「バニーガーデン」レビュー:15年前“とある店”に夢中になったライターにとって、ここは“令和の楽園”となったのか?

日本のどこかにあるという、見目麗しいキャストたちといっしょにお酒が飲めるという幻の店、「バニーガーデン」。筆者は、ついにこの店がある場所を突き止めた。

こういった店とはしばらく距離を置いていた筆者が、この「バニーガーデン」に興味を惹かれたのには理由がある。あれは約15年前……2009年ごろからしばらく夢中になっていた、“とある店”に近いコンセプトを感じたからだった。

「バニーガーデン」と同様、魅力的なキャストたちと一緒にお酒が飲めるその“とある店”は、若かりし頃の筆者にとってまさに“夢のクラブ”と形容し得るほどに素晴らしい場所だった。キャストの中には客と従業員という関係を超えて深い関係になった女性もいた。彼女からは親密さの証として「あなたは私の最高のお友達です!」という、自分には勿体ない言葉を受け取ったりしたものだ。

そんな悲喜こもごもの思い出を持つ筆者にとって、果たして「バニーガーデン」は、この令和の時代に再び“夢のひととき”を過ごせる場所になっているのだろうか?

■早くも募る「バニーガーデン」への不信感

“花奈さん”というキャストに導かれ、「バニーガーデン」への初入店を果たした筆者。高級感のある内装が醸し出す雰囲気は、“かの店”よりも好みだ。

どうやらここで筆者は、務めていた会社をクビになったばかりの“乾田杯人(こうだ はいと)”という人物を演じることになるらしい。できれば自分らしい名前で楽しめると良かったが、瑣末なことではある。

さっそく自分が飲む用と花奈さんが飲む用のお酒を注文することに。それを受けて、花奈さんが後ろにある棚から2人分のお酒を取ろうとする。ここで筆者は、この「バニーガーデン」が売りのひとつとしているシステムの一端を、身を持って体験することになる。

「PTAシステム」(どんな言葉の略称か知りたい方は店舗の公式サイトで確認してほしい)と名付けられたそれにより、「バニーガーデン」では来店するたびに、日によって異なる絶景を楽しむことができる。それ自体はよいのだが、これが店のアピールポイントになっていることにキャストの女の子たちは合意しているのだろうか?

もしも「バニーガーデン」がキャストたちの純真さに付け込んで合意を得ずに店の売りにしているのであれば、不届き千万である。筆者は「バニーガーデン」を許さないだろう。それはそれとして、どうしてもそちらに視界が吸い寄せられてしまう自分が情けない……。

■「バニーガーデン」での出費はマイナスではなくむしろプラス

「バニーガーデン」では現在、3人の女の子がキャストとして働いており、それぞれ源氏名を花奈さん、凛さん、美羽香さんという。天真爛漫で夢を叶えるために頑張っている花奈さん、アニメが好きな“オタクにも優しいギャル”の凛さん、一見クールだが豊富な語彙で罵倒してくるのが癖になる美羽香さん――。

いずれも魅力的な女性で、お酒を飲みながら会話を重ねることで少しずつその内面を知っていくのは本当に楽しく、時間が経つのを忘れてしまう。強いお酒を飲んで酔ったときにだけ見せてくれる一面も、三者三様の個性があって堪らないものがある。「バニーガーデン」のことは信用し切れないが、会話の様子から察するに彼女たちが心から楽しんで働ける職場であることは間違いなさそうだ。

15年前は若気の至りからエキセントリックな発言や下ネタを口走ってしまうこともあった筆者だが、人生経験を経た現在はそういったこともほとんどない。少々デリカシーのないことを言ってしまったと反省することもあるが、概ね女の子たちに寄り添った会話ができていると感じる。彼女たちもこちらに好意を寄せていることが言葉の端々から伝わってくるので、ほかの客のもとへ向かうときにずいぶん素っ気ないように感じるのはきっと気のせいだろう。

3人にはそれぞれお酒やフードの好みがあり、大好物ならば同じお酒やフードばかり注文しても毎回無邪気に喜んでくれる。嬉しいし、ありがたいのだが、何が好物なのかさえ分からず、彼女たちの反応に一喜一憂していたころがいちばん楽しかったとも感じられ、少々切なくなったりもする。とはいえ、キャストと親密な関係にならなければ味わえない体験もまた、「バニーガーデン」の醍醐味だ。

特定のキャストとある程度打ち解けてくると、一緒に遊べるミニゲームに誘われるようになる。チェキ撮影、Tゲーム、手押し相撲はいずれもちょっとしたハプニングが頻繁に起こる(あとTゲームはルーレットで出る色がいつも一緒のような気がする)が、遊んだあとのキャストたちは満足気なので、まんざらでもないと捉えて問題ないと思う。きっと3人とも、純粋に筆者と遊びたくて誘っているに違いない。

そんなこんなで毎週末、ときには週に2回の頻度で「バニーガーデン」に足しげく通うことになった筆者。庶民的な感覚で考えると、店を訪れるたびにかなりの出費となるように感じるかもしれない。しかし、コツさえ掴めれば「バニーガーデン」での出費はある意味で非常にリーズナブルだと言える。

