三菱の新型SUV「ASX」の予想価格は240万円から? 内装やサイズ、国内導入についても解説

三菱自動車の欧州事業統括会社であるミツビシ・モーターズ・ヨーロッパ・ビー・ブイ(MME)は、2024年4月24日(水)、欧州向けのコンパクトSUV「ASX」の大幅改良モデルを発表しました。スタイリッシュなデザイン、充実したコネクティッド機能、パワフルなパワーユニットなど、魅力的な進化を遂げた新型ASXは、国内販売も期待されています。この記事では、新型ASXの国内販売を期待する理由や、新型ASXの外観、内装、パワーユニット、ボディサイズ、運転感覚・乗り心地、予想価格などを、カーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが解説していきます。

三菱 ASX(欧州仕様)

三菱 新型ASXの国内販売を期待する理由とは?

最近はSUVの人気が高く、国内で新車として販売されている小型/普通乗用車の30%以上をSUVが占めます。

この中でも特に人気の高いタイプが、全長を4,500mm未満に抑えたコンパクトSUVです。

販売ランキングを見ると、トヨタ ヤリスクロスとカローラクロス、ホンダ ヴェゼルなどのコンパクトSUVの人気が上位を占めています。

ホンダ 新型WR-V

また2024年3月末に発売が開始されたコンパクトSUVのホンダ 新型WR-Vは、2024年4月22日(月)までに1万3000台を受注したと公表されました。

コンパクトSUVが好調な理由とは

コンパクトSUVの販売が好調な理由は3つあります。

2023年に最も売れたコンパクトSUV「トヨタ ヤリスクロス」

1つ目は外観のカッコよさです。フロントマスクに厚みを持たせ、サイズの大きなタイヤも装着されていて、存在感の強い車種が多いです。

2つ目は取り回しやすいコンパクトなサイズです。コンパクトSUVであれば全長が4,500mm未満に収まって運転しやすく、初心者ドライバーにも扱いやすいという魅力があります。

3つ目は価格です。1.2~1.5Lのノーマルガソリンエンジンを搭載するコンパクトSUVには、価格帯を180~250万円に抑えた車種が多くあります。ハイブリッドでも、価格の割安な買い得グレードであれば300万円前後に収まります。

今のクルマの価格は、安全装備や運転支援機能の充実により、15年ほど前の1.2~1.4倍に達します。

当時人気の高かったトヨタ RAV4やホンダ CR-Vの価格と、今のトヨタ カローラクロスやホンダ 新型WR-Vの価格が同じくらいということもあり、これらコンパクトSUVの売れ行きも堅調です。

三菱が国内販売する唯一のコンパクトSUV「RVR」を2024年4月に廃止

三菱 RVR

しかし、そんなコンパクトSUVが人気な状況にもかかわらず、三菱はコンパクトSUVのRVRを2024年4月に廃止します。

現行RVRは2010年に登場したコンパクトSUVで、全長が4,365mmのボディに直列4気筒1.8Lのガソリンエンジンを搭載しています。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2,670mmと全長の割に長く、大人4名で乗車をしても窮屈に感じません。

RVRの価格はベーシックなグレード「M」が230万6700円、上級グレードの「G」でも247万600円です。動力性能に余裕のある1.8Lエンジンを搭載しながら、価格を250万円以下に抑えていました。

そして2023年2月に改良が実施されています。しかしながら設計の古さもあって、同年の1か月平均登録台数は100台少々に留まるため、生産を終えるのです。

三菱はコンパクトSUVが国内不在になる

三菱 エクリプスクロス

RVRを廃止すると、三菱のSUVで最も安価な車種とグレードは、全長4,545mmと少しボディの大きめなエクリプスクロスに1.5Lターボを搭載したMグレード・2WDの277万3100円です。

また人気の三菱 アウトランダーはプラグインハイブリッドの4WDのみですから、価格帯は約500~630万円に達します。2024年2月に発売されたトライトンも、ピックアップトラックながら約500~540万円です。

取り回しがしやすく、求めやすい価格のコンパクトSUVが三菱にはなくなるのです。

三菱 パジェロ(2019年に生産終了)

もともと三菱では、1982年に初代モデルを発売したパジェロの人気が高く、ブランドイメージもSUVが支えています。コンパクトで価格の割安なSUVが欠けるのは辛いところでしょう。

