コスパよし! タイパよし! 豊富な栄養素がチームワークでココロとカラダを守ってくれる。今こそ知りたい牛乳のパワー

By 小山 浩子

忙しい毎日を過ごしていると、食事作りになかなか時間をかけられません。だからといって、栄養のバランスが偏れば、不健康への道まっしぐら。日に3度の食事。簡単に準備ができて、おいしくて、栄養バランスのすぐれたものを食べたい――「FYTTEヘルスケアトレンド2024」で打ち出したキーワードでもある「タイパ食(タイムパフォーマンス×食事を表すFYTTEの造語)」への注目度は、ますます高まっているように感じます。そんな贅沢な願いを叶えてくれる食品が、意外にも「牛乳」です。「牛乳」のレシピを開発し続けて30年。その奥深さに驚き続ける管理栄養士の小山浩子先生に、お話を聞きました。

たんぱく質、カルシウムだけではない! “準完全栄養食”と言われる牛乳の栄養価

たんぱく質とカルシウムのイメージが強い「牛乳」。けれども牛乳の栄養のすばらしさは、この2つの栄養素にとどまらないと小山先生は言います。

「牛乳には、たくさんの栄養素がバランスよく含まれています。コップ1杯(200ml)の牛乳に、アミノ酸バランスのいいたんぱく質が6.8g、吸収のよいミルクカルシウムが227mg含まれているほか、免疫細胞を活性化し、たんぱく質の合成を促す亜鉛や、代謝を上げることで糖質などをエネルギーに変え、疲労回復の効果が期待できるビタミンB群も豊富です。脂溶性ビタミンであるビタミンA、同じく脂溶性で日本人が不足しがちなビタミンD、鉄分の吸収を助けて貧血の対策になるビタミンB12、神経や脳の成長を助ける葉酸など、ビタミン・ミネラル類の含有量も多く、栄養素のチームワークが抜群です。慢性的に体がだるい、疲れやすい、集中力が欠けているなど、なんとなく説明のつかないような不調に悩まされている人は、ぜひ1杯の牛乳を飲む習慣をつけてみてください。

一方で、カロリーは138kcalと、お茶碗にご飯1/2杯分程度の熱量です。“牛乳は太る”と言う人がよくいますが、牛乳には脂質が含まれるからこそ、粘膜が保護されたり、免疫力アップに役立つ脂溶性ビタミンがしっかり働いたりします。また含まれる飽和脂肪酸のほとんどは、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸という、エネルギーになりやすく、体脂肪になりにくい脂肪酸であることも、牛乳の大きな特徴のひとつです。

日本人の食事摂取基準に基づいて、1食分で1日に必要な栄養素の3分の1を摂取できる食品を『完全栄養食』と呼びます。その観点からいくと、牛乳は『準完全栄養食』です。食物繊維とビタミンCを補うだけでほぼ完全栄養となりますので、野菜や果物と一緒にとるといいですね。おすすめなのはじゃがいもです。じゃがいものビタミンCは加熱にも水にも強い性質をもっています。のちほど紹介する“ポテサラスープ”は、市販のポテトサラダと牛乳を合わせればすぐにでき、温かくても冷たくてもおいしい一品ですよ」(小山先生)

「五味」を含んでいるからこそ、無限に広がるミルクのレシピ

小山先生は、牛乳のレシピを30年間、考案してきました。そのスタートは、乳業メーカーの管理栄養士として、一般消費者、保健所や病院の管理栄養士さんにミルク料理を提案することだったとか。牛乳の料理と言えばグラタンかシチューくらいだった当時、誰も作ったことがないような牛乳のレシピを考えたいと思ったそう。以来、和食に牛乳をとり入れた「乳和食」やコンビニで手に入るような手軽な食材と牛乳を合わせて作る「ミル活」レシピなど、斬新で時代に合ったワードとともにたくさんの牛乳のレシピを打ち出してきました。

「誰も作ったことのないような牛乳の料理を提案したいという思いでやってきましたが、ここまで手を止めずに牛乳に関わって来られたのは、牛乳の栄養価の高さと、味の豊かさの両方があったからです。

