「夢をあきらめないでほしい」“あしなが奨学金”資金不足の現状

病気や災害などで親を亡くすなどした子供たちを支援する「あしなが育英会」の奨学金について、物価高などを背景に申請が急増する一方、資金不足のため給付を受けられない人も出ています。奨学金の給付を受けた女性は、一人でも多くの人に現状を知ってもらいたいと話します。

4月21日。JR仙台駅前では、「あしなが奨学金」の募金活動が行われていました。「あしなが奨学金」とは、病気や災害などで親を亡くしたり、障がいなどで親が働けない子供たちの教育資金を支援するもので、寄付と街頭募金を原資としています。募金を呼びかけたのは、奨学金の給付を受ける大学生やボランティアの高校生です。

西村花音さん
「遺児たちを応援してくれるあしながさんに、どうかなっていただけないでしょうか」

塩釜市出身の西村花音さん(23歳)。奨学金を受けて、大学に進学した一人です。

西村花音さん
「いつもよりもずっと暑いなと思います。天気が良いのが一番良かったんですけど、逆に暑い…」

学業やアルバイト…それぞれが事情を抱える中、募金活動を行っていますが、今、資金不足が問題となっています。

あしなが育英会によりますと、今年の春に高校に入学した生徒で奨学金を申請した人は、全国で1800人に上りましたが、資金が足りず半数を超える人が給付を受けられませんでした。

西村花音さん
「現状厳しい状況にいる子供たちに対しても応援してくれる。支えてくれる人がいる社会であって、夢を諦めなくても大丈夫、道があることを伝えていけたらいいなと思って、こうして街頭に立って活動しています」

西村さんは現在、大学の4年生で、山形市内で一人暮らしをしています。

西村花音さん
「良く作るのは肉じゃか…とかですかね、なんかとりあえずスーパー行って安いものを安い!って買っちゃって」

友達とご飯を食べに行ったり、ショッピングをしたり、大学生らしい生活を送っている西村さん。しかし、ついこの間まで、あすの生活すら描けなかったといいます。

西村花音さん
「片づけても家の中がまったく片付かない状態。体を休めるところがないのと高校も精神的に行きたくないので、家でも高校でもという形でなかなか行けなくなって、最終的に中退しました」

両親は西村さんが幼いころに離婚。祖父母の家に身を寄せましたが2歳下の妹は発達障害があり、母親はうつ病を発症。毎日が必死だったといいます。

西村花音さん
「もっと学校に行きたかった。周りで進学目指して頑張っている子や、進学できている子がものすごくうらやましかったなって」

実家を出た西村さんは進学の夢をあきらめきれず、アルバイトをしながら高卒認定試験と大学にも合格。あしなが奨学金を含む複数の奨学金を加えて、アルバイト代で授業料や生活費をすべて工面しています。奨学金のおかげで心に余裕が生まれたと話す西村さん。自身の経験を踏まえ、今、西村さんが伝えたいこと。

西村花音さん
「決してひとりぼっちではなくて、ちゃんと助けてくれる人がいたり、自分の目標を持ってもあきらめなくていい制度があるはずなので、夢を諦めない、努力することを諦めないでほしいなって」

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