立ち上げました。
「日本火星協会という、火星に人間が住むことを目指すNPO法人の会長をしています、村川です。山下さんとは旧知の仲で、今日も来ました。宇宙に人間が住む日が来たら、我々日本火星協会が皆さんの目に留まるかもしれません。その時は一緒に火星に行こうという熱意を持ってもらえると、大変嬉しいです」
浜野の知る範囲では、一番遠くへ行こうとしている方ですね。
主催者のASAL野村さん
画像出典：ASAL
今日のイベントを主催したASALの野村さんです。山下さんと一緒に過去3回、YURI'S NIGHTを開催しているそうです。
「今まではイベントという感じで開催していたのですけれども、今年はアットホームなパーティーで、リラックスして楽しんでいます。
私の子供時代は松本零士のアニメの全盛期で、そのうち宇宙に気軽に行けるような時代になるのだろうと思っていました。いつか宇宙から地球を見てみたいですね」
まとめ
竹取物語に象徴されるように、月はどこか神秘的な存在だと認識していたのですが、宇宙開発者が見る月は目的地であり、着陸すべき地面でした。
いろいろと話を伺っているうちに、空に浮かぶ月がまるで隣国のように感じられ、人々が往来する未来がもう少しで想像できそうな気がしてきます。
食事と会話を楽しみながら視野が大きく広がった、エキサイティングな夜でした！
詳細
【The World Space Party at Kamakura / ASAL × YURI'S NIGHT, Vol.4】
日付：2024年4月12日
時間：17:00～22:00
主催：ASAL
場所：1部 鎌倉市由比ガ浜海岸
2部会場【Btaps】
郵便番号：〒248-0006
住所：神奈川県鎌倉市小町1-6-17 鎌倉マークビル4F
電話番号：0467-73-7073
営業時間：12:00～22:00（月曜定休）
駐車場：なし
地図
1部会場（由比ガ浜海岸）
2部会場【Btaps】
アクセス
1部：江ノ電和田塚駅より徒歩9分
2部：鎌倉駅東口より徒歩1分