ルノー キャプチャー

そこで国内発売を期待したいのが、三菱の新型SUV「ASX」です。業務提携を結んでいるルノーが生産するOEM車であるキャプチャーの姉妹車に相当します。

2024年4月、そんなASXの改良が欧州にて発表されました。

三菱 新型ASXの外観

三菱 新型ASXのフロントフェイス

外観では主にフロントフェイスが刷新されました。

三菱 新型ASX

くわえて、ダイヤモンドカット加工が施されたブラックの18インチアルミホイールを採用、スポーティーさが演出されています。

三菱 新型ASXの内装

三菱 新型ASXの内装(インパネ)
三菱 新型ASXの内装(シート)

新型ASXの内装では10.4インチのディスプレイオーディオ、安全性を高めるアラウンドビューモニターなどが採用されます。

コネクティッド機能

三菱 新型ASXのディスプレイオーディオ

・10.4インチスマートフォン連携ディスプレイオーディオ新搭載

・音声操作やGoogleマップ、Google Playストアなどが利用可能

・新アプリ「My Mitsubishi Motors」で駐車位置確認機能などが追加

安全機能

・自動駐車支援機能「パークアシスト」を新搭載

・車両周囲確認を補助する「アラウンドビューモニター」を新搭載

・後退時交差車両検知警報システム「RCTA」など予防安全技術を充実

三菱 新型ASXのパワーユニット

新型ASXのパワーユニットには、ハイブリッドモデル(HEV)、マイルドハイブリッドモデル、ガソリンエンジンモデルの3つが設定されました(欧州仕様)。

E-TECH FULL HYBRID(Eテック・フルハイブリッド)

このハイブリッドには、ルノー独自の「E-TECH FULL HYBRID(Eテック・フルハイブリッド)」が採用されています。

これは2つのモーターとドッグクラッチ(※)を備えた独自のシステムで、日本で販売されているルノー キャプチャーにも備わっているハイブリッドシステムです。

以下はパワーユニット別の特徴です。

三菱 新型ASXのボディサイズ

三菱 新型ASXのサイドビュー

新型ASXのボディサイズは、全長4,228mm、全幅1,797mm、全高1,573mm。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2,639mmです。

基本的にベース車のルノー キャプチャーと同じです。純粋な国産SUVと比較すると、トヨタ ヤリスクロスよりも少し大きい程度です。

三菱 新型ASXの運転感覚・乗り心地

三菱 新型ASX

新型ASXはルノー キャプチャーと同じクルマですから、運転感覚に特徴があります。

ルノーのクルマは、ドライバーの着座位置を車体の中心に近づけて、一体感を伴った走りを楽しめます。ステアリング操作に対する反応も自然な印象で、ステアリングホイールの操舵角に応じて、車両が進行方向を正確に変えます。

この上質な運転感覚は、アウトランダーに通じるところもあります。そのために新型ASXは、三菱のブランドイメージにも合っています。

国内へ導入すれば、生産を終えたRVRだけでなく、発売から6年を経過したエクリプスクロスの人気も補えるでしょう。

三菱 新型ASXの予想価格

問題は価格です。Eテック・フルハイブリッドを搭載すれば、300万円を超える可能性も高いです。

プレミアムコンパクトSUVとしては魅力的ですが、価格はエクリプスクロスのターボエンジン搭載車と同等か、それ以上です。

これではコンパクトSUVのメリットを十分に発揮できないため、1.0Lや1.3Lのガソリンターボ、あるいは1.5Lの自然吸気エンジンを含めて、安価なパワーユニットを搭載する必要も生じるでしょう。

新型ASXの日本販売時の価格を予想すると、安価なガソリンエンジン車(2WD)が240~280万円、ハイブリッドエンジン車(2WD)は290~330万円といった水準となるでしょう。RVRよりは高いですが、エクリプスクロスよりは安いです。

特に今の三菱に用意されているハイブリッドエンジンは、高価なPHEVだけです。新型ASXのハイブリッドであれば、ノーマルエンジンに比べて40~50万円の上乗せで設定できるため、価格面でも新型ASXは選ばれやすいでしょう。

現時点では国内の導入予定はない

三菱 新型ASX

三菱によると「新型ASXはルノー製のOEM車で、海外市場専用のため、国内に導入する予定はない」とのことですが、販売店では「RVRの後継になる、コンパクトで求めやすいSUVが欲しい」と述べています。

新型ASXは日本のコンパクトSUVのニーズにも適した魅力的な車種ですから、ぜひ輸入して欲しい1台です。

[筆者:渡辺 陽一郎/写真:三菱自動車、小林 岳夫、茂呂 幸正]

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