北村匠海、“夫の先輩”長谷川博己&向井理に続くか 『あんぱん』柳井嵩役でさらなる飛躍へ

北村匠海がNHK連続テレビ小説『あんぱん』で柳井嵩役を演じることが発表された。柳井嵩は、『アンパンマン』の生みの親であるやなせたかしをモデルとした人物。主人公・朝田のぶを演じる今田美桜とともに、日本を元気にする朝ドラを届けてくれそうだ。

『ネットと朝ドラ』の著書であり、“日本で一番朝ドラコラムを執筆している”ライターの木俣冬氏は、今田と北村のコンビについて、「絶対的な安心感がある」と太鼓判を押す。

「発表会見での今田さんと北村さんのツーショットを見たときに、“これは間違いない”と感じました。二人の笑顔が場を一気に明るくさせる雰囲気がありました。朝ドラ夫婦役の大々的な発表という点では、『らんまん』の神木隆之介さんと浜辺美波さんがいました。映画・ドラマに大活躍中の若手コンビという点で『らんまん』夫婦とも重なる点が多く、これまで朝ドラの視聴習慣がなかった層も取り込めるのではないかと思います。今田さんと北村さんは映画『東京リベンジャーズ』シリーズをはじめ、何作も共演作があることもあり、相性の良さは証明済みですし、二人共どこか“陰”をもった役柄を演じるのも抜群にうまい。『あんぱん』では戦時中のパートもしっかり描くようなので、今田さんと北村さんがキャスティングされた理由もその点にあるような気がしています」

何かを成した夫とその妻という構成の朝ドラは、近年には『らんまん』と『エール』があったが、いずれも男性主人公。女性主人公の朝ドラという意味では、『まんぷく』と『ゲゲゲの女房』が『あんぱん』のイメージに近いだろうか。木俣氏は、それぞれの作品で夫役を演じていた長谷川博己、向井理と北村は通ずるものがあると続ける。

「『まんぷく』は安藤サクラさん、『ゲゲゲの女房』は松下奈緒さんが主演でしたが、負けず劣らずのインパクトを放っていたのが夫役の長谷川博己さんと向井理さんでした。お二人に共通するのは、“メガネが似合う”という点。言葉だけ抜き出すと少し間抜けな感じがしてしまうのですが(笑)、俳優さんも誰もがメガネが似合うわけではないんです。『メガネ=インテリ』というのは一昔前のイメージだとは思うのですが、長谷川さんも向井さんも知性があるからこそメガネをかけている姿がしっくりくる。それは演技にも表れていて、非常に緻密に計算した上で芝居を作り上げている印象があります。その点は北村さんにも通じており、これまでの出演作でも自分が作品の中でどういう立ち位置にいるべきか、共演者がどうすれば最大限に輝くのか、それを理解した上で演技をしているように思います。『あんぱん』で北村さんがメガネをかけるかは分かりませんが、やなせさんはメガネをかけていらっしゃいましたし、メガネがあってもなくても、長谷川さん、向井さんに連ねる“名物夫”になる予感がしています」

数多くの出演作がある北村だが、意外にも朝ドラは初出演。北村にとって朝ドラ出演はさらなる飛躍につながるのではないかと木俣氏は語る。

「北村さんは多くの主演作もあり、現時点でも一流の役者だと思いますが、朝ドラ出演はさらに一皮むけるきっかけになるのではないかと思います。ここまでの出演作は、いい意味で代表作がないともいえるぐらい、どの作品でも自分の役割を完璧にこなしていました。だからこそ、北村さんといえばこれ、というキャラクターは人それぞれバラけるように思うんです。それも十分素晴らしいことですが、朝ドラという長期間にわたる作品をとおして紛れもない代表作ができると、さらに今後の出演作にも幅が出るのではないかと。長谷川さんはその後に大河ドラマで主演を果たしましたが、北村さんも同じような歩みをするような気がしています。大河にも『平清盛』以来の出演がゆくゆくあるのでは。奇しくも二人は『鈴木先生』(テレビ東京)で先生と生徒の役柄で、現在は『アンチヒーロー』(TBS系)で共演もされています。もしかしたら、長谷川さんから北村さんに朝ドラのアドバイスもされているかもしれませんね」

『あんぱん』制作統括の倉崎憲は、北村の「10分後、自分が命を落とすかもしれないから、今どう生きるかっていうことを連続して行うことが、その日々を全うすることだ」という言葉を聞いて、本作のオファーを決めたという。“今を生き続ける”北村だからこその柳井嵩と、今田美桜ののぶが、来年日本中を明るく照らしてくれそうだ。

(文=石井達也)

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