全てのメニューに「海藻」使うカフェ 港町に誕生した異色の組み合わせは地元建設会社専務の新たな挑戦

2024年4月19日、宮城県南三陸町に「海藻」を使ったメニューを提供するカフェがオープンした。南三陸町は海の町ではあるが、カフェで海藻というのは異色の組み合わせ。ただ、メニューはどれも納得のクオリティー。しかも、海藻カフェのねらいは、意外性だけではなかった。

港町を一望するカフェがオープン

海藻カフェ「SEASON」。宮城県南三陸町歌津に4月19日にオープンした。
木のぬくもり溢れる店内には、大きな窓が設置されている。出迎えてくれたオーナーの阿部将己(38)さんは、歌津の伊里前湾を一望できる、この景色を楽しみながら料理を味わってもらいたいと語る。

全てのメニューに海藻!気になるその味は…

景色もさることながら、やはり気になるのは、カフェのメニュー。なんと、すべて海藻を使ったものだというのだ。
まずは、店の看板メニューSEASONランチプレート。スープにキッシュ、ソーセージにサラダのドレッシング…全てに、異なる種類の海藻を使っているという。

中でもお勧めが、三陸産の茎ワカメを使ったポークソーセージ。香辛料がきいていてスパイシーだが、ワカメのうまみ、食感がしっかり生きている。「食感も香りも味わってもらいたい。」と、開発の段階から一番工夫したメニューだという。
ホタテに合わせた宮城県産のノリのソースも絶品だ。2つの海の旨味を組み合わせることで、相乗効果でよりおいしさを感じられるようになっている。

デザートメニューにも…海藻の新しい食べ方

さらに驚きのメニューが。なんと、海藻を使ったパフェだ。まったく想像がつかないこのメニュー、7種類の海藻が使われている。トッピングにはアオサ、ソースにはトサカノリ。そして、ジェラートには、スジアオノリが練り込まれている。

実は、アオノリにはお茶と同じ香り成分が入っているという。そのため、アオノリ入りのジェラートは抹茶アイスにも少し似たような香りが感じられる。
デザートや洋食のような、これまでにない海藻の新しい食べ方を提案して、たくさんの人に、海藻の可能性を感じてもらいたいと、阿部さんは言う。

本業は建設業!まちづくりへの貢献

一方で、意外なのはメニューだけではない。オーナーの阿部さんは、実は、地元の建設会社の専務。阿部さんには、地域の会社としてまちづくりへ貢献したいという思いがあった。
「本業は建設業だが、まちづくりをしている仕事と思っている。そういった意味で、海藻事業もまちづくりの一端を担えるものにしていきたいと思って始めた。」(SEASONオーナー 阿部将己さん)

使われないものに付加価値を…廃棄部分は宝の山

地域ならではの資源を使って、全国に伝えられるものが無いかと探したとき、海藻に魅力を感じた阿部さん。阿部さんのねらいは、それだけではない。この日訪れたのは、歌津の泊浜漁港。ここで料理に使うワカメを調達しているが、買い取るのは、市場には流通しない部分だ。
メカブとワカメをつなぐ茎の部分は、硬すぎて食品としては利用が難しく、加工の段階で廃棄していた。そんな硬い部分が、細かく刻むことで、コリコリとした食感が特徴の自慢のソーセージになった。

阿部さんにとっては、使われていないところにいかに付加価値をつけて商品にできるかがやりがいだ。廃棄される部分が宝の山のように思えた阿部さん。ワカメ漁師が困っているという話を聞いた時、「これだ!」と思い、商品化が実現。ワカメ漁師にとっても、廃棄されていた部分を買い取ってもらえる救世主となった。

地域資源を生かして町のにぎわいに

カフェは、金土日の週末限定でオープンしている。仙台や県内外から南三陸町に足を運んでもらうことで、海藻のことや、南三陸町のことを知ってもらい、広げていきたいという。
地域の資源を無駄なく生かして新たな価値を生み出し、町のにぎわいにつなげようという、幾重にも広がりのある取り組みが始まっている。
(仙台放送)

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