栃木県知事認定獣医師2人を書類送検 豚熱ワクチン打たずに渡す 22年那須烏山、業務上横領疑いで栃木県警

栃木県警本部

 栃木県那須烏山市内の養豚場で2022年7月に発生した豚熱(CSF)を巡り、豚熱ワクチンの使用許可を得ていた県知事認定の獣医師が、県から提供されたワクチンを豚に打たずに養豚場の社員に渡したとして、県警が業務上横領の疑いでいずれも70代の男性獣医師2人を書類送検していたことが26日、捜査関係者への取材で分かった。書類送検は19日付。本来ならば獣医師が打つべきだったワクチンは、数百本分に上る可能性があるという。

 県によると、2021年3月の豚熱に関する特定家畜伝染病防疫指針の一部改正に伴い、本県では同年10月から、知事認定獣医師によるワクチン接種が始まった。獣医師が農場と契約して日程などを相談し、獣医師が接種すると定める。

 書類送検された獣医師は、農場を経営していた畜産大手「神明畜産」(東京都東久留米市)と契約。豚の大量死が確認された22年6月ごろまでに、接種計画に基づいて豚にワクチンを打つ立場にあったが、数回にわたり社員にワクチンを渡すのみだったとみられる。

 県警の任意の調べに対し、獣医師は知事による認定獣医師制度が導入される以前の同農場の状況を引き合いに「自分たちはワクチンを打たなくていいと思っていた」などと説明したという。

 同農場の元従業員は下野新聞社の取材に対し、「獣医師ではなく、従業員がワクチンを打っていた時期はあった」などと説明した。

 同農場を巡っては、県が22年7月、豚熱を確認したと発表。県は約1カ月半をかけて農場と関連農場で国内最多の計約5万6千頭を殺処分した。

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