横浜FMが初のACL決勝を戦う「アル・アイン」の歩き方(1)「退場」はプラスに、いざ「泉」の街への巻

2019年アジアカップ。日本対ウズベキスタン戦の入場券。提供/後藤健生

横浜F・マリノスが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝初進出を決めた。5月にホーム&アウェイ方式でファイナル2試合を戦う。アジアの王座を争う相手は、UAEのアル・アイン。蹴球放浪家・後藤健生はもちろん、優勝チームが決まる第2戦アウェイの地をスカウティング(事前分析)済みだ。

■プラスに働いた「退場劇」

蔚山現代FCとの激闘を制して、横浜F・マリノスがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝進出を決めました。

蔚山(ウルサン)での第1戦は0対1で落としており、決勝進出のためには2点差以上で勝たなければいけないという状況もあって、立ち上がりからとてもアグレッシブで、前半30分までに植中朝日の2ゴールとアンデルソン・ロペスのゴールで3対0とします。

しかし、3点差になってちょっと緩みが出たところで、蔚山がダリヤン・ボヤニッチを投入。これですっかり流れが変わってしまいました。

CKから1点を返され、そして厳原上(オム・ウォンサン)がシュート体勢に入ったところでDFの上島拓巳がスライディングを仕掛けましたが、ボールが手に当たってPKとなったうえ、決定的得点機会の阻止とされて一発退場。1人少なくなった横浜FMでしたが、延長戦を含めて90分近くを守り切り、PK戦を制して決勝にたどり着きました。

もし、あのまま11人で戦っていたら、さらに失点してしまったような気もするので、退場で守備意識が高まったことは、横浜FMのためにかえって良かったのかもしれません。

■「国境の街」アル・アイン

さて、5月には決勝戦が行われますが、対戦相手はUAE(アラブ首長国連邦)のアル・アインと決まりました。

アル・アインは西地区でサウジアラビアのアル・ナスルとアル・ヒラルを倒して勝ち上がってきました。アル・アインを贔屓するわけではありませんが、地域大国サウジアラビアの超金持ちクラブを2つ倒したのは痛快な出来事でした。

アル・アインはUAEを構成するアブダビ首長国に属する内陸都市で、オマーンとの国境に接しており、オマーン側はアル・ブライミという街になっています(歩いて国境を越えることも可能ですが、ビザを取ってから国境を越えないと、帰って来られないという話もあります)。

人口は80万人ほどですからそれなりの大都市ですが、ドバイの330万人やアブダビの150万人と比べれば小さな街に感じます。

アラビア湾に面した砂漠地帯にあるドバイやアブダビは平坦なので、景色らしい景色はありません(海はきれいですが)。その代わりに、高層ビルがランドマークになっているわけですが、古い建物など存在せず、観光には物足りないところです。

■名前の意味は「泉」

それに比べて、内陸にあるアル・アインは、それなりに小高い丘が点在するなど「景色」があります。それに、ドバイやアブダビのような大都市とは違って、広々とした空気感があります。また、都心部でも巨大な高層ビルはなく、小さな商店や食べ物屋が並んでいる、昔ながらのアラブの街の風情が残っています。

ですから、僕にとって、アル・アインは湾岸諸国の中では好きな都市の一つということになります。

アル・アインという都市名の「アル」はアラビア語の冠詞。そして、「アイン」は「泉」という意味です。つまり、アル・アインは砂漠の中のオアシス都市で、青銅器時代から人々が住んでおり、砂漠を横断して東洋からの商品を地中海方面に届ける交易の中継地でもありました。

今でも、アル・アインにはオアシスが残っていて、周辺の遺跡や宮殿などとともにユネスコの世界遺産にも登録されています。訪れてみると、塀に囲まれたオアシスの中は緑の木々に覆われ、縦横に水路も走っています。

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