人口戦略会議が“消滅可能性自治体”を公表 東京都で“ブラックホール型自治体”が最多 一方、2100年に「8000万人国家」を目指すとするも、移民政策に反対【消滅可能性・全都道府県・全自治体掲載】

2024年4月24日、民間の有識者が集まる「人口戦略会議」は、全体1729の自治体のうち、50%以上の自治体になる744の自治体は“消滅可能性自治体”とする調査結果、全自治体分()を公表した。

2014年の公表の際には、894自治体だったことから、若干の改善がみられるとのこと。

今回の調査で、いわゆる“消滅可能性自治体”を脱却した自治体は239自治体で、新たに該当したのは99自治体とのことだ。

そもそも、この人口戦略会議とは、どのような集まりなのか。

産官学のメンバーが集うこの団体は、設置主旨を公開していて、その資料によると以下のような記載がある。

(設置主旨より抜粋)
「日本は本格的な人口減少時代に突入した。現在の基調が変わらない限り、1億2400万人(2023年)の人口は、2100年には6300万人に半減すると推計されている。

こうした未曽有の事態を眼前にして、このままでは、日本経済は「縮小スパイラル」に陥り、国富を失いつづけ、社会保障の持続性が大きく損なわれていくのではないか。

ーー 中略 ーー

また、国際的な地位は低下しつづけ、「小国」として生きるしかないのではないか。わが国の将来に対して、こうした不安を抱く人は多い。

このような基本認識を共有する有志が個人の立場で自主的に集い、人口減少という事態に対していかに立ち向かい、持続可能な社会をどのようにつくっていくべきかについて意見交換を行う場として、「人口戦略会議」(三村明夫議長)を設置し、提言するものである。」

令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート

今回、当団体が公表した「令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート」では、自治体をA~Dの大きく4つ、細かく9つに分類している。

A:自立持続可能性自治体:65
B:ブラックホール型自治体:25(B-①:18、B-②:7)
C:消滅可能性自治体:744(C-①:176、C-②:545、C-③:23)
D:その他の自治体:895(D-①:121、D-②:260、D-③:514)

ここでは、「封鎖人口」と「移動仮定」という2つの指標が用いられていて、封鎖人口とは「各自治体において人口移動がなく、出生と死亡だけの要因で人口が変化すると仮定した推計結果」のこと、移動仮定とは「移動傾向が一定程度続くとの仮定(移動仮定)」とのことだ。

この封鎖人口と移動仮定の減少率に応じて、A~Dをそれぞれ以下のように定義している(減少率を▲として表現。20~39歳の若年女性人口)。

A:自立持続可能性(封鎖人口、移動仮定共に▲20%未満)

B-①:自然減対策が極めて必要(封鎖人口▲50%以上、移動仮定▲20%未満)
B-②:自然減対策が極めて必要、社会減対策が必要(封鎖人口▲50%以上、移動仮定▲20%~50%)

C-①:社会減対策が極めて必要(封鎖人口▲20%未満、移動仮定▲50%以上)
C-②:自然減対策が必要、社会減対策が極めて必要(封鎖人口▲20~50%、移動仮定▲50%以上)
C-③:自然減対策が極めて必要、社会減対策が極めて必要(封鎖人口▲50%以上、移動仮定▲50%以上)

D-①:自然減対策が必要(封鎖人口▲20~50%、移動仮定▲20%未満)
D-②:社会減対策が必要(封鎖人口▲20%未満、移動仮定▲20%~50%)
D-③:自然減対策が必要、社会減対策が必要(封鎖人口▲20%~50%、移動仮定▲20%~50%)

つまり、自治体にとっては「A」が最も良い指標で、「C-③」が最も悪い指標ということになる。

また、自然増減だけに着目すると、「A」「C-①」「D-②」が減少率が少なく、社会増減だけに着目すると「A」「B-①」「D-①」が減少率が少ない、ということになる。

ブラックホール型自治体となる「B-①」「B-②」は、人口の増加分を他地域からの人口流入に依存しており、しかも当該地域の出生率が非常に低いという。

関東でブラックホール型自治体が最多

その結果を地域ブロック別に見ると、状況は大きく異なっている。

▼北海道は「消滅可能性自治体」が117にのぼる。北海道の自治体の大半は人口流出が激しく、社会減対策が必要だが、自然減対策も必要な自治体は少なくない。

▼東北は「消滅可能性自治体」が165で、その数も割合も全国最多であり、社会減対策も自然減対策もともに必要な自治体が大半である。

▼関東は「消滅可能性自治体」が91にとどまる一方で、「ブラックホール型自治体」が東京都の17を含め21にのぼる。

▼中部は「消滅可能性自治体」は109であるが、「自立持続可能性自治体」が12存在する。

▼近畿は「消滅可能性自治体」が93、「ブラックホール型自治体」が2存在しており、自然減対策の必要性が高い。

▼中四国は「消滅可能性自治体」は93だが、前回から脱却した自治体が多い。特に、島根県は脱却した自治体が12にのぼり、「消滅可能性自治体」はわずか4に減っている。

▼九州・沖縄は「消滅可能性自治体」が76で最も少ない上に、「自立持続可能性自治体」が34も存在し、全国の総数65の半数以上を占める。中でも、沖縄県が17、福岡県が9、熊本県が7にのぼる。

人口規模や地域によって人口特性の違いが浮き彫りとなっていて、各自治体は、自らの実情と課題に応じて、人口の自然減対策と社会減対策を適切に組み合わせた対応が求められる、ということだ。

安定的で、成長力のある「8000万人国家」を目指す

また、人口戦略会議では、2024年1月に『人口ビジョン2100』を公表していて、そのなかで「安定的で、成長力のある「8000万人国家」を目指す」と提言している。

「少子化の流れは全く歯止めがかかっていない状況」の今はまさに「遅れを挽回するラストチャンス」であり、これまでの対応で欠けていたこととして「人口減少の深刻な影響と予防の重要性について、国民へ十分な情報共有を図ってこなかった」としている。

2100年には「現在より小さい人口規模であっても、多様性に富んだ成長力のある社会を構築し、一人ひとりにとって豊かで幸福度が世界最高水準である社会の実現を目指す」とのことだ。

ではどうやってこれを実現するか。

人口戦略会議では、「定常化戦略」と「強靭化戦略」の2つの戦略を一体的に推進することで、上述のような社会を実現すると提言している。

定常化戦略では、
・若年世代の「所得向上」「雇用改善」
・若い男女の健康管理を促す「プレコンセプションケア」
・子育て支援の「総合的な制度」の構築と財源確保
・住まい、通勤、教育費など(特に「東京圏」の問題)
などを挙げている。

プレコンセプションケアとは、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、思春期から生涯にわたって健康管理を行うよう促す取組みのことだ。

人口減対策に“移民政策”は?

一方、「永定住外国人政策」についてもふれていて、その政策は「膨大な数が必要で非現実的であり、将来の姿を見通すのが難しく、社会の安定性にも大きな危惧する」とのことで、 移民政策はとらないと断言している。

さらに、これらの戦略を進めるため、EBPMをベースにした立案プロセスや、国会での超党派の合意形成、地方と東京圏の取り組みなどが重要と提言している。

政府も異次元の少子化対策を進めるなか、2023年の出生者数は過去最低(速報値)を記録した日本。

政府や民間団体でも議論が進むなか、個人レベルでも、他人事ではなく自分ごとで考え、理解を進め、行動に移していかなければならないのだろう。

© 株式会社あいテレビ