牛乳には、甘み、うまみ、塩味、酸味、苦みの『五味』が含まれています。10年前くらいまでは、10~15分以内にできるレシピが時短レシピと呼ばれ、重宝されたものですが、今や時短は当たり前で、5分を切らないとめんどうくさいと思われてしまうことも増えています。使う食材もせいぜい5つくらいまで、物価も光熱費も上がっていますし、基本調味料を常備していない家庭も多いです。そんな中で、牛乳に含まれる五味を活かせば、豊かな味わいのまま、調味料の数をかなり減らせます。子どもからお年寄りまで年齢を選ばず、お財布にやさしく、簡単に作れておいしくて、もちろん栄養面も整う、そんな、作り手に寄り添うレシピ開発を可能にするのが『牛乳』なのかなと思っています」

牛乳に含まれる味が複雑で豊かだからこそ、他の食材と合わせたときにどんな風味になるのか予想することは難しく、食材としての奥深さに終わりがないと感じるそうです。「30年経ってようやく、“この食材と牛乳を合わせると、こういう味になるのだろう”と予測できるようになりました」と、小山先生は笑います。

「レシピは、おいしさも大事、栄養も大事。でもそれは当たり前で、一番大切なのは、実践し、継続してもらえること」。食べた人の反応を直接見る機会も多いという小山先生おすすめの「ミル活レシピ」を3つ、ご紹介します。

牛乳おしるこ

コンビニの豆大福と牛乳1/2杯でできる“おしるこ”です。

[材料(1人分)]
豆大福(市販)…1個(100g)
牛乳…100ml

[作り方]
1、どんぶりに豆大福を入れ、牛乳を加えて、ふんわりラップする。
2、電子レンジ(600W)で2分加熱する。
3、軽くかきまぜたらでき上がり。

●おすすめ栄養ポイント!・大福の炭水化物が加わることで、たんぱく質、脂質、糖質のバランス(PFCバランス)が整います。
・豆大福は食べたあとの血糖値の上昇スピードが速い高GI食品ですが、GI値の低い牛乳と組み合わせることで急激な血糖値の上昇が抑えられます。

ごろごろ具入りのポテサラスープ

ホットでもアイスでも。お互いの栄養を補い合う最強コンビ“じゃがいも×牛乳”で作る簡単スープです。

[材料(1人分)]
ポテトサラダ(市販)…1袋(120g)
牛乳…100ml

[作り方]
1、深めの器に材料をすべて入れる
2、器のサイズに合った耐熱容器をかぶせ、電子レンジ(600w)で2分加熱する
3、軽くかきまぜたらでき上がり。
※仕上げに乾燥パセリや粗びきこしょうもオススメです
※冷製のスープにする場合は、シェーカーに材料を入れて振ってもよいでしょう。

●おすすめ栄養ポイント!
・じゃがいもに含まれるビタミンCと牛乳のたんぱく質で免疫力アップ。
・じゃがいもに含まれる食物繊維と牛乳の乳糖で腸活にも有効です。

ラー油とろとろ豆腐

「簡単に作ったとは思えない本格的な風味と豪華なでき栄え!」と評判の一品。

[材料]
絹ごし豆腐…小1パック(150g)
牛乳…100ml
塩…小さじ1/5(1g)
食べるラー油(またはラー油)…適量

[作り方]
1、深めの器に豆腐、牛乳、塩を入れる。
2、器のサイズに合った耐熱容器をかぶせ、電子レンジ(600w)で2分30秒加熱する
3、食べるラー油(またはラー油)をかければ、でき上がり。

●おすすめ栄養ポイント!
・豆腐に含まれるイソフラボンが牛乳のカルシウムの吸収も高め、骨粗しょう症予防にも効果あり。
・牛乳に含まれるたんぱく質によってアミノ酸バランスが整い、豆腐に含まれるたんぱく質の質もアップ
・カロリーは控えめであるにもかかわらず、たんぱく質がしっかりとれます。

「牛乳は給食で終わった」と思っている人にこそ、再発見してほしい牛乳の魅力。ぜひミル活レシピも作ってみてくださいね。次回は、「牛乳を飲むと太るって本当?」「熱中症の予防に効果的な牛乳の飲み方は?」など、牛乳にまつわる素朴な疑問を一挙に解決していきます!

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