キーワードは“我慢”。湘南MF阿部浩之が見つめるチームの課題「現実的に、プレスをかけ続けられるわけではない」

「課題解決力を身につける必要がある」

4月20日のJ1第9節・ヴィッセル神戸戦(0-1)で今季初先発を飾った34歳は、冷静に課題を見つめている。

27日に湘南ベルマーレはJ1第10節で北海道コンサドーレ札幌と敵地で対戦する。

湘南と札幌は現在、互いに1勝3分5敗の勝点6。得失点差で前者が18位、後者が20位だ。下位で苦しむ両者にとって、次節はいわゆる“6ポイントマッチ”となる。

降格圏脱出、そして上位進出のための湘南のキーマンは阿部浩之だろう。

阿部は前節の神戸戦で4-4-2の2トップの一角としてスタメン入りを果たすと、中盤と絡みながらボールを前進させ、数多くのシュートチャンスを創出するなど、さすがのアイデアを発揮。守備でも相手のアンカーへのパスコースを切りつつプレスをかけ、前に出るのか、引いてブロックを敷くのか、チームの意思統一を図るような、いぶし銀のパフォーマンスだった。

阿部は今季のここまでの9試合を、次のように振り返る。

「どの試合も自分たちの良い時間帯がある。それをどれだけ長く続けて、相手が嫌な攻撃、守備をできるか。また、悪い流れの時にどれだけできるか。ここまでは、自分たちらしいサッカーができていない時に我慢しきれず、上回られています。今は前から行くべきじゃない、我慢しようという判断を、ピッチの選手が中心となってやりたいです」

【PHOTO】ひたすらチームの勝利を願い、懸命の応援を続けた湘南ベルマーレサポーター
今季の湘南のテーマは“我慢”だ。開幕前のキャンプから新システムの4-4-2を導入したのも、プレスに行く・行かないの判断をしやすくするためだと、以前、山口智監督が語っていた。

“我慢”というのは、自陣にベタ引きして守りを固めることだけを指すのではない。たとえば、FWが前から守備に行きたい状況でも、後ろの準備が整っていなければ、声をかけてプレスを制限する。

行きたいけど行かない、という意味での“我慢”。遮二無二プレスをかけ、ガス欠気味になり、後半に勢いを落としていた昨季以前の戦いを見つめ直し、走る必要のない時にはスタミナを温存するスタイルに変えた。その結果、90分間を走り切れるサッカーを実現できる、というのが指揮官の考えのようだ。

阿部は、チームの練度は日々磨かれているとしつつも、まだ課題があると明かす。

「4-4-2での戦い方も、試合を重ねるたびに良くなっている。シュートを打てる局面まで行く回数やボール保持の時間、エリア内にかける人数が増えてきました。内容の面で言えば、自信を持っていい部分もあります。

ただ、やっぱり良くない時間はあるし、そこでの戦い方に課題があります。自分たちが良い形じゃないなら、無理に前から行かなくていいし、極端な話、相手のフォワードにサイズがないなら、クロスを上げさせても良いと思う。

前から行くスタイルは継続するけど、現実的に、プレスをかけ続けられるわけではない。行く・行かないのメリハリがつけば失点も減るはずだし、攻撃をしながら守備のためのパワーを溜める、またその逆もできれば良いですよね」

経験豊富なアタッカーが考える課題を修正し、札幌戦で今季2勝目を挙げられるか。4月27日の13時にキックオフする一戦は、熾烈を極めるゲームとなりそうだ。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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