なぜなら毎週末「バニーガーデン」に行くことをモチベーションにすることで仕事にも意欲的に取り組めるようになった筆者の基本給は、みるみるうちに上昇。最終的には週給12万6,000円という、以前務めていた会社よりも遥かに多くの収入を得られるようになっていたからだ。支出はマイナスどころか、実質プラスと言って差し支えない。「バニーガーデン」はライフ&ワーク、双方の質を飛躍的に向上させる可能性を秘めているのだ。

ちなみに、どのような業務でそれほど稼げるようになったのかと問われれば、筆者にもよく分かっていない。いつも気付くと就業時間が終わっているので、業務内容についての記憶が曖昧なのだ。少々気掛かりだが、この給与の前には些細なことである。「バニーガーデン」での体験に集中できるので、むしろこの記憶の消失が良いことのようにさえ感じられる。

■「バニーガーデン」は蜃気楼。その存在は常に危うい

客である我々にとっては夢のような場所である「バニーガーデン」。しかし、薄々気付いてはいたが、ひとつの業態として見ると少々浮き世離れしている……オブラートに包まずに言えば、現行法に接触している可能性が高い部分が見受けられる。いつまでもそのままの形でその場所に存在し続けていられるとは限らない、いわば蜃気楼のような存在なのである。

ある日、筆者がいつものように「バニーガーデン」に向かうと、かつての楽園の入り口には「テナント募集中」の張り紙が。店内も、もぬけの殻になっているようだった。その光景を目にしたときの絶望は、いまも筆者の胸に深い傷として残っている。

このときは悪い夢だったと思い込むことでなんとか事なきを得たのだが、一度「バニーガーデン」という楽園を愛した紳士・淑女が悲劇的な結末を回避するには、意中のキャストと心の底からの繋がりで結ばれる必要があるのだ。

これを目標としたとき、「バニーガーデン」はとにかく誘惑が多い。どんなに基本給がアップしたところでおいそれとは注文できない高級ボトルが棚に並んでいる上に、所持金が底をついても、いくらでも借金ができてしまう。どんなに働いても返せない額の借金をしてしまった客の末路は、悲惨なものであるらしい。

キャストたちと遊ぶミニゲームについても、普通に遊べば彼女たちは満喫してくれるのだが、客が“いい思い”をしようとすると、追加でお金を支払う必要がある。彼女たちに好意を持ってもらえる行為とは無関係なことで出費がかさむと、それだけ幸せな結末にたどり着ける可能性は、僅かながら着実に遠のいてしまう。欲望の赴くままに振る舞うには、相応のリスクが伴うのだ。

筆者の失敗談を正直に告白しよう。花奈さんとのチェキ撮影で、偶然わずかに目を閉じたタイミングでチェキが撮れたことが切っ掛けで、筆者はどうしても花奈さんが瞬きをするその刹那、半目になった状態のチェキを撮りたくなってしまった。

このとき“チェキは撮り直すたびに料金が掛かる”ことに気付かなかった筆者は、最終的に半目のチェキを入手するために30,000円もの金額を掛けてしまったのだ。再撮影のたびに追加料金が掛かることはハッキリと明記されていたので、「バニーガーデン」側ではなく完全に筆者の落ち度である。

「バニーガーデン」ではチェキ撮影は1回につき2,000円となっている。こんなことのために14回も撮り直した計算になり、花奈さんの目に筆者はさぞかし不気味に映ったことだろうと深く反省している。

少なくとも「バニーガーデン」という店の作法に不慣れで、キャストたちとの距離の縮め方を手探りで模索している時点では、彼女たちに心を開いてもらうためには、誠実な行動を心がけたほうがいいだろう。

何度もアフターのお誘いを受け、特別な接客をしてもらい、2人きりで旅行にも行けるようになり……キャストたちの態度から完全に相思相愛であると確信できるようになっても、ハッピーな結末までは意外と遠い。油断はしないことだ(経験者は語る)。

■結論:「バニーガーデン」は“令和の楽園”である

店側に対する不信感は拭い切れていないが、「バニーガーデン」が素晴らしいキャストを見い出す力を持っており、それにより集った3人のキャストにより、楽園と呼んで差し支えない場所となっていることは認めざるを得ない。

それにしても、花奈さんといい、凛さんといい、美羽香さんといい、あれほど純真なキャストたちが筆者以外にも接客をしていて、中には破廉恥な輩もいるだろうことを思うと少し心配である。彼女たちがそういった客に当たる可能性を少しでも減らすため、筆者は今後も可能な限り高い頻度で「バニーガーデン」を利用し、彼女たちを指名し続けるつもりだ。“令和の楽園”を絶やすわけには、いかないのだから。

最後になるが、「バニーガーデン」はゲームだ。現実に女の子とお酒が飲める店で従業員と恋愛関係になろうと迫っては、確実に相手にとって迷惑が掛かるので、そんなことを本気で考えてはいけない。夢は夢のままだからこそ美しい。それは、平成から令和へと時代が変わっても変わることのない、この世の真理なのかもしれない――。

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