3年前、県立コザ高校で空手部の主将を務めていた男子生徒が自殺した問題。何が彼を死へと追い込んだのか。そして、重大な問題が起きた時、学校はどう向き合うべきか。前編・後編に分けてお伝えします。
参加者
「“先生が気に入るようにどうやって動くのか”となると、人間としては恐ろしいよね。自分はこう考えますけど、先生おかしいんじゃないですか。そんな対話には絶対ならないような、人間関係が作られている」
今月、開催された勉強会。
コザ高校空手部の主将を務めていた男子生徒(当時 高校2年生)が自殺した問題を受け、保護者有志で結成した「ボイス・オブ・チルドレン(略称 ボイチ沖縄)」が主催しました。
ボイチ沖縄 鈴木友一郎 さん
「子どもに携わる人たちは、少なくともしっかり読み込んでいく作業が必要なのかなと。再調査報告書というのはご遺族だけのものではなくて、県民市民の再調査報告書だと思うので」
男子生徒の自死の原因を「顧問からの理不尽かつ強烈な叱責が大きな要因」だと結論づけた報告書。
なぜ男子生徒は、命を絶つほど追い込まれたのでしょうか。
参加者は、経緯が書かれた報告書を声に出し、自分事としてとらえていきます。
女性参加者
「顧問Xにけがの報告をしたところ、『やる気があるのか』『あす来なくていい』などと叱責され、丸坊主にしていないことを、とがめられた」
男性参加者
「なお、顧問Xの生徒AへのLINE電話の回数等は63回あり、顧問Xからのメッセージ送信の時間帯は朝から深夜にされているものもあった」
生徒Aさんは、顧問の指示にいくら従っても認められることはなく、矛盾した要求やメッセージを日ごろから受けていたといいます。報告書ではこのような指示を「ダブルバインド=二重拘束」だと指摘。
参加した高校の教諭はこう語りました。
高校教諭
「ダブルバインド、私たちは使います。その方が、生徒は言うことを聞くから。でもこれってずっと続けていると、生徒の思考を破壊する。ここまできたら多分脳も委縮しているし、精神障害に追い込みますよね。絶対に。だけど、そこまで考えていないです。私たちは。私たちっていうんですけど、私もそうだった」
問題となった顧問については「機嫌が悪いと怒ったり怒鳴ったりする」「怒るのは日常茶飯事」という部員たちの声がある一方で、管理職や一部の教職員からは高く評価する声も…。
『ちょっときつい言葉になることもあるが、それには愛情がある(調査報告書より)』
男性参加者
「それめちゃ気になりますよね」
女性参加者
「はい。ちょっと私はこれが気になったので」
男性参加者
「子どもはそう思っていない。イライラしたら怒ったと書いているから、愛情とは思っていないですよね。子どもは」
女性参加者
「どう見ても全面的に校長や管理職は、この先生を認めているよね」
コザ高校の対応については、生徒Aさんが亡くなった年に行われた最初の調査報告書を、「読んだ」と答えた教職員がいなかったことも指摘されています。
女性参加者
「どういうこと?なんで当該校がそうなのって。本当に形だけやって、私たちが読んでも本当に苦しくて、それぐらいやりなさいよって、言いたいなと思います」
教育現場の温度感
県内の学校関係者はこの問題をどうとらえているのか。問題意識の欠如に、危機感を抱く教諭もいました。
小学校教諭
「(職場で)提言書出たねと言ったんですよ、実は。『なんの?』『このこと』『へー』で終わりです。新聞記事をコピーして職員室で配ったり、見せたり、何人かにしても『出たんだ』『ひどいね』ぐらいで終わり。社会の中で起こった出来事は、他人事なんですよね、完全に。私たちには関係ないよねって。『そんなのどうでもいいじゃん』みたいな」
男性参加者
「自分のところで起きていないから他人事なんですか?」
小学校教諭
「そうそう」
生徒Aさんの心はなぜ引き裂かれていったのか。目をそらしてはいけない現実があります。
小学校教諭
「子どもの権利を大事にしようとすると、どうしても甘やかしている大人と見られるのが現状だと感じている。子どもを変えようとするのが教師や大人。でも変えるべきは大人だし、変わるためには子どもの声を聞かなきゃいけない。それ(声)を引き取って、じゃあ大人はどうするか考えなきゃなと思います」
高校教諭
「私は今、現場で声を出せないです。やっぱり怖くて。部活動を頑張っている先生に向かって、『それ大丈夫なの?』『その言い方大丈夫なの?』と、やっぱり言いにくい。でも勇気を出して言わないといけない。そういう空気をどうやって作ったらいいんだろう…」
勉強会は来月も開催される予定です。問題点に向き合い、二度と同じ悲劇を起こさないために。