「動かないと間に合わない…」植えられると信じて育てる苗 奥能登の農業の復活は…

まもなく田植えの時期を迎えますが奥能登では田畑の被害が深刻でいまだに復旧が進んでいません。

不安を抱える中、田植えの準備を進める農業の現状を取材しました。

「言葉出なかったですよね。これを見たときは」

「もう何もかもが本当にひどくて」」

数メートルにわたる大きな地割れ。

先週、珠洲市若山町を訪れると地震で被害を受けた田畑が手付かずの状態で残っていました。

珠洲市の農業法人「すえひろ」の政田将昭さん。

管理するおよそ115ヘクタールのうち、6割近くが地割れや隆起などの被害が発生したといいます。

政田さん:

「穴が開く、亀裂が入ってなおかつ下側のほうに地面がもう下がってしまったような状態で」

こうした農地関連の被害は県内全体で5290か所にのぼり、特に奥能登は被害が甚大でいまだに全容が把握できていません。

ただ、珠洲の農地では、地割れ以上の大きな問題があるといいます。

それはー

政田さん:

「水が来なくてできないっていうところの方がはるかに大きかったので」

案内してもらうと、そこには水が溜まったまま流れない用水路が。

「上流の方にこの用水に水を流すための取入れ口あるんですが、取入れ口の間が外からこちらまでの間に隆起しちゃっているので、あちら側の方で水止まっちゃってるような状態なんですよ」

土地の隆起で水路の勾配が逆転してしまったところが多数あり、水がせき止められることで下流まで届かないといいます。

これでは、田植えをすることができません。

政田さん:

「この用水から直接こういうふうに水を入れとったんですけど、今はもうここ水が流れないので、こちらの方を今どうしようか、ちょっと悩んでいる最中です」

比較的、被害の少ない場所には仮設ポンプの設置を市に依頼し近くの川から水を引っ張るなど応急的な対策を行いました。

それでも作付けできるのは例年の6割から7割ほどとなる見込みです。

政田さん:

「今手応えはないです。まだ本格的な復旧の話は聞こえてこないので」

急がれるのは根本的な農地の復旧です。

珠洲市によると工事を行うまでには、現地調査、国の査定と段階を踏む必要があり、相当な時間がかかる見込みです。

市担当者:

「地震による被害箇所が現段階でも1000件近くありますので、これを単年ですべて完了することは難しいかと思います」

「隆起したところに合わせて削る方がいいのか、盛る方がいいのかって、全体が動いているので」

「全体を見てどういう復旧方法が良いのかってこれから検討しないと難しいのかなと思います」

「年内に復旧のめどをつけなければ今年と来年で一次産業が衰退する」

県の有識者会議でも危機的な状況だと訴える声があがっています。

1年でも作付けをしなければ雑草が生え土地の栄養バランスが変わりこれまで通りのコメ作りができなくなる可能性があります。

どれだけの田んぼを田植えができる状態に戻せるかわかりませんが政田さんたちはいま、動かないと田植えに間に合わないことから今月から苗づくりを始めました。

政田さん:

「考えてても先へ進まないんで、植えられると信じてがんばって育てていきます」

「まあ来年、再来年というのは復旧、復興進むことを願ってます。」

奥能登の農業は将来、復活することができるのか。

勝負の1年はもう始まっています。

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