薬都「何やっているんだ」 正露丸のキョクトウ、記録改ざん また不正、順法意識薄く

不適切製造で業務停止命令を受けた「キョクトウ」=富山市牛島新町

  ●利益優先「信頼失う」

 不適切製造が相次いだ薬都・富山がまたしても揺れた。26日、正露丸を製造する「キョクトウ」(富山市)で発覚した虚偽の試験記録の作成。富山県幹部は「非常に重い」と断じ、業界関係者は「あり得ない」とうなだれた。製薬業界を挙げて再発防止の取り組みを重ねる中にあっても不正に歯止めがかからず、順法意識の薄さが浮き彫りになった。

 「『くすりの富山』の信頼回復に向けて、会員一同、一丸となって医薬品の製造・品質管理体制の強化に向けた取り組みを行っている中で、誠に遺憾なことであり、ざんきに堪えない」

 県薬業連合会の中井敏郎会長(東亜薬品会長)は26日、苦渋に満ちたコメントを出し、県と連携して法令順守の意識の徹底を図るとした。中井氏の後を継ぎ、5月に会長に就く予定の大津賀保信副会長(ダイト社長)も「大変残念だ。『くすりの富山』は何をやっているんだ、と思われても仕方ない」と声を落とした。

 大手ジェネリック医薬品(後発薬)メーカー「日医工」(富山市)などの不適切製造問題を受け、県内の製薬業界は県と連携し、経営層を含めた研修会の実施や品質保証体制の整備を進めている。

 こうした中で明るみになった不正について、県薬事指導課の岩瀬怜課長は「非常に重い。会社側は法的に出してはいけないと分かっている製品を記録の改ざんをしてまで出荷していた」と非難した。

 「試験記録の改ざんは絶対に許されない行為。不正の意識が低く、利益優先でそのような判断をしたのではないか」。富山市内の製薬企業の担当者はこう推測する。県内の製薬メーカーの幹部の一人は「きちんと対応しているメーカーへの信頼が不正に手を染めた第三者によって損なわれるのはあってはならない」と憤りを込めた。

 キョクトウは従業員約20人の小規模な製薬企業だった。県は今年度、従業員が100人以下の小規模な製薬企業で教育の機会を充実させるため、GMP(製造・品質管理基準)に関するeラーニングの教育プログラムの受講費用を半額助成する事業を導入した。岩瀬課長は「小規模な企業を含め、教育を受ける機会を提供したい」と話した。

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