『ゴジラxコング 新たなる帝国』アダム・ウィンガード監督 インタビュー&キャストが語る撮影の思い出

ダン・スティーヴンス、レベッカ・ホールを演出中のアダム・ウィンガード監督(左)

『ゴジラvsコング』に続き、今回も連続で監督を務めることになったアダム・ウィンガード監督。そんな彼に怪獣映画に対する思いや『ゴジラxコング 新たなる帝国』の見どころなどを聞いてみました。さらに本作の主要キャストたちが、本作の魅力とオーストラリアでの撮影の思い出を語ってくれました。(監督インタビュー:文・平沢薫/デジタル編集・スクリーン編集部)

アダム・ウィンガード監督 インタビュー

ダン・スティーヴンス、レベッカ・ホールを演出中のアダム・ウィンガード監督(左)

“ 僕が見たかったのは怪獣たちの視点から世界を描く怪獣映画なんだ!”

──今回のゴジラはとても人間に近くて、コングと一緒に全力疾走する姿が衝撃的でした。今回のゴジラの発想はどこから? 

僕は『怪獣大戦争』(1965)や『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)のような1960~1970年代のゴジラ映画が大好きで、一番好きなのは『ゴジラ対ヘドラ』(1971)なんだ。

あの頃のゴジラは、第1作『ゴジラ』(1954)とはかなり雰囲気が違うから、ハメを外しすぎだと批判する人もいるけど、僕はあの頃のゴジラ映画のスタイルが好きだ。当時のヒット映画『イージー・ライダー』(1969)みたいなサイケデリックでアシッド・トリップ・バージョンのゴジラみたいなところもいい。

だから、あの時代のゴジラをやりたいと思ったんだ。それと今回のゴジラの動きは、ミスチーフ(いたずら)という名前の僕の飼い猫からたくさんインスピレーションをもらってる。特にローマの円形競技場で丸くなって寝る姿は、僕の猫そっくりだ。

そういえば『ゴジラ-1.0』の山崎(貴)監督と対談しした時、彼のゴジラは彼の猫に影響を受けていると言ってたよ。ゴジラ映画の監督が2人とも、自分の猫に影響を受けていたなんて、面白いよね(笑)。

──『ゴジラ-1.0』といえば、ゴジラが光線を吐く前に背びれが1枚ずつ変色していくという演出は共通でしたよね。 

それが、まったくの偶然なんだ。僕が『ゴジラ-1.0』を見た時は、もうポスト・プロダクション中だったから。でも『ゴジラ-1.0』にオマージュを捧げたシーンはある。あの映画の予告編を見た時に、ゴジラが足で地面を踏みつけると、一瞬後に、周囲の土が盛り上がるという演出がスゴイと思った。

その頃はまだプリ・プロダクション中だったから、ローマでゴジラが地面に足を踏みつけると周囲の建物が崩れる、というシーンを作って、あのシーンにオマージュを捧げたよ。 

──今回は、コングの同類が多数登場しますが、そのせいでコングが“特別な存在”ではなくなるのではないかという心配もあったのでは?

僕は、モンスター・ヴァースのコングが、“キング・コング”ではなく、キングがつかないただの“コング”だということが重要だと考えている。映画のタイトルにつかないだけじゃなくて、彼自身がキングじゃない。彼は自分の王国を持っていないからね。まあ、この映画の後で、キングになるかもしれないけど(笑)。

モンスター・ヴァースは、そんなコングの旅を描いている。前作『ゴジラvsコング』は、コングが自分の故郷を見つける物語だ。しかし、そこには誰もいなかった。それに続く本作は、コングが家族を探す物語だ。彼が自分の孤独に向き合い、自分の仲間たちを見つけていく物語だ。

先住民の少女ジアも同じような旅をしている。コングもジアも、自分と同じような存在がいる場所を見つけて、それから、自分が本当にいたい場所はどこなのかを選択するんだ。 

──今のお話をうかがって痛感しました。監督の怪獣映画はいつも、人間ではなく、怪獣自身の物語を描いていますよね。

そうだよ! だって怪獣映画を見に行く人たちは、怪獣が見たいから行くんだから。それが、僕がまず一番に力を注ぐことだ。僕が6歳の頃から見たかったのは、怪獣たちを主人公に、怪獣たちから見た世界を描く怪獣映画なんだ。

怪獣は話さないから、姿形と行動だけで、彼がどんな存在なのか、何を思っているのかを描く。それを見て、観客は怪獣が実際に存在するんだと感じる。そういう映画だ。それに挑戦できたのは、前作『ゴジラvsコング』を監督した経験からだよ。もっと怪獣たちを前面に出した物語が描けるんじゃないかという自信がついたんだ。 

──今回は監督が『ザ・ゲスト』(2014)で組んだダン・スティーヴンスが出演して、新たな登場人物を演じています。

彼は、僕のキャリアの中で、もっとも素晴らしい演技をしてくれた俳優だから、ずっと一緒にやる機会を狙っていたんだ。だから彼のために役を作った。英国詩人アルフレッド・テニソンの詩を引用するのは彼のアドリブじゃないけど、あんなふうに引用できるのはダンだけだよ。 

──さて、今回も、東宝の怪獣映画へのオマージュが満載ですが、ネタバレにならずに読者に紹介してもいい部分を教えてください。

僕のゴジラ映画オールタイムベストに入る『怪獣総進撃』(1968)では、怪獣が11体も登場するけど、この映画も予告編からは予測できないほど、怪獣がいっぱい出てくるんだ。どの怪獣が登場するのか楽しみにしてほしいな。 

『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督とアダム・ウィンガード監督が対面

北米での『ゴジラxコング 新たなる帝国』大ヒット・スタートを記念して本作のアダム・ウィンガード監督と『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督の日米「ゴジラ」監督の対面が実現した。ゴジラへの熱い思いを持つ2人は、お互いの作品への感想を伝えあった。

Photo by Getty Images

ウィンガード監督

「ゴジラが長年愛されている理由は、互いの作品を見ても真逆の作風になっていること。ゴジラがクールなのは比喩的にもトーン的にもそういう部分。ゴジラ自身が意味を成し、映画を象徴するという点で、あらゆることに対応できることにあると思うんだ」

山崎監督

「『ゴジラxコング』のラストのバトルはIMAXで見ると迫力がすごすぎてみんな興奮すると思います。両者とも凄まじい力を持った者同士の戦いなので、これをIMAXで体験出来たら、とてもゴージャスな、映画館に行くべき映画と思ってもらえるんじゃないかと思います」

と今作の魅力を語り、最後に山崎監督が、「ゴジラを日米でどんどん盛り上げていきたいので、“これからも頑張っていきましょう!という気持ちになれました」と締め、固い握手を交わした。

キャストが語る撮影の思い出

レベッカ・ホール (アイリーン・アンドリュース役)

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今回はオーストラリアの実際の場所で撮影したシーンが多かったのだけど、モートン島に生息した野生動物には本当に驚かされたわ。地球上で最も古い熱帯雨林の一つ、デインツリー熱帯雨林に行った時に見た植物にも驚いた。

実は私は相当な植物オタクなんだけど、恐竜よりも前から存在した先史的時代のヤシの木の葉を実際に見ることができて壮観だった。道路にはヒクイドリなどもいて、まるで恐竜を見ているようだった。

俳優としての挑戦は台詞で本作の世界観を説明することが多かったこととか、地下空洞航空探査機(ヒーヴ)に乗っている時の体力的なチャレンジなどかしら。監督のアダムとの仕事も大好きだった。彼は明確な方向性を持っていて、楽しい時間を過ごすことができる。彼の中には10歳の男の子がいて、その子が笑っているのが聴こえたらうまく撮影できたとわかるのよ。

ダン・スティーヴンス (トラッパー役)

Photo by Getty Images

アダム(ウィンガード監督)の映画に出るときは、いつも今まで見たことがないものを見られる。彼とは9年くらい前に『ザ・ゲスト』という作品で一緒に仕事をして以来の友人なんだ。今回は彼のサイケデリックな一面を見ることができる。

オーストラリアの熱帯雨林での撮影は奇妙で素晴らしい植物や、ヒクイドリという恐竜みたいな鳥もいた。岸辺にワニがたむろしていたりね。ゴールドコーストの周辺では近場にジャングルのような場所があり、その一部をスタジオに持ち込んで、実際の熱帯雨林とセットの間をシームレスに移行することができたんだ。

難しかった演技はそれほどなかったけれど、スタントではスタジオのてっぺんにある20メートルもの巨大な機械からコングの口の中に落とされるシーンがあって、大変だったけど面白かったよ。僕はああいう撮影は実は大好きなんだ(笑)。

ブライアン・タイリー・ヘンリー (バーニー・ヘイズ役)

Photo by Getty Images

ロケでデインツリーに行くというメールが来て、『ヒクイドリに注意』って書いてあったんだけど、どういう意味?って悩んでいたら、基本的には背中に注意しろということだった。ヒクイドリは狂暴な恐竜のヴェロキラプトルを祖先に持っているんだ。

それ以外は本当にオーストラリアで見た風景はこれまで見たもので最も美しいものだった。美しさと危険との二面性があるから要注意なんだけどね(笑)。

アダム(監督)とまた一緒に仕事ができたのもうれしかったね。彼の思考力は生き生きしていて、いたずらっ子みたいで、おかげで僕らは撮影しながら遊ぶことができるんだ。それはきっと観客も映画を見れば納得できると思うよ。ネタバレは厳禁だけど、ファンには興奮出来るシーンがたくさん待っている。おそらくアドレナリンを大放出できると思うから、ぜひ劇場で楽しんでほしいな。

カイリー・ホットル (ジア役)

Photo by Getty Images

モンスター・ヴァースの世界にまた戻ってくることができて本当にうれしかった。ファンの皆さんにはもっと多くのアクションとかアドベンチャーを見てもらえると思うとワクワクしてしまうわ。デインツリー熱帯雨林のロケではワニやヘビなどいろんな動物がいたけど、とても美しかった。

私が演じている少女ジアは前作『ゴジラvsコング』では孤児だったのだけど、今度は“戦士”になっているの。人間的にもぐんと成長してコングに対して友情を教えたり、お互いに支えあうことで信頼関係を築いているわ。

そしてアダム(監督)は本当にとてもいい人だった! 迷うことがあっても彼が反応してくれるおかげで、いろんなシーンの撮影を乗り切ることができたと思う。とても楽しい現場だったわ。

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『ゴジラxコング 新たなる帝国』
2024年4月26日(金)公開予定
アメリカ/2024/1時間55分/配給:東宝
監督:アダム・ウィンガード
出演:レベッカ・ホール、ダン・スティーヴンス、ブライアン・タイリー・ヘンリー、カイリー・ホットル、ファラ・チェン、アレックス・ファーン

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