【ライブレポート】ego apartment、坂ノ上音楽祭に登場 真っ青な空の下で味わう心躍る高揚感

すべての写真(4)を見る

4月13日、14日の2日間、大阪・天王寺公園エントランスエリアてんしばで、大阪・西成を拠点とするブルワリー『Derailleur Brew』と、関西最大級の無料ローカルフェス『GREENJAM』がタッグを組んだ野外音楽フェス『坂ノ上音楽祭』が開催。キセルやSPECIAL OTHERS、TENSAIBAND BEYOND、土岐麻子らが出演した同フェスの2日目にego apartmentが登場。気温25℃の夏日、桜も満開のお花見ウィークエンドのてんしばで最高にアツいステージを繰り広げたego apartmentのライブをレポートする。

まだライブが始まる前、リハーサル中のego apartmentの演奏に引き寄せられるようにステージ前のスタンディングエリアに人が集まってくる。会場の天王寺公園にはフットサルコートや小さな子どもが遊べるアトラクションがあり、天王寺動物園も隣接。晴天に恵まれたこの日は、親子連れや友達同士がひしめき合うスタンディングエリアと、その奥のピクニックエリア、さらにその奥に広がる広大なフリーエリアもシートを広げてくつろぐ人で満杯。大人も子どもも芝生でくつろぎながらクラフトビールとグッドミュージック、DJやトークライブが楽しめると謳う『坂ノ上音楽祭』ならではの光景だ。

「Next Live Artist, ego apartment!」とアナウンスがかると、White Townの「Your Woman」にのせてego apartment の3人が歓声に迎えられ登場。ステージ中央に集まり、お互いに気合を入れるようにそれぞれの背中を両手で叩き合うと、ステージ向かって左にZen(Gt&Vo)、中央の少し奥まったところにDyna(B)、右手にShu(Vo≫)といういつも通りの立ち位置へ。

「よろしくお願いしますego apartmentです!」とZenが観客に呼びかけ、オープニングは「1998」。イントロのベースパートでステージ前方に歩み出るDyna。低く囁くようなZenのボーカルと、Shuのハイトーンが交差しながら気だるいグルーブを生み出してゆく。真っ青な空の下にいながら深夜のような酩酊感を覚え、それも心地よい。

Zen(Gt&Vo)

「NEXT 2 U」のイントロが聴こえると、「wow!」という歓声が上がり、曲に合わせてクラップが起きる。Dynaは嬉しそうに微笑む。哀愁を帯びた曲調ながら、DynaとZenが向かい合ってプレイする姿に観客のテンションも高まっていく。私の背後で「えっ、ドラムいないんだ!」という驚きの声が聞こえたが、彼らはサポートメンバーを入れず3人+同期を使ったステージを行うのがデフォルト。が、昨秋のワンマンではShuが数曲でドラムをプレイする場面もあり、この先いくらでも起こりうるであろう変化に期待もしている。

続く「Wrong with u」は青空を仰ぎたくなるような心地よいメロディー。彼らの曲は英語詞中心で、時折ごく自然に日本語詞が差し込まれる。この曲でもZenのブルージーな低音ボーカルに体を揺らしていると、Shuの「時間はもうないとりあえずバイトゆくわ」というフレーズがひょいと顔を出す。サイパン出身で兵庫育ちのDynaとオーストラリア出身のZen、大阪出身で中学時代から洋楽中心の音楽ライフを送っていたShu。3人ともが作詞作曲をし、関西を拠点に2020年からego apartmentとしての活動が始まった。この日はホームである関西ということや、駆け出したくなるような春の陽気も相まってか、ステージの3人もとてもリラックスして演奏を楽しんでいるように見えた。

MCでは、「言わなアカンことがいっぱいある」とDynaが思い出したようにメモを取り出し、5月29日に2年ぶりのニューアルバムをリリースすることや、その2ndアルバムのリリースパーティーを6月27日に大阪で開催することをお知らせ。「メモ用意してるんや」と笑うZenも含め、クールなステージ運びとMCでの飾らない素顔のギャップも彼らのチャームポイントだ。

Shu(Vo≫)

中盤は「FOG」からスタートし、1日の始まりを思わせる清々しい「mayonnaise」からシームレスに「N o o N」へ。この2曲は彼らのライブではおなじみの流れだけれど、ライブハウスとは景色の違う抜けるような青空の下、デイタイムに体感できるのは格別だ。掲げた手をゆらりと風にまかせて踊る人。日差しを避けるようにego apartmentのタオルを肩にかけてステージに見入る人。風に乗って飛んできた桜の花びらが前に立つ人の肩にはらりと舞い落ちる最高のロケーションの中、各々が自由にライブを楽しむ姿が目に心地よかった。

続けて「1月にリリースした新曲を聴いてください」(Dyna)と「mad cooking machine」を。ゆらめくようなギターと浮遊感のあるトラックはまるで深海で踊っているよう。ShuのファルセットとZenの低音ボーカルが重なるパートは、ハモるというよりそれぞれの持ち味が発色していて良い。ダンサブルだけれど熱量はそれほど高くなく、漂うムードも温度もひんやり。それでいて気づけば音の波間に体を委ねている。

続く「Sensation」では深海から原色の世界へ一息にワープ。ギターのカッティングで、「one, two, three!」の掛け声で観客のテンションを上げていく。ego apartmentの歌詞を紐解いてみると実は内省的な色合いが濃いものも多いのだけれど、それがメロディーに乗りサウンドで彩られると、まさに昇華というのか途端にダンスナンバーとなって聴く者を酔わせる。続いて披露された「Weigh me down」もそう。タオルをガンガンに振り回すようなアッパーな盛り上がりとはまた違った、聴き手の体の芯に作用しじっくりと解き放っていくような高揚感を味わわせてくれる。

Dyna(B)

「OKラスト!」の掛け声とともに、最後の曲である「huu」が賑やかに騒々しくスタート。「1、2、3、4!」のカウントでDynaが煽れば、瞬く間に火が広がるようにスタンディングエリアではあちこちでジャンプする人や、拳を上げる人が。ステージ前方へせり出たDynaは羽を広げるように両手を伸ばし風と一体化するかのよう。そのDynaと向き合ってギターを掻き鳴らすZenはどんどんボルテージが上がり、最後にはステージに仰向けになり頭の上でギターをプレイ。ライブが最高潮に達する中、「ありがとうego apartmentでした!」の言葉を残しステージは終了。メンバーがステージを去るまで拍手と歓声が続いた。

MCでも告知された2年ぶり2枚目となるフルアルバム『ku ru i』は果たしてどんなアルバムになるのか。昨秋のワンマンでいくつか新曲がプレイされ、中には磁石のS極とN極ぐらい真反対の方を向いた曲もあり、改めて3人の中から湧き出るアイディアの奥深さに驚嘆させられた。ヒップホップやR&B、ソウル、インディーロックもエレクトロもK-POPもJ-POPも幅広く滋養とするユニークでキャッチーな音作りはego apartmentの大きな魅力であり持ち味だ。

そのアルバムを携えたリリースパーティー『ego apartment presents O do ri Ku ru i』は6月27日(木)心斎橋Yogibo META VALLEYにて開催。アルバム発売から約1カ月を経過し、『ku ru i』の曲たちがじっくりとリスナーに浸透していった頃にパーティーの幕が開く。そしてリリースパーティー=ワンマンかと思いきや、スケジュールではこの日のACTは“ego apartment and special more…”と表記されている。ego apartment プラスDJ?ゲストバンド?さらにこのパーティーはオンラインチケットも用意され、ワールドワイドに配信。世界のどこにいても、誰でも同じひとときを楽しむことができるこのパーティーが待ち遠しいし、この夜何が起こるのか、この目と耳で確かめたい。

Text:梶原有紀子 Photo:@shohnophoto

<公演情報>
坂ノ上音楽祭

2024年4月14日(日)てんしば(天王寺公園)

セットリスト1.19982.NEXT 2 U3.Wrong with u4.FOG5.mayonnaise6.N o o N7.mad cooking machine8.Sensation9.Weigh me down10.huu

<イベント情報>
ego apartment presents『O do ri Ku ru i』

6月27日(木) 大阪・Yogibo META VALLEY
開場19:00 / 開演19:30

出演:ego apartment / and more

※配信あり。配信期間は6月27日(木) 19:00〜6月28日(金) 17:00まで

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/egoapartment-odorikurui/

公式サイト:
https://www.egoapartment.net/

すべての写真(4)を見る

© ぴあ株式会社