桜の大木が倒れ大けが 日本中で進む「桜の高齢化」 ソメイヨシノは樹齢60年ほどで倒木リスク増大

4月23日、京都の清水寺の近くで、桜の木が突然倒れ、下敷きになった男性が大けがをした。実はいま日本中で進んでいるのが、「桜の高齢化」。春の風物詩が、危機を迎えている。

記者リポート:人気観光地、清水寺近くの坂なんですが、木が倒れて道をふさいでしまっています。

23日、京都市東山区、清水寺の近くにある産寧坂(さんねいざか)が一時騒然となった。高さ約9.1メートルの桜の木が突然倒れ、遠足で生徒を引率していた62歳の高校教師の男性が大けがをした。

近くの店の店主:これは大昔からある木で、100年以上前からここにある枝垂桜(しだれざくら)。いろんな人が来て写真撮ってはるもん。

警察は、木には外見上の腐食がなく、倒木を予見することは難しかったとしている。

■倒れる危険がある桜を見た目で判別することは困難

倒れる危険がある桜を、見分けることはできないのか?

京都府立植物園で、桜の木の手入れを行う樹木医、中井貞さんは次のように話す。
京都府立植物園 樹木医 中井貞さん:桜は腐朽しやすい(腐りやすい)という性格はあると思います。特に大きな傷もないと、内部で腐りが進行していてもなかなか分かりづらい。

腐朽菌(ふきゅうきん)と呼ばれる菌が侵入することで木は腐り、倒れるリスクが高くなる。木の表面が腐るケースだとすぐに異変に気が付くことができるが、内部が空洞になって腐るケースでは、見た目で判別するのは困難だ。

その場合、頼りになるのは、木をたたいたときの「音」。
京都府立植物園 樹木医 中井貞さん:こちらは健全。(木が健全だと)こういう締まった音というか、固い音がします。(別のところをたたいて)ここは響くような音。これは中が空洞になっている(腐っている)。

京都府立植物園 樹木医 中井貞さん:潜在的な危険木という呼び方をしている。細かい観察や調査を続けていかないと、なかなか把握するのは難しいかなと思います。

■「ほとんど全てのソメイヨシノは腐りを持っていると思います」

さらに、“日本を代表する桜”に、いまある危機が。

京都府立植物園 樹木医 中井貞さん:これはソメイヨシノで、大体60年~70年ぐらいの樹齢かなと思います。ソメイヨシノという樹種は非常に腐りやすい。

日本にある桜の7割~8割を占めるともいわれるソメイヨシノは、樹齢約60年ほどで腐りやすくなるといわれている。ソメイヨシノは1950年~70年代の高度経済成長期にその多くが植えられていて、いま一斉に「高齢化」している。

京都府立植物園 樹木医 中井貞さん:ソメイヨシノは桜の種類の中でも、ものすごく成長が早いという特徴もあって、全国に(一斉に)植えられたという経緯がある。同じ所に植えた木が同じ時間を経て、今70年ぐらいたっている。ほとんど全てのソメイヨシノは腐りを持っていると思います。

■大阪市港区の「桜通り」では5月に伐採が決定

新しい幹を育て、世代交代させることで寿命を延ばすことができるが、街路樹でそういった管理をすることは、簡単ではない。 実際に、桜を撤去せざるを得なくなった例もある。

大阪市港区にある「桜通り」では、約60年前に最初の桜が植えられ、地元の人たちに守られてきた。しかし、時を重ね、木が倒れてしまったり、根の部分が成長して道路が隆起してしまうこともあった。そして、5月に桜並木を伐採することが決定。その姿を消すことになる。

桜を管理する「桂音会」 孝岡正基会長:どうにか残せないか活動もしたんですけど、結局は切るという選択肢になってしまった。こんなにきれいなので、なくなるのは惜しいですよ。

私たちの心を、癒やし続けてくれた「日本の桜」。いま、その景色を守るための対策は、岐路に立たされている。

■「ソメイヨシノ」は60年で倒木のリスク増大

そもそも桜は腐りやすい、さらにソメイヨシノという品種は60年で倒木のリスクが増えるということだ。そのためやむを得ず伐採を決めた地区もあるという。

対策を行っている自治体もあり、長野・諏訪市では100本の桜の植え替えを計画していて、費用は約750万円かかる予定。費用の一部はクラウドファンディングで募集して、目標金額は100万円だということだ。自治体の対応も簡単ではない。

関西テレビ 神崎報道デスク:倒れるぐらいだったら切ってしまうのが手っ取り早いのですが、やはり桜は地域の人に愛されいて、残してほしいという声があります。税金で全てまかなうことも問題があり、桜は多くの皆さんが関心を持っていて、残したいという気持ちがあると思いますので、クラウドファンディングなどの寄付のような形で、民間の資金を利用しながら、うまく残していく方向で調整してもらえたらと思います。

けがをされる方や物的被害が出ることがないようにすることは当然大事だが、行政としては予算的な問題やスケジュールの問題を解決して、できれば桜を残していくことが重要ではないだろうか。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年4月26日放送)

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