斜線11本で刻むユニバーサルデザイン「自分でできることが増えたら…」と期待、現在の紙幣は「触っても違いがよくわからない」20年ぶりの新紙幣は7月3日発行

新紙幣発行まで、あと2か月あまりですが、対応を迫られる人たちがいます。

日本銀行の函館支店です。

藤田忠士記者
「ちょっと緊張しますね、こちらの椅子、1億円分のお札でつくったイスなんです」

これは、新しいお札をPRするイベントです。
意外と知られていませんが、新札の発行日があと2か月に迫っているのです。

ラーメン店主
「こちらの券売機は、新紙幣に対応しないものになっています」

焦りを隠せない店の主。

辛いラーメン14石田さん
「新しくするとしたら、100万円以上かかる。とにかく困ります」

30年続いたデフレの出口が見え始めた今、デザインが一新される新紙幣のあれこれを、もうひとホリします。

豚骨と鶏ガラの旨味が詰まった濃厚スープとクセになる辛味がたまりません。

店員
「いらっしゃいませ」

札幌・中心部のラーメン店です。
2015年にオープンした際、中古で券売機を購入しました。

辛いラーメン14・石田真宏社長
「こちらの券売機は、新紙幣に対応しないものになっています。新しくするとしたら100万円から300万円、結構幅はあるんですけど、かかります」

少人数で店を切り盛りする石田さんにとって、客との現金のやりとりが発生しない券売機は、なくてはならない存在です。
しかし、ラーメンの材料が高騰している今、新たな出費は、大きな痛手です。

辛いラーメン14・石田真宏社長
「今になって(券売機を)ちょっと焦っていろいろ探している最中。券売機を買うとなったら2店舗あるんで、部品交換するにしても、出費が大きいです」

麻生太郎財務大臣(2019年当時)
「新元号の下での新しい日本銀行券にふさわしい人物と考えている」

7月3日に発行される新しいお札。
デザインが一新されるのは、2004年以来、20年ぶりです。
ちなみに、1万円札の新しい顔は、近代日本の経済の父=渋沢栄一。
「北海道拓殖銀行」や「札幌麦酒(さっぽろびーる)」など、北海道にもゆかりの深い実業家です。

繊細で高い技術から「工芸品」にも例えられる日本の紙幣。
例えば、お札を傾けると肖像画が浮き出て動く、3Dホログラムがあるなど世界トップレベルの偽造防止技術です。
そんな自慢の新紙幣の登場に、道内で対応に追われているのは、飲食店だけではありません。

自販機ランド代表・氷室信康さん
「こちらの昆虫食の自販機が人気になっています」

ススキノなどで、あわせて25台の販売機を取り扱うこちらのお店。
そのほとんどが、まだ新紙幣に対応していません。

自販機ランド・氷室信康さん
「こちらの機械を替える必要があります」

店をオープンしたのは2年前。
既に新紙幣の発行は、発表されていましたが、その時は新紙幣対応の販売機は、まだ買うことができなかったといいます。

自販機ランド・氷室信康さん
「新紙幣に変わることは結構前から知ってはいたが、それを待って自販機を購入というわけにはいかないので仕方がない。新紙幣は対応不可と書かせて頂いて旧紙幣での買い物、もしくはキャッシュレスでの買い物にしていただく形になる。すべてを替えるのは難しいので1~2年をかけて徐々に替えていく」

一方、新紙幣の発行を心待ちにしている人たちがいます。
札幌市中央区の北海道札幌視覚支援学校です。

現在、3歳から61歳までの生徒が、授業のほかに、歩行訓練、専門的なマッサージなどを学んでいます。
新しい紙幣には、まだ触れたことはありませんが、指で触るだけで、紙幣の種類がわかる、11本の斜線など、新しい機能に期待しています。

生徒・高村直美さん
「自分でできることが増えたら嬉しいので、使いやすいものだったらいいなとは思っているんですけど、やっぱり実際触ってみないとわからないので」

ちなみに、現在の紙幣にも、視覚障害者のための「識別マーク」がついていますが…。

生徒・秋保侑奈さん
「これよくわかんなくてあまり使わないですね。触っても違いがよくわからないので。財布にお札があるときは、お札の大きさを比べたり、読み取りアプリを使ったり、これを読み取って1000円って話してくれるんですよね」

臼木香月教諭
「やっぱり使うのは我々なので、積極的に触ってもらって、今後もおそらく何年後かにはお札をリニューアルしていくと思うので、しっかりそういう意見が伝わっていけばいいなと思っています。

新しい紙幣の誕生で、対応に迫られているのが、地下鉄やJRの駅の券売機です。

札幌の市営地下鉄の券売機は、全部で「226台」ありますがすでに、およそ8割の188台が新紙幣が使えるようになっています。
また、精算機は、すべて改修を終えていて費用は「およそ2億7500万円」ということです。

JR北海道は、「現在、券売機は、新紙幣が使えるものと、使えないものがある。順次、対応できるよう調整中」と話しています。

新紙幣の発行を前に、財務省がこんな呼びかけをしています。
「古いお札は使えなくなるから回収します」
「古い紙幣を振り込んだら新しい紙幣に交換します」
などという詐欺に注意するよう呼びかけています。

現在の紙幣は、新紙幣が発行されたあとも、使えますので、ご注意ください。
新紙幣の発行は、7月3日です。

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