世にも稀有「春になるとオープンするスキー場」で疾走する快感!

スキー場トップである丸山から滑り出す! 白銀の大パノラマに囲まれての滑走は開放感抜群(撮影:杉村航)

異例の寒さが続いた3月が終わり、一気に春めいてきた4月。雪深い山里にも桜の季節が訪れています。一般的にはスキーシーズンは終わりを告げていますが、実は厳冬期は休業、豊富な積雪量を活かして3月下旬から再びオープンして5月のGWいっぱいまで営業を続けているスキー場があります。それが新潟県魚沼市の山中にある『奥只見丸山スキー場』です。

この時期、豪雪地での春スキーはまさに旬の楽しみ。季節の移り変わりを感じながら、去りゆく冬が残したプレゼントを思う存分に味わってきました。

■シルバーラインを抜けてたどり着く「奥只見丸山スキー場」

新潟県魚沼市、福島県との県境に近い場所に位置する山深い地に水を湛える奥只見湖(銀山湖)。風光明媚な湖の北端、標高1,242mの丸山の北東斜面にゲレンデが広がっています。このスキー場はなんと、雪の豊富なハイシーズンは営業しないと有名なのです。奥只見丸山スキー場は新潟でも屈指の豪雪エリアであるが故に、12月から正月まで営業したのちに一旦クローズして、3月下旬から5月まで春営業としてオープンするのです。

スキー場へアクセスするためには「奥只見シルバーライン」を通る必要があります。この道路は全長22kmで、そのうち18kmがトンネルであり、残りの部分もスノーシェッドが雪崩対策として設置されています。昭和32年に開通したこの道路は、奥只見ダムと奥只見発電所の建設用に造られました。この地域は豪雪地帯ゆえに5か月は雪の影響を受ける地域でした。しかし、ダム建設を急がなければならなかったため、雪でも資材を運べるようにトンネル道路が整備されたのです。

当時は現在のような大型の掘削機がなかったため、ダイナマイトを使って岩を破壊し、人力で掘り進めるという困難な工事が行われました。13号湯ノ沢トンネルの一部では、現在でもコンクリートで覆われていない「素掘り」の状態の箇所も見ることができます。この道路は昭和30年代の雰囲気を今も残しており、貴重な歴史的な道路と言えます。最近では、トンネル内の照明やカーブでの案内灯が改善され、ドライブしやすくなったと感じられます。

■圧巻のパノラマの景色! ざらめ雪を楽しむ人気上昇中のコースとは

未丈ヶ岳(みじょうがたけ)を眺めながら、春の雪を存分に味わう滑走

シルバーラインを抜けて、スキー場の駐車場に到着。対面には奥只見ダムが見え、圧巻の景色です。準備をしてゲレンデへ向かいました。奥只見丸山スキー場内には宿泊施設が併設しており、体育館が無料休憩所の役割も果たしています。ゲレンデは、丸山・カモシカ・ブナ平・八崎の4つのエリアに初級から上級の10コースがあります。融雪が進み、今回訪れた際は7コースが滑走可能でした。

リフトを3本乗り継いで山頂へ。山頂ヒュッテの入り口から左側を見ると、眼下に奥只見湖が広がっています。会津駒ヶ岳、燧ヶ岳、至仏山、平ヶ岳、越後駒ヶ岳、荒沢岳、未丈ヶ岳といった名峰が360度パノラマを描き、山奥にいる実感を味わいました。

山頂の丸山ゲレンデには、各地のスキー場でも人気上昇中の「バンクドスラローム」のコースがあります。バンクドスラロームとは、カーブした壁が連続する形状のコースです。ここではバンクの壁がしっかりと高く形成されているため、滑りごたえがあり、楽しむことができました。

朝イチの雪面は少し硬めで、氷の粒を感じるざらめ雪でした。この春は通常よりも気温が高いため、雪質はすぐにやわらかいシャバシャバの水分の多い雪(シャバ雪)に変化しました。

春は雪面が柔らかくなり、転んでもあまり痛くないし、軽装でも過ごしやすい気温です。そのため、身体もよく動きます。この時期は新しいトリックを試すのにも最適です。スキー・スノーボード初心者にとっても、春はやさしくて楽しむのには適したシーズンです。

■銀山平の宿で「温泉と郷土料理」に舌鼓

スキー場から約20分の距離に位置する銀山平。シルバーラインを小出方面へ戻り、途中で左折して、トンネルの外へ。雪解け水で澄んだ川の青さ、新緑、そして越後駒ヶ岳と中ノ岳の壮大な景色が目の前に広がりました。そして、今日の宿「銀山平温泉 奥只見山荘」に到着しました。このエリアには4軒の宿泊施設しかないそうです。

宿内には内湯と露天風呂が完備されています。銀山平温泉の泉質はアルカリ性単純温泉で、適応症として神経痛、筋肉痛、関節痛などがあると言われており、遊び疲れた体を癒すのに最適です。徒歩2分の場所には日帰り入浴施設の「白銀の湯」もあり、檜を使った浴槽や屋内に木の温かみが感じられました。

この宿の自慢は、地元の食材を使った和食とイタリアンの創作料理です。うどのきんぴら、こごめのごま和えの山菜を使った前菜から始まり、サクラマスのカルパッチョなど自然の恵みを贅沢にいただけました。全国に誇るうまい米と言われる魚沼産コシヒカリの出汁茶漬けの〆と、このエリアの魅力をギュッと凝縮された食事として、堪能できることに頬が緩んで仕方ありません。舌も胃袋も喜び、日中のスノーボードの疲れも吹っ飛んでしまいました。

春の陽気と柔らかい雪は、エキスパートはもちろん、ビギナーも笑顔で楽しめます

奥只見丸山スキー場は、5月6日までの営業を予定しています。新緑と雪のコラボレーションが体験できる貴重な場所。心も身体も満たされるような素晴らしい時間を奥只見エリアで過ごしてみてはいかがでしょう。